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伊藤ハム米久HD、持続可能な幹線輸送へ複合的な改革推進

2021.09.07

伊藤ハム米久ホールディングス(本社・東京都目黒区、宮下功社長)では、幹線輸送の改革を進める。トラックドライバー不足や労働時間規制の強化に対応するため、全国の生産拠点から消費地への長距離輸送について海上・鉄道輸送へのモーダルシフトに加え、トレーラ化やスイッチ輸送の導入などで輸送効率を向上させる。2024年4月からドライバーの時間外労働上限規制が適用され、長距離輸送の制約がさらに厳しくなることから、複合的な取り組みにより持続可能な幹線輸送のあり方を探る。

新体制で物流部門はHD直轄組織に

16年4月1日に伊藤ハムと米久が経営統合し、伊藤ハム米久ホールディングスとしてスタートした。新体制では全体最適の目線で取り組むための組織体制づくりの一環として、18年10月1日に物流部門をHDの直轄組織に変更。今年度からスタートした3ヵ年の中期経営計画では、生産・物流体制の最適化に取り組む。

同社の物流は「食肉事業」と「加工食品事業」でそのスタイルが異なる。食肉事業は“商物一体”で、東西の物流拠点である関東DC(東京・平和島、城南島)、関西DC(大阪・南港)に輸入肉や東北3県および鹿児島県産の国産肉を保管・仕分けし、全国83の販売拠点に移送。販売拠点が各エリアの得意先にルートセールスを行う。

一方、ハムソーセージを含む加工食品事業は“商物分離”で、営業拠点では在庫は持たず商流に特化している。全国11ヵ所の伊藤ハムグループの生産工場から北海道、東北、東京(柏)、中部、六甲、九州の全国6ヵ所の大型ロジスティクスセンター(LC)に幹線輸送し、同LCから担当エリアの得意先に配荷する。

産地、工場から消費地への長距離輸送が発生

同社の物流の大きな課題となっているのが幹線輸送だ。食肉事業では輸入肉は京浜港、阪神港から東西のDCまでの輸送距離が短いが、国産肉の産地は消費地と離れており、長距離輸送が発生する。加工食品事業でも配荷先の4割は関東甲信越に集中しており、全国の工場から消費地のLCまで運ばなければならない。

加工食品事業では販売チャネルがスーパーからコンビニやドラッグストアなどに多様化したことで物流の非効率が生じている。店舗数の増加に伴い、届け先のセンターは増えているが、とくにチルド品は1店舗あたりの納品量が少量となる。納品時間指定により混載ができないため、配送車両の積載率が低下している。

九州から関東向けに海上、鉄道を利用

同社ではトラックドライバーへの労働時間規制強化の動きや輸送に伴うCO2排出量の削減を見据え、12年以降、幹線輸送で海上へのモーダルシフトを推進。食肉事業では、宮崎、鹿児島県で生産される食肉の消費地DCへの輸送を10tトラックからトレーラによるフェリー輸送に切り替え、大量輸送とドライバーの負荷軽減を図っている。

19年度からは、加工食品事業でキユーピーとの共同輸送のスキームで鉄道へのモーダルシフトを開始。キユーピーが関東から九州へ輸送した31ft冷凍コンテナの帰り便を活用し、九州工場(佐賀県基山町)で製造した冷凍食品を週に2、3回、東京LC(千葉県柏市)向けに輸送している。

鉄道輸送を拡大したい考えだが、冷凍コンテナやダイヤが限られ、また、悪天候や自然災害時の輸送障害による安定供給への不安もあるため、メドが立っていない。一方、海上輸送では、7月に東京九州フェリーの横須賀~新門司の新航路が開設したことを受け、九州から東京LC向けの新たな輸送ルートとして確保していく。

トレーラ化やスイッチ輸送導入も検討

西宮工場(兵庫県西宮市)、六甲工場(神戸市東灘区)から東北向けの冷凍・冷蔵食品、東北工場(宮城県栗原市)から関西向けの常温品の輸送について、鉄道輸送への切り替えを目指していたが、「災害時のリスクをヘッジできるかどうかを検証する必要があり、トラック輸送をすべて鉄道に切り替えるのは難しい」(竹内大介物流統括部部長)。

今後は、常温品での鉄道利用拡大やトレーラ化による輸送量の拡大、リードタイムに余裕を持たせたうえでのスイッチ輸送の導入も検討。パレット化の比率を向上させ、荷役時間の短縮により輸送の生産性向上を図る取り組みも進めていく。また、食品メーカーとの往復輸送など共同化の可能性も探る。

中期経営計画では生産拠点の再配置とともに物流の拠点の最適配置も検討する。これまでは集約を進めてきたが、1拠点で多くの人員が必要となり、カバーエリアが広域化するなどの課題も浮上している。たとえば、関東圏では東京LCが関東甲信越全域をカバーする体制だが、一部エリアを新設拠点に移管することも視野に入れる。
(2021年9月7日号)


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