農水産品の流通合理化へ検討会=農水省/国交省/経産省
農林水産省、国土交通省、経済産業省は11日、農産物と水産品を中心とした食品流通分野での合理化と食品ロス削減に向け、課題の把握と解決に向けて協議を行うため、3省共同で「食品流通合理化検討会」を立ち上げた。地方自治体(産地)、物流事業者、発荷主・着荷主、行政(農水省・国交省・経産省)などから関係者が委員として参加し、サプライチェーン全体からの合理化を検討していく。水産品については特性を踏まえた検討を行うため、水産分科会を設置することとした。
冒頭挨拶に立った農水省の塩川白良食料産業局長は「農産物など生鮮品物流ではトラック輸送が主になっているが、出荷量が直前まで定まらない、手待ち時間が長く手荷役作業が多いなどにより取り扱いが敬遠される事例が出てきている。また、水産品では鮮度維持が極めて重視されるという特性がある」と指摘し、「検討会を通じ、食品や花きの物流での課題解決に向けて関係者一同で協議を図っていく」と述べた。
同検討会には、地方自治体からは青森県の三村申吾知事、新潟県の花角英世知事、三重県の鈴木英敬知事、秋田県仙北市の門脇光浩市長、山形県鮭川村の元木洋介村長、福井県小浜市の松崎晃治市長、愛媛県八幡浜市の大城一郎市長らが委員として参加。
物流業界からは全日本トラック協会(全ト協)副会長の馬渡雅敏氏、日本物流団体連合会(物流連)理事・事務局長の宿谷肇氏、日本ロジスティクス協会(JILS)JILS総合研究所所長の佐藤修司氏、マキタ運輸代表取締役の牧田信良氏、アップクオリティ社長の泉川大氏、日本倉庫協会理事長の富取善彦氏、日本冷蔵倉庫協会副会長の西願廣行氏らが委員となった。
発荷主からは、全国農業協同組合連合会、ホクレン農業協同組合連合会、宮崎県経済農業協同組合連合会、日本農業法人協会、農業生産法人GRA、日本花き生産協会の代表者が出席、着荷主では東京青果、日本花き卸売市場協会、日本加工食品卸協会、日本外食品流通協会、日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会の代表者がそれぞれ参加した。
また、水産分科会には、発荷主として全国漁業協同組合連合会、漁業情報サービスセンター、全国水産加工組合連合会、フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングから、着荷主としては全国水産卸協会、日本チェーンストア協会、日本スーパーマーケット協会より委員となった。物流事業者の委員は全ト協、物流連、JILS、日本冷蔵倉庫協会がメンバーとなった。
初会合では、各委員の顔合わせを行うとともに、青森県、新潟県、三重県、仙北市、鮭川村、小浜市、八幡浜市の首長とGRAが、農産物や水産品など、個々の流通事情や取り組みについて概要を説明した。また、国交省の一見勝之自動車局長が、現在のトラック輸送での人手不足と待機時間の長期化、荷役の非効率性などにより安定的な輸送維持が困難となっている事情を説明した。
自治体首長がそれぞれの取り組みを説明
青森県の三村知事は、県とヤマト運輸が連携協定を締結し、2015年4月に開始した物流プラットフォームについて説明。活ホタテや鮮魚など生鮮品を国内の需要者へ翌日午前中あるいは翌日中に配送するなどスピーディーに届け、国外でも香港などへ翌日配送できるスキームを構築したと報告した。
新潟県の花角知事は、県産のコメと青果物の流通事情を説明。コメではJAパレットと輸送用パレットの統一をはじめ、一貫パレチゼーション実現に向けた設備整備、製品情報の電子化やデータ連携を今後の課題とした。青果物では地域での集積拠点の設定と同拠点から広域物流拠点への集配ルートの確立や、幹線輸送の低コスト化などを課題として挙げた。
三重県の鈴木知事は四日市港でのAIターミナル化に向けた検討状況やAIを利用したトマトなど農産品の生産性向上の取り組み、稲作でのGPS内蔵田植え機や食味分析が可能なコンバインなどICTや先進機器を活用した農業のスマート化について紹介した。
続いて、仙北市、鮭川村、小浜市、八幡浜市の農水産品の流通事情と各自治体の取り組みが説明された。
(2019年11月14日号)