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【レポート】庫腹逼迫受け、全国で冷蔵倉庫の開設が活発化

2019.11.26

全国的な庫腹不足を背景に冷蔵倉庫大手の設備投資が活発化している。オペレーション効率を高めるための“大型化”傾向が加速するとともに、深刻な労働力不足に対応する“自動化・省力化”にも注目が集まっている。各社の設備投資動向を追いながら、冷蔵倉庫業界のトレンドを探る。

業務革新のモデルセンターを名古屋で開設=ニチレイロジ

冷蔵倉庫設備能力で国内最大のニチレイロジグループ本社(本社・東京都中央区、梅澤一彦社長)は今期スタートした中期3ヵ年経営計画で、国内外における冷蔵倉庫新設への積極的な投資を続ける。その中でフラッグシップ拠点となるのが、来年4月に開設を控える「名古屋みなと物流センター」(愛知県名古屋市)だ。冷蔵能力3万635tを誇り、投資総額は101億6100万円を見込む。東京および大阪地区を補完する名古屋地区の庫腹を拡充させるとともに、同社が推し進める「業務革新」のモデルセンターとして、庫内には最新の省人化・省力化技術を導入する計画にある。

これに先がけ、今年5月より営業を開始した「那覇新港物流センター」(沖縄県那覇市、1万2485t)では、新たな市場としての沖縄に注目し、県内の在庫需要を取り込みながら、同所をハブ拠点としたアジア各国との輸出入ルート構築も目指す。一方、21年3月には横浜市で「本牧物流センター」(2万8500t)の開設も予定。山下ふ頭の再開発に伴う、キョクレイ山下物流センターの代替拠点として新設するもので、庫腹を約5000t増強する上、加工場をはじめとする付帯設備の充実や自動倉庫の導入、運送機能の強化など、冷蔵倉庫の高度化を図る。

「人」「もの」「地球」に優しい冷蔵倉庫を拡充=ヨコレイ

横浜冷凍(ヨコレイ、本社・横浜市西区、岩渕文雄社長)では、第六次中期経営計画(17年10月~20年9月)で冷蔵倉庫事業の目指す姿として「マーケットインに応える革新と進化」を掲げる。その一環として、引き続き新規の冷蔵倉庫への設備投資を積極的に行い、20年2月には圏央道沿いで同社6ヵ所目となる「つくば物流センター(仮称)」(茨城県つくば市、収容能力約2万4700t)を竣工予定。また、21年1月には、福岡市東区で「アイランドシティ物流センター(仮称)」(約3万2300t)が完成する。

いずれも自然冷媒冷凍機を採用し、屋上太陽光発電システム、電動式移動ラック、フォークリフトによる入出庫作業を円滑にし、庫内作業時間の短縮化と省人化を図る「カーゴナビゲーションシステム」を導入。アイランドシティ物流センターではトラック予約受付システムも備える予定でつくばでも検討する。同社が目指す、「人」「もの」「地球」に優しい冷蔵倉庫を充実させ、顧客のニーズに的確に応えていく。

名古屋で全自動倉庫採用の大型冷蔵倉庫新設=マルハニチロ物流

マルハニチロ物流(本社・東京都中央区、岡崎博社長)では、名古屋港エリアで大型冷蔵倉庫「名古屋物流センター」(約3万7500t)を建設中だ。21年4月の竣工予定で、投資予定額は70億7000万円。加工食品など高回転貨物の対応に特化したセンターとして設計し、将来的な人手不足に対応するため全自動倉庫を採用する。

同社では名古屋エリアで3拠点(日比野物流センター、築港物流センター、名古屋市場事業所)を運営しており、名古屋港からの保税貨物(動植物検疫対象貨物を含む)や中央卸売市場関連の水産農産品の保管配送事業を展開している。新センターは免震構造で自然冷媒(アンモニアCO2)を採用。低温輸送のランテックとの協業により中部地区の輸配送拠点としての役割も果たす。新センターについてマルハニチロ物流では「今後、新たに建設される当社の冷蔵倉庫の方向性を示すもの」としている。

新中計で投資と営業活発化、次期中計には旗艦拠点も=C&FロジHD

C&Fロジホールディングス(本社・東京都新宿区、林原国雄社長)では5月、今期から開始した第2次中期経営計画」(19~21年度)内に7拠点への新設投資を行うことを発表した。第1次中計(16~18年度)で名糖運輸とヒューテックノオリンが所有する車両や施設の相互利用やなど事業基盤整備を進めてきたが、新中計では中・大型物流拠点の新設とそれらを活用した営業開発を展開する。3ヵ年における設備投資総額は370億円で、うち新設拠点への投資は232億円を試算する。

その上で、22年度以降の竣工を予定するのが、「ヒューテックノオリン箕面森町プロジェクト」。18年3月に、大阪府箕面市で新設倉庫用地約7万㎡を34億4400万円で取得し、チルド・フローズンを得意とする両事業会社が組むことで生まれる『プラスα』の価値を創出する冷蔵冷凍倉庫の新設を視野に入れる。同施設にかかる総投資額は約180億円を見込む。一連の新設拠点では、IT技術や新たな仕組みの導入による倉庫内および輸配送業務の効率化・安定化も図る。

自社最大となる冷蔵冷凍拠点を埼玉に新設=キユーソー流通システム

キユーソー流通システム(本社・東京都調布市、西尾秀明社長)は、自社最大の冷蔵冷凍拠点となる「首都圏SLC」(埼玉県所沢市)を今年7月に開設。延床面積約3万2000㎡の4階建てで、保管能力約5万t。同社も、首都圏SLCを“無人化・省力化を目指すパイロット拠点”と位置付け、最新鋭の物流機器を導入する。マテハンを含めた総投資額は約55億円を見込み、最適物流体制の構築と働きやすい環境の実現に向け、“将来を見据えた大きなステップ”と位置付ける。

今期スタートした中期3ヵ年経営計画においては、拠点再編や無人化・省力化につなげる拠点ネットワーク投資として、3ヵ年で160億円を見込む。とくに首都圏や中部、九州エリアで物流網を再編するとともに、新技術の実験や導入で働き方と、働く環境を改善する。こうした中で、老朽化拠点についてもスクラップ&ビルドを進めて運用効率を高める。

食品物流の拡大に向け、冷蔵倉庫開設に意欲=日新

日新(本社・横浜市中区、筒井雅洋社長)は第6次中期経営計画(17~21年度)における重点3分野のひとつに食品物流を据え、最終年度の目標売上高120億円の達成に向けて、積極的な設備投資を行う。象徴的なのが、21年3月に竣工を予定する「平和島冷蔵物流センター(仮称)」だ。東京都大田区平和島という絶好のロケーションに位置する常温倉庫を食品専用冷蔵倉庫へ建て替えるもので、延床面積1万8200㎡、収容能力2万5800tの5階建てとなる。大消費圏に位置する上、東京港や羽田空港にも近く、輸出入食品の取扱いにも期待を寄せる。
関西でも、来年2月に神戸市摩耶ふ頭で「摩耶西冷蔵倉庫」(収容能力1万3000t)を竣工予定。5000パレットを収容可能な冷蔵専用自動ラック倉庫で、庫内作業員の負担軽減と生産性向上につなげる。隣接する「摩耶冷蔵倉庫」と「摩耶埠頭倉庫」と合わせた3倉庫の保管能力は冷凍2万t、冷蔵1万1500t、可変式の冷蔵冷蔵庫が4700t、定温3000㎡、常温900㎡となる。同センターでも神戸港を介した輸入食品の保管・輸送ニーズに注目。フォワーダーとしてのノウハウを食品物流でも発揮する。

大阪舞洲物流センターを増設=日水物流

日本水産子会社の日水物流(本社・東京都港区、藤本健次郎社長)は来年4月に「大阪舞洲物流センター増設棟」を竣工する。投資総額は46億円の見込み。今回の増設で、大阪舞洲物流センター全体の保管能力(5万t)はニッスイグループ最大規模となる。

「大阪舞洲物流センター」は、同社の西の拠点として16年4月に大阪北港で開業。労働力不足による人件費増はあるものの、近年は阪神港周辺での貨物の増加とともに保管スペースがひっ迫しており、今回の増設を決めた。増設棟は延床面積約1万6338㎡の鉄筋コンクリート造5階建てで、保管能力は約2万4846設備t(F級、SF級、SSF級)となる。既存棟に隣接し、同棟と内部で連結する。(2019年11月26日号)


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