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共同物流促進へ、物効法の認定範囲を拡大=国交省

2019.06.11

国土交通省は物流の持続的発展をはじめ、SDGs(国連で定めた持続可能な開発目標)への対応や自然災害に強い物流の実現を図るため、荷主と物流事業者向けに共同物流の促進に向けた提言を行う。提言書は今月中にホームページ上で公表することとし、優良事例なども盛り込む。また、共同化促進に向けた目玉の施策として物流総合効率化法(物効法)による支援対象の拡大を図る。夏頃に物効法認定の基本方針を改正し、国交省・農水省・経産省3省連携で方針を告示する。

6日に開催した「共同物流等の促進に向けた研究会」(座長=矢野裕児・流通経済大学教授)の第5回会合で提言の概ねの内容を固めた。物流分野の今後の連携のあり方として、従来の共同物流で多くみられる事業者間の連携(ヨコの連携)に加え、リードタイムの見直しや検品の簡素化、物量の平準化など発着荷主と事業者が連携(タテの連携)によりサプライチェーン全体を効率化すべきとした。また、ドライバー不足に対応した幹線輸送の共同化やダブル連結トラック活用による長距離輸送の改善を推奨。自然災害に対するBCP(事業継続計画)の観点から、モードの多様化が急務だと強調。さらに、地域での持続可能な物流を確保するため、荷主・事業者の連携に加え、自治体・旅客事業者や買い物サービス業者などとの連携が必要とした。

今後の国の施策として、リードタイムの延長や検品の簡素化・廃止の取り組みについて物効法による認定を活用し、全国的なヨコ展開を図る。共同物流実施への社内調整をしやすくし、物効法申請を行いやすくするため、資料のフォーマット作成や申請書類の簡素化も進める。

認定の幅を拡大、平準化、パレット活用も

これまで物効法認定のモデルケースでは、輸送・保管の連携による「輸送網の集約」、車両数削減や積載率向上を図る「輸配送の共同化」、鉄道・船舶の活用による環境負荷低減と省人化のための「モーダルシフト」の3つが主に示されていた。今後はこれらに加え、リードタイム見直しや検品レス、物量平準化、パレットの活用など発着荷主の連携をはじめ、幹線輸送の帰り荷確保や中継輸送の実施など輸送リソースの共同利用、荷主との情報連携や作業手順の見直しによる庫内作業の効率化やトラック待機時間の削減の取り組みへの認定を積極化する。さらに、館内物流の共同化や貨客混載事業に対しても認定の幅を広げる。

荷主の意識変革へ「ホワイト物流」推進運動も活用

共同物流の促進では荷主の意識変革が重要なカギとなることから、政府が取り組む「ホワイト物流」推進運動とも連携し、荷主の理解を得やすい環境を整備する。周知啓発には同運動のポータルサイトとも連携する。また、荷姿やシステム、納品条件などを標準化するため、標準化やデータ化を検討する官民連携の協議会を設置する。

サプライチェーン全体の効率化・省力化の観点からは、物流・商流データの自動収集技術を開発し、業界の垣根を越えて物流・商流データを共有できるようにする。実現に向けては内閣が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業を枠組みとしたデータ基盤の構築に取り組む。データを活用した企業間マッチングシステムの開発も検討する。

共同物流に取り組む荷主・事業者への財政的支援としては、物効法認定による補助金交付などのほか、共同物流実施に際して独占禁止法との関係を迅速に整理できる環境を整備する。
(2019年6月11日号)


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