アルプス物流、ロジスティードと提携し相乗効果創出へ
アルプス物流(本社・横浜市港北区、臼居賢社長)は10日、2024年3月期決算のオンライン説明会を行い、9日に発表されたロジスティードからのTOB(株式公開買付け)決定と、同日に締結されたアルプス物流と親会社のアルプスアルパイン、ロジスティードの3社による資本業務提携契約について臼居社長が説明した。
今回のTOBは、ロジスティードが100%出資する特定目的会社であるLDECによるアルプス物流の株式取得などを通じて、同社の株式をロジスティードが80%、アルプスアルパインが20%保有するもので、8月中旬頃のTOB開始を予定する。TOB終了後にアルプス物流は上場廃止する予定。
臼居社長は今回のTOBの背景について「ロジスティードとの資本業務提携を基盤に、両社の継続的な企業価値向上を目的としている」と説明。株式の売却先にロジスティードを選んだ理由については「当社に対する評価が非常に高かったことに加え、従業員の処遇やガバナンス体制などを評価した。また、当社の経営戦略についてよく理解したうえで支援体制を提案してくれており、その裏付けとなる高い知見やリソース、実績を持っている。両社の企業理念が近しいこともあり、とても親しみを感じている」と語った。
さらに、臼居社長は「業務提携を通じて当社の持つ電子部品物流事業の専門性とノウハウ、ロジスティードのネットワーク、両社の顧客基盤などをかけ合わせることで、大きな相乗効果が生まれる。また、当社が今後、競争力を高めるための組織能力を補完・強化していくためには、多くの知見と実績を持つロジスティードは、非常にありがたい協創パートナーとなる」と強調。そのうえで、提携によって期待する効果として、「調達物流から完成品物流までの一気通貫した輸送サービスの提供やスケールメリットおよび調達力の強化、海外も含めそれぞれの拠点の相互利用によるオペレーションの効率化なども視野に入れている。また、顧客基盤の拡大や輸送能力の確保、効率的な輸送網の構築、システムの高度化なども実現できる」と述べた。
「2024年問題」への対応強化についても言及し、「現在は配送網の見直しなどによる残業時間の抑制に努めていることでほぼ対応できているが、ロジスティードとの業務提携により、たとえば共同配送の可能性など、双方のトラックの積載率向上につながるような取り組みも期待できる」と語った。
また、6月には10年ぶりとなる社長交代が行われる予定であり、新社長への就任が内定した寺㟢秀昭取締役常務執行役員は「業務提携によって実現が期待される一気通貫サービスをバネに、企業価値を高めていきたい」と意気込みを語った。
24年3月期連結業績は減収2ケタ減益
アルプス物流の24年3月期の連結業績は、主力の電子部品物流事業における取扱量の減少を背景に、売上高1188億4400万円(前期比1・9%減)、営業利益55億7800万円(30・6%減)、経常利益60億1900万円(31・5%減)、純利益35億7000万円(29・1%減)となり、増収2ケタ増益だった前年実績から減収2ケタ減益へと転じた。
業績をセグメント別に見ると、主力事業である電子部品物流事業では、新規顧客への拡販が進捗したものの、航空貨物の減少や国際輸送運賃の下落、生産停滞などによる貨物取扱量減少の影響を補えず、売上高624億2700万円(10・0%減)の減収。利益面では、生産性向上に取り組む一方で、大中華圏の国際輸送貨物の取扱いが第4四半期で想定以上に減少。荷動きの停滞に伴う効率悪化や競争環境激化の影響などにより、営業利益32億400万円(44・1%減)の大幅な減益となった。
一方で、商品販売事業は海外向けの車載関連で電子デバイスの販売が増加したほか、為替の円安効果もあり増収増益。消費物流事業は生協宅配エリアが拡大したものの、取扱物量は前年並みに推移し、通販・ECでは荷動きが堅調だったことから増収した。しかし、利益面では支払運賃や倉庫増床による賃借料増加などのコスト増により減益となった。
前年度の電子部品物流事業では、国内において倉庫の新設や拡張による保管能力の拡大に加え、自動倉庫などの導入による庫内業務の自動化・省人化に注力。新倉庫は今年1月に大阪府茨木市(約4000㎡)、2月に愛知県小牧市(約3万3000㎡)でそれぞれ稼働した。海外では昨年4月のタイ・バンナを皮切りに、各エリアで保管面積を増強。加えて、同年6月にはフィリピンに現地法人を開設したほか、インドで自社トラックによる長距離輸送サービスを開始するなどロジスティクス機能の強化を推進した。
なお、TOB終了後の上場廃止を予定していることから、25年3月期の連結業績予想は発表しなかった。
(2024年5月16日号)