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東京水産ターミナル、世界最大&最新鋭の冷蔵倉庫建設へ

2024.09.19

東京水産ターミナル(本社・東京都大田区、武田信一郎社長)の移転計画が進展している。現在の東京都大田区東海から大田区城南島に移転し、2027年中に“世界最大”かつ“最新鋭”の新たな冷蔵倉庫の稼働開始を目指すとしている。収容能力は約30万tで、セキュリティやBCP対策の充実、DXに対応した電力供給体制、通信網の整備を図り、首都圏中枢の低温物流基地としての機能を強化する。

「時代に合った新しい施設に変えていく必要」

東京水産ターミナルは1972年に設立され、76年から88年にかけて、東京港大井ふ頭の南端エリアで竣工した5棟の冷蔵倉庫で構成。収容能力は約26万tで、同社の株主13社がテナントとして入居している。

「東京港第9次改定港湾計画」に盛り込まれた大井ふ頭の再編に伴い、東京水産ターミナルは移転・再整備することとされ、このほど東京都から代替地として城南島の用地(約9・1ha)を確保した。

「移転の背景にあるのが、既存の施設の老朽化だ。50年前と現在では冷蔵倉庫に求められる機能が変わってきており、陳腐化した施設の更新は不可欠。当初の見込みより建設コストの上昇が見込まれるが、計画を推進していきたい」と武田社長は話す。

東京港は日本最大の食品の輸入港だが、都内には新たに冷蔵倉庫を建てられる用地がほとんどなく、冷蔵倉庫の庫腹拡張が困難。このため川崎や横浜など近隣のエリアに分散せざるを得ない状況が続いている。

東京冷蔵倉庫協会の会員事業者の庫腹(約140万t)の平均築年数は35年で、築40年を超える施設が44%を占める。東京水産ターミナルは東冷倉の収容能力の2割弱に相当し、「これを時代に合った新しい施設に変えていく必要がある」と強調する。

建設コストの上昇によりテナントの収益への影響も考えられるが、個社単独で建設するよりは経済合理性があり、また、今後の人件費の上昇を見据えた料金改定や負荷の大きいサービスの廃止などにより、冷蔵倉庫の収益体質の改善も期待できるとした。

セキュリティ・BCPを強化、太陽光発電も導入

新たな冷蔵倉庫で掲げるコンセプトが“世界最大”と“最新鋭”。具体的には、①安全・安心の追求②庫腹の確保③物流の高度化への対応④職場環境の改善⑤環境負荷の低減――の観点から施設・設備を設計し、詳細は12月頃決定する。

安全・安心の追求ではフードセキュリティを強化し、従業員には指紋認証システム、ドライバーにはQRコードを活用した入退場管理を行う予定。5・2mの盛り土により津波対策を充実させ、電源設備を高所に設ける。

将来、人手不足を解消するためにマテハン機器が導入されることを想定し、現状の1・7倍の電力の供給体制とする。太陽光発電システムの設置により必要電力の39%を賄い、蓄電池、非常用発電機を導入。通信網の整備としてローカル5Gの導入も視野に入れる。

庫腹の確保では、現行の収容能力約26万tを約30万tに拡大。全体で172バースを整備し、ドックシェルター、エアシェルターを装備。荷さばき場は現行の4割増しのスペースを確保し、陽圧式空調システムの導入により品質管理を向上させる。

物流の高度化では、「2024年問題」への対応も含めて現在、テナントとバースの効率化に向けた運用を検討している。すでに多くのテナントがHacobuのバース予約受付システム「MOVO Berth」を導入し、オンラインチェックインシステムの運用を開始しており、移転時までにさらなるシステム活用を進め、予約率の向上を目指す。

職場環境では、事務所スペースを1・3倍に拡張し、会議室、カフェ、コンビニの設置により共用スペースを1人あたり1・7倍にする。通勤のためのバスの確保なども関係先と協議していく。
(2024年9月19日号)


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