西日本豪雨、トラックへ逆モーダルシフト
西日本豪雨の影響でトラック輸送への逆モーダルシフトが起きつつある。JR貨物の山陽本線は完全復旧が11月末までずれ込む見込みで、トラック、フェリーによる代行輸送も輸送能力全体の13~14%程度。フェリーも既にスペースが逼迫。高速道路網(山陽自動車道、中国自動車道)の早期復旧と併せ、トラック輸送の機動力が再評価されつつある。九州向けはモーダルシフトのメインルートとされてきたが、天災リスクを勘案し、輸送モードの見直しが進む可能性もある。
エコレールマーク商品が入手困難に?
西日本豪雨で物流の停滞により広島では欠品による休業が見られる。しかし、じわじわと影響が出てきているのが九州だ。
「九州で『エコレールマーク』が付いた商品が手に入りにくくなるのでは」とメーカー関係者は危惧する。豪雨で寸断した山陽本線の完全復旧までの対応として、JR貨物ではトラックとフェリーによる代替輸送を実施。しかし、そのキャパシティも限られている。被災地対応と猛暑の影響で飲料水の出荷はピークを迎えており、飲料メーカーなど九州向けの輸送を主に鉄道に頼ってきた荷主は輸送手段の確保に追われている。
九州向けのトラック輸送需要が急増している。「土曜日だけど、荷物を下ろしてもらえませんか」。東京近郊の倉庫ではトラックドライバーからこんな依頼を受けた。トラックのナンバープレートは九州。荷物を積んだ状態で次の「おいしい仕事」が見つかり、早くスペースを空けて九州に戻りたい模様。「二足三文だった」関東から九州への帰り便の運賃も上昇し、「いくらでも払うからとにかく運んでくれ」という荷主も出てきているようだ。
九州向けの輸送の問い合わせが増加
帰り便と荷物のマッチングを手掛ける「トラックの帰り便.com」へは関東から九州向けの輸送の問い合わせが増えている。しかし、「そもそも九州から上ってくるトラックが減っている。道路の状況や時間が読めないことから、九州に行きたがらないドライバーも多い」(担当者)。荷物によってはどうしても運ばなければならないため、「運賃は高めの水準になってきている」という。
鉄道の代替輸送モードであるフェリーは満船が続き、関係者によると「普段付き合いの薄い荷主やいちげんさんはお断り」。九州向けの輸送については、天災や気象リスクなどを考慮し、一部荷主では鉄道や海上輸送からトラックへの逆モーダルシフトに先行的に取り組んできた。しかし、日帰りが困難な長距離輸送でドライバー不足はより深刻。「既存荷主との対応で他を受けられる状況ではない」(九州のトラック会社)などトラック回帰がさらに進んでもその需要を吸収できるかという問題もある。
代替出荷依頼は青天井、残業増も
なお、倉庫の現場は既にキャパシティが限界に達しているようだ。メーカーの工場が被災し、復旧に時間を要することから、他工場・物流拠点からの応援出荷・代替出荷に追われている。「青天井に出荷依頼が来て、残業がすごいことになっている。事故を防ぐため荷主に申し入れをしている」(食品関係を扱う物流会社)。輸送モードだけでなく、出荷体制の見直しを迫られる可能性もある。
(2018年7月24日号)