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持続可能な物流実現へ「チルド物流研究会」発足=チルド食品9社

2024.10.10

チルド食品を取り扱う9社(伊藤ハム米久ホールディングス、日清食品チルド、日清ヨーク、日本ハム、プリマハム、丸大食品、明治、森永乳業、雪印メグミルク)は7日、持続可能なチルド食品物流の実現を目指し、「チルド物流研究会」を発足した。小売やその他の団体と業界間の物流課題を協議しながら、チルド食品物流のあるべき姿を目指し、「納品条件の緩和」「トラックドライバーの付帯作業削減」「共同配送の推進など輸配送効率化」「標準化、システム導入による効率化」――の課題に取り組む。

商品の安定供給へ商慣習の見直しが必要

7日に東京都内で開かれた記者発表会には、伊藤ハム米久ホールディングス取締役常務執行役員の伊藤功一氏、日清食品チルド取締役営業本部長の安田隆行氏、日清ヨーク取締役生産本部長兼物流部管掌の橋本健司氏、日本ハム常務執行役員加工事業本部長の松本之博氏、プリマハム専務執行役員営業本部長の新川裕二氏、丸大食品上席執行役員ハムソー事業部長の池田知功氏、明治執行役員生産物流プロセス戦略本部長の伊賀仁氏、森永乳業取締役常務執行役員生産本部長の柳田恭彦氏、雪印メグミルク取締役常務執行役員の岩橋貞治氏が登壇。各社の物流部門長も出席した。

登壇者を代表し、明治の伊賀氏は設立の背景と趣旨を説明し、「チルド食品は保管、出荷において10℃以下の温度管理が必要で鮮度が重視される。4月からの働き方改革関連法におけるトラックドライバーの時間外労働への上限規制や5月に公布された改正物流総合効率化法への対応が求められており、大きな転換点を迎えている。政府の『物流革新に向けた政策パッケージ』でトラックドライバーの高齢化などによりドライバー不足が進み、2030年には34%の輸送力が不足するとの見通しが出ている。何も施策を講じなければ、商品を持続的にお客様にお届けできなくなる、厳しい環境ととらえている。今後、商品を安定的に供給し続けるには、これまで当たり前としてきた納品条件や商慣習の見直しが必要。トラックドライバーが運転以外に取られる時間を省き、本来の業務である配送にかける時間を増やし、より働きやすい環境を整えていくことで、ドライバーを確保していく必要がある」と強調した。

さらに、「今回、この物流課題に大きな危機感を持った9社が業界の垣根を越えて結束し、『チルド物流研究会』を立ち上げることとなった。研究会では持続可能なチルド食品の物流体制のあり方を協議し、これらの課題解決を目指す。研究会の立ち位置としては、各スーパーマーケット団体や各業界の団体とチルド物流のあり方を団体で相互に協議する形で進めていきたい。その過程で双方の意見を踏まえたチルド食品物流のあるべき姿や方向性を定め、各団体との協議で決定した内容を踏まえ、参加する9社が小売業や卸各社などのお得意先と個別に納品条件を交渉・決定する仕組みをつくる。チルド食品に関わるメーカー、流通、物流事業者と一丸となって今後のチルド物流のあり方の協議を進め、物流課題の解決と環境負荷低減を両立させながら、お客様に安定的に商品を供給できる持続可能なチルド食品物流を目指して活動していく」と表明した。

付帯作業削減しドライバーの負担を軽減

チルド食品物流の課題について、日清食品チルドの安田氏が「一般的には0~10℃で保管・流通させ、賞味期限や納品リードタイムが短いこと、多頻度少量配送などの特徴がある」と説明。研究会で取り組む課題のうち「納品条件の緩和」では、「現在、センター納品において小売業様へのチルド食品の納品は、午前からお昼過ぎに注文を受けた後、数時間後には配送のために拠点を出発し、その日のうちに各小売業様の物流センターに納品し、翌日店舗に届けられている。注文を受けてから納品まで4時間程度しかない小売業様もあるのが現状。この短いリードタイムによって商品の安定的な供給が徐々に困難になってきている。納品リードタイムの延長により配送車両を手配する時間的猶予が生まれ、計画的な在庫管理が可能になり、欠品リスクの低減につながる。加えて、共同配送の可能性が広がる」と述べた。

加えて、「365日毎日納品している配送頻度を減らし、発注単位をバラ発注からケース単位への変更により、ドライバーの検品作業の削減と保管倉庫の作業員の負荷軽減を図りたい。また、新商品・特売品の販促時の発注を事前化して在庫のブレを抑え、食品廃棄ロスの削減も目指す」とした。

「トラックドライバーの付帯作業削減」では、「小売業の物流センターに納品する際、一部の物流センターで昔から行われている付帯作業として、店別仕分け作業、庫内積み替え・移動作業、フォークリフト作業などがある。これらを少しでも削減することで、運転可能時間を増加させ、配送業務時間の確保を目指す」と述べた。共同配送の推進を中心とした「輸配送の効率化」では、トラックや共配拠点を共同で活用し、同じ方面の納品先への商品をひとつのトラックに混載して配送することや各社拠点から他のエリアの各社拠点への幹線輸送についても共同化を検討する。「輸配送の効率化によりトラック台数を削減し、CO2削減など環境問題への対応と持続可能なチルド食品物流を構築する」と表明した。「標準化、システム導入による効率化」では、パレット運用の推進や台車の活用を取り組みに挙げた。

活動スケジュールとしては、今年度は準備期間と位置づけ「納品条件の緩和」と「トラックドライバーの付帯作業削減」の2つの分科会で課題を整理し、優先順位づけを行う。25~29年度にかけては「変化期」とし、他業界団体との協議、行政等の連携のほか、残りの2つの課題についても分科会を設置。持続可能な物流のあり方(ガイドライン)の策定を目指す。30年をいったんの「完成期」とし、一連の取り組み課題の解決を目標とする。

共同配送の課題は短い納品リードタイム

質疑応答では、共同配送の課題について「納品リードタイムが短く、ひとつの拠点に集めたり、トラックが集荷に回ると時間が間に合わなくなってしまう」(雪印メグミルクの岩橋氏)と指摘。今後の参加企業拡大について、「増える可能性はあるが、まずは9社でチルド食品物流特有の課題に関し協議を進めていく」(森永乳業の柳田氏)、チルド物流特有の課題では、「常温食品に比べ著しく賞味期限が短く、納品に合わせてこまめに生産し、需給バランスがとりにくい。タイムリーな輸送体制をとらないと納品に支障をきたし、他の商材に比べリスクが大きい」(日本ハムの松本氏)などが報告された。また、研究会としては会長職やヘッドとなる会社を決めず、各社幹事は持ち回りで運営していく方針も示された。

なお、記者発表会には経済産業省商務・サービスグループ消費・流通政策課長兼物流企画室長の平林孝之氏、農林水産省大臣官房・新事業・食品産業部食品流通課長の藏谷恵大氏、国土交通省物流・自動車局物流政策課長の紺野博行氏も出席。藏谷氏は「チルド食品は物流上、フレッシュとフローズンの両方の難しさを併せ持った品目だ。他方で各社が商品の高付加価値化や差別化に取り組み、チャンスが大きい品目でもある。この研究会は物流面では協調し、運送事業者の負担を減らし、商品面では高付加価値化し、運送事業者への支払いの原資をしっかり確保していくという、他の分野のモデルとなる取り組みとしての可能性、潜在性を秘めている」とエールを送った。
(2024年10月10日号)


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