メニュー

【ズームアップ】物流不動産投資、コロナが追い風に

2020.09.10

物流不動産への投資が一段と加速している。新型コロナウイルス感染拡大でECが伸長し、サプライチェーンの見直し機運も高まりスペース需要を押し上げているためだ。投資市場ではオフィス、商業施設、ホテルの成長に陰りが見えるなかで、物流不動産は唯一、コロナの影響が見えないセクターとして注目を集め、マネーが注入されている。物流不動産各プレイヤーも相次いで新たなファンドの設立・検討を打ち出している。

物流施設への投資家の関心高まる

GLPは8月25日、2800億円(26億米ドル)の運用資産を有する、物流施設に特化した日本最大のオープンエンド型私募ファンド「GLP Japan Income Fund」(JIF)を設立したと発表した。JIFの投資家は年金基金、保険会社等の金融機関、政府系ファンドを含み、大多数はGLPへの初の投資となる。

JIFは関東圏および関西圏で新たに開発された、満床稼働の先進的物流施設11件(シードアセット)を投資対象とする。GLPによるとJIFは国内外の投資家の強い関心を集めたとし、日本GLPの帖佐義之社長も「JIF設立は当社のビジネスにとって重要なマイルストーン」とコメントしている。

大和ハウス工業も8月28日、2020年内をメドに国内物流施設を投資対象とする私募コアファンド「大和ハウスロジスティクスコアファンド」の設立を検討していることを明らかにした。グループが開発する物流施設を投資対象に組み入れ、7割以上を3大都圏の物流施設に投資する方針。中長期的に資産規模3000億円をめざす。

不動産投資、物流へのシフト進むか

コロナ以前から物流施設を対象とした大型ファンド設立の動きはあった。昨年5月にはESRが日本の物流施設を対象に約5300億円を目標とする第3号ファンドを設立。ラサールも同11月に物流など4アセットクラスに投資するオープンエンド型私募コアファンドの運用を開始し、24年までに資産規模3000億円に成長させる計画だ。

CBREが3月に行ったアンケートによると、64%の企業が物流施設の「移転・再編」または「増設」計画があると回答。このうち「面積を増やす」は67%、「拠点数を増やす」は52%と昨年より増やす面積・拠点数は減少したものの、依然としてテナント企業の拡張意欲が強く、物流施設に対するニーズを裏付けた。

総合不動産大手のJLLが5月にコロナの影響について投資家に調査を実施したところ、投資したい先として物流はオフィス、賃貸住宅に次ぐ3位で17%を占めた。物流はテナントとの契約形態が長期であることやEC需要増加を背景に関心度が高まった。在宅勤務によるオフィス縮小の動きが強まる中で、今後さらに物流に投資家マネーがシフトする可能性もある。
(2020年9月10日号)


関連記事一覧