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「何でもできる物流会社になった」=SBSHD・鎌田社長

2020.09.01

SBSホールディング(本社・東京都墨田区)の鎌田正彦社長(写真)は8月25日、本社で物流関係メディア向けの説明会を開き、今後の事業戦略についてのビジョンを説明した。10月1日付で予定する東芝ロジスティクスのグループ化について「売上高4000億円規模まで成長することになり、これで大体何でもできる物流会社になった」と3PL事業における業容拡大に期待を寄せた。また、今後のM&A戦略については、「リコーロジスティクスや東芝ロジのような大手メーカーの物流子会社を系列から外すM&Aと、後継者不足などに悩む中小運送事業者のM&Aの2軸で進める」と述べ、海外でのM&Aについては「かつてインドで大失敗した。適正価格でなければやるべきではない」として、国内でのM&Aを優先させる考えを示した。鎌田社長の発言要旨は次の通り。

〈東芝ロジスティクスのグループ化〉
10月1日の株式取得・連結化に向けて準備を進めており、東芝、東芝ロジ、SBSの中で分野ごとに分科会を設けて作業を行っている。この規模の物流会社のM&Aでもっとも難しいのがシステムの離脱と接続。給与や人事、総務、財務といったシステムを東芝から完全に引き継ぐには2~3年かかる。2年前にリコーロジを買収した経験があったので、何とかできているが、そのリコーでもまだ完全に終わっていない。10月1日の合流に向けてタイトなスケジュールで動いている段階だ。

東芝ロジの純粋な外販比率は売上高の4分の1程度。残りは東芝が事業売却した分野も含めた新旧東芝グループ関連が73%ある。東芝ロジは4PLという名称で展開しているが、SBSの3PLとほぼ一緒。両社のノウハウを掛け合わせて新たな外販獲得につなげたい。東芝ロジの現在の売上規模は国内800億円、海外250億円の1050億円程度。これを中長期で1500億円くらいまで成長させていきたい。

リコーロジに続いて、東芝ロジがグループに加わることで、欧米、アジアでの事業が拡大する。リコー、東芝のトップからは「一体化を進めてくれ」と言われており、両社の海外拠点の統合などを進めていく。SBSの海外事業はこれまで、フォワーディングが中心だったが、東芝ロジは海外で半導体の倉庫など3PLを展開しており、これからは「フォワーディング+ロジ」の可能性が広がっていく。
これまでのSBSでは、残念ながら「これはできない」という仕事があった。しかし、M&Aを重ねることで、大体何でもできる物流会社になってきた。4000億円近い事業規模は、日立物流やセンコーなどの3PLトップ企業にほぼ肩を並べるクラスになってきたと思っている。規模の拡大で、100億円、200億円クラスの大きな仕事ができるようになる。また、今後はロボットなどの自動化投資が増えていくが、こうした巨大な投資には一定の規模感が必要だ。

〈M&Aについて〉
企業単独での成長は難しいし、時間がかかる。物流会社の歴史を振り返っても、日本通運は戦時統合で大きくなり、佐川急便も地域の会社を統合して成長した。日本の物流会社の歴史はM&Aの歴史だと言える。SBSをベンチャーで始めた時、巨大な物流会社とどうやって肩を並べるかを考えたが、その答えは上場とM&Aだった。

M&A戦略には2つの軸がある。ひとつはリコーロジ、東芝ロジのように大手メーカーの物流子会社を系列から外すM&A。もうひとつは後継者不足などに悩む年商5億、10億円規模の中小運送事業者を対象としたM&Aだ。後者については現在、日本政策投資銀行との共同ファンド(日本物流未来投資ファンド)を立ち上げ、中小事業者を1~2年かけてファンドの中で〝孵化〟させ、SBSグループに組み込んでいくスキームを進めている。中小運送事業者を子会社化することで、配送の〝足〟を担える。SBSグループとして傭車を相当数使っているので、3PLの配送強化につながっていく。また、(後継者不足に苦しむ企業を救うという面で)社会的にも意義のあるM&Aだ。仮に年商10億円の企業が100社集まれば1000億円になる。2軸のM&Aを繰り返していけば、さらなるグループ規模の拡大も可能だ。

現在、年商10~100億円クラスのM&A案件が複数来ているが、リコーロジや東芝ロジクラスの案件はそう簡単には受けられないのが正直なところだ。リコーロジ買収から2年で東芝ロジ買収を手掛けたが、来年やれと言われても、システム統合などが追い付かない。できるだけ早くやりたいとは思っているが、(次の大型案件までは)2年くらいは必要だろう。小規模な物流会社のM&Aであれば、すぐにでも融合することができる。

海外のM&Aでは、かつてインドで119億円の損失を被るなど大失敗した。海外会社の場合、成長性を見込んでEBITDAの14~15倍が買収価格となる場合が多く、日本の6~7倍と大きな開きがある。適正価格以外ではやるべきではないと考えており、それよりは国内でのM&Aを優先したい。

リコーロジ、東芝ロジとも複数社のコンペの中からSBSを選んでもらった。この規模の会社の改革をきちっと行い、(売却先に)恩を返していく会社はそれほど多くないと思っている。これまで20社近いM&Aを手掛けてきたが、その経験がノウハウとして蓄積されている。SBSの基本方針は「人を大事にする」ことだ。ファンドなどが手掛けるM&Aは利益優先になりがちだが、当社は人を大事にしながら一緒になって構造改革を進めていく。そうした姿勢や実績が評価されていると思っている。

〈宅配ネットワーク〉
BtoBとBtoCの両立てで進めている。SBSグループは元々、SBS即配サポートのBtoB宅配で育ってきた。そこにリコーロジがグループ化され、コピー用紙やトナーの宅配業務と大塚商会のたのめーる事業が加わり、BtoB宅配のエリアが広がってきた。既存顧客からもこのネットワークに載せたいという要望が多く、今後もエリアを広げていく。

一方、BtoC宅配は不在も多く、まったく別物だと考えている。現在、読売新聞の販売店と協業した「YCお届け便」を東京23区内で展開している。今は1日3000個程度だが、徐々に増やして1日1万個程度を配達できるようにしていき、次のステップとしてエリアを広げていく。時間は少しかかるが、品質を見ながら徐々に配送量を増やすことで、品質を担保していきたい。

宅配大手3社と渡り合っていくつもりはない。当社としてできる地域だけでもやっていきたい。ただ、EC市場は急成長しており、大手3社だけでは対応は難しく、将来的に棲み分けが進んでいく。(通販などの)お客様の中には値上げや値下げが繰り返されていることに憤りを感じている会社も多く、安定した価格でサービスを提供してほしいという声を多くいただいている。当社にとっても今後、大規模センターをつくりEC企業などを誘致する中で、宅配までをセットで契約できるようにしていかないと、大規模センターが生きてこない。そのためにも、安定的な価格による宅配ネットワークは必要だ。

今、新型コロナの影響もあって、置き配の比率が上がってきている。仮に置き配の比率が宅配全体の8割程度に達したら、宅配業界の構造はガラッと変わると思う。極論すれば、誰にでもすぐにでもできる業界になる。ただ、SBSとしては対面でしっかり配達できるネットワークをつくっていきたいと考えている。

アマゾンからは、宅配だけでなく、拠点間輸送や倉庫業務など色々な提案を受けているが、自然体で対応したい。他の仕事もあるので、すべてに対応することは難しく、現状維持で仕事ができるなら引き続き仕事を受けていきたい。アマゾンとの取引額はグループ全体の売上げの3%程度となっている。

〈不動産〉
SBSグループの借庫も含めた倉庫所管面積は現在約50万坪。そこに東芝ロジが所管する20万坪が加わると、70万坪まで広がる。これを将来的に100万坪くらいまでにしたい。保管スペースが増えれば、それだけ仕事の幅が広がっていく。

SBSの不動産事業は、不動産自体を開発・売却して儲けることを目的にはしていない。できるだけ安い倉庫を調達し、そこにお客様を誘致して3PL事業を展開することに主眼を置いている。そのために、自分たちで土地を仕入れて倉庫を建て、収益を合わせていく事業モデルを展開している。物流不動産が開発した施設を借りるよりも、自ら開発したほうが安いからだ。

〈ハイテク型3PLセンター〉
今後、ハイテク型の3PLセンターを開発していく。そのために、国内外のベンチャーやスタートアップの動向を注意深く見て研究している。自動化・省力化できる領域とできない領域をしっかりと見極めた上で、できる領域については極力ロボットで合理化していきたい。今後、この分野の開発を相当な勢いで進めていく。

〈SBSロジコム、SBSフレック〉
SBSロジコムは、東急電鉄からグループ入りして、当初270億円だった売上高が現在は600億円、営業利益50億円まで成長した。〝勝ちパターン〟がかなりできあがってきており、社長の私があまり携わらなくても自動回転で成長できる会社になっている。私はその分、リコーロジや東芝ロジに力を入れている。

SBSフレックは、雪印物流が母体で雪印系の仕事が多い。社長も代々、雪印出身者から迎えていたが、今回縁あってキリン出身の加藤元氏(キリングループロジスティクス元社長)を社長に迎えた。それ以外にも新しい血を多く迎えて業容拡大に向けたプロジェクトを進めている。雪印系だけでなく、食品物流のプラットフォームや共同物流を展開する営業プランをつくっている。倉庫投資も積極化したい。
(2020年9月1日号)


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