5ヵ年の新経営計画で“非連続な成長”を実現=日本通運
日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は22日、2019年度から23年度までの5ヵ年を期間とする新経営計画「日通グループ経営計画2023~非連続な成長“Dynamic Glowth”~」を発表した。最終年度に売上高2兆4000億円、海外売上高比率25%などの達成を目指す。また、併せて創立100周年となる37年に向けた新たな長期ビジョンを策定。長期ビジョンでは、将来のありたい姿を『グローバル市場で存在感を示すロジスティクスカンパニー』と位置付けた上で、37年度に売上高3・5兆円~4兆円、海外売上高比率50%などを目標に掲げた。
顧客、事業、エリアの3軸で成長戦略を実現
新計画では5ヵ年を19~21年度の3ヵ年と22~23年度の2ヵ年に分け、21年度終了時点で、目標数値を見直すローリングプランとした。施策を「事業の成長戦略」と「長期ビジョン実現のための取り組み」に大別した上で、成長戦略として①コア事業の成長戦略②日本事業の強靭化戦略――の2点、長期ビジョン実現のための取り組みとして、①非連続な成長②取り組みを支える機能強化③持続的成長と企業価値向上のためのESG(環境・社会・ガバナンス)経営の確立――の3点を掲げた。
このうちコア事業については、顧客(産業軸)、事業軸、エリア軸の3軸から重点施策を提示。顧客軸では、重点産業として「電機・電子」「自動車」「アパレル」「医薬品」「半導体」の5産業で産業特性などに対応したプラットフォーム構築を図る。また、事業軸ではとくにフォワーディング事業で海外のメガフォワーダーを意識したボリューム戦略を展開し、18年度(予想)で67万tの海上輸送を21年度に100万TEU、航空輸送で91万tを120万tに引き上げる。エリア軸では各エリア特性に応じた戦略で成長を実現するが、とくに成長が著しい南アジア・オセアニアで集中投資を実施する。
日本事業では、重機建設や警備輸送など専門事業の収益性を向上させるほか、国内組織のさらなる大括り化や管理組織のスリム化、低収益事業の抜本的改革などを通じて、収益性向上にこだわり経営基盤を強靭化する。
M&Aでメガフォワーダーへの成長目指す
37年度までを意識した非連続な成長戦略では、M&Aによるグローバルメガフォワーダーへの成長を目指す。M&Aについては推進チームを強化するほか、資産売却や流動化などを通じて買収資金の借入金負担を軽減する。
機能強化面では、IT、R&D(自動化・機械化、デジタル化)、人材、広報戦略でイノベーションを加速。また、グローバルガバナンスの強化の一環から、ホールディングス制への移行を視野に入れる。
「これまでの延長線上ではない成長を」
同日、本社で会見した齋藤社長(写真)は、「この10年を振り返ると、リーマンショックや宅配便事業の譲渡などで大きく落ち込んだ売上高や利益の回復が大きな課題であり、前計画と現計画で構造改革などに着手してきた」と述べた上で、新計画について「これまでの延長線上の成長から格段に加速する成長、非連続な成長を実現していきたい」と語った。
営業利益が18年度予想の770億円に対し、3年目となる21年度で830億円にとどまる点については「19年4月から取り組む同一労働同一賃金の導入も含む社員・賃金制度改革、医薬品物流への投資などが嵩むため、一時的に大きなコストが必要になる」と説明し、「ジャンプの前に屈むようなもの」と述べた。社員・賃金制度改革に伴うコストアップは21年度までの3年間で180億円、23年度で200億円を見込んでいる。
計画期間中にHD制への移行を検討
ホールディング制へ移行について齋藤社長は「個人的には、新計画の期間中にできたらいいと考えている」と述べた上で、「ホールディング制にすることでガバナンスを強化したい。日通グループはややもすると、日本通運が中央にあり、その下にグループ会社があるという親子の形だが、HD会社があり、その下に機能別に会社が並ぶ形にしていきたい。重複業務のスリム化にもつながる」と述べた。
また、M&Aについては「我々が目指す方向から考えると、主体は海外になる。イメージとしてはまだ未進出の地域をカバーしたり、重点化している産業軸を強化していくものとなる。国内がないわけではないが、目線は海外だ」と語った。
(2019年2月26日号)