トラスコ中山、GROUNDと資本提携を締結
機械工具卸売商社のトラスコ中山(本社・東京都港区、中山哲也社長)は15日、GROUND(本社・東京都江東区、宮田啓友社長)と資本業務提携を締結し、第三者割当増資によって同社へ総額5億円を出資すると発表した。これに併せて、2024年の開設を予定する「プラネット愛知」(愛知県東名古屋市)に、GROUNDの物流施設統合管理システム「GWES」を導入することを明らかにした。同日には両社による記者発表会が開かれ、中山社長、宮田社長らが出席した。
100万SKUの在庫をWESで適切に管理する
新設する「プラネット愛知」は敷地面積4万1680㎡、倉庫面積は8万3260㎡の大型拠点となる計画。1日当たり入荷能力は、18年に稼働した「プラネット埼玉」(埼玉県幸手市)の約3倍となる1万5000行、出荷能力も3・5~4倍に当たる5万行を目指す。保管点数は100万SKUを見込み、「事実上、在庫条件をなくすことに等しい」(直吉秀樹・取締役物流本部本部長)。同社が注力する直送能力の強化に向けて自動梱包ラインも5ライン以上設置するほか、愛知県以西の各物流センターへの在庫供給機能も持たせる。
膨大な在庫を扱うことになる庫内には従来型のマテハンに加え、最新のロボット技術も多数採用する計画。可能な限りの自動化を進めながら、庫内の多様なトランザクションデータを蓄積し、作業の進捗をリアルタイムに分析・可視化していく。一方で、従来のWMSでは上位の基幹システムから作業者やマテハンが指示を受けることもあって、仕組み自体が複雑に絡み、庫内の全体最適に欠かせないデータが同じ粒度で取得できないなどの課題が生じていた。
そこで、GROUNDが開発したWES(Warehouse Execution System、倉庫運用システム)である「GWES(GROUND Warehouse Execution System)」の導入を決定。GWESはマテハンやロボットなど庫内の様々なシステムに横串を刺す形で配置され、同じ粒度のデータをAIがリアルタイムに収集、可視化でき、分析が可能となる。「最も期待されるのは、庫内の作業指示とデータ分析による最適化の仕組みを明確に切り分けられること。従来はこれらを全て同一の仕組みで対応しており、かなり無理が生じていた」と直吉氏は説明する。
将来的には、仕事量の予測や要員配置計画の自動化、さらには商品の最適なロケーション指示などもAIで行えるような仕組みもGWESに組み込んでいく。
トラスコ中山ではこれまでも、18年にGROUNDのAI物流ソフトウェア「DyAS」の導入実験を「プラネット東関東」(千葉県松戸市)で実施したほか、19年には物流ロボットソリューション「Butler」73台を「プラネット埼玉」に採用するなど同社との協業を進めてきた。そうした中、「さらに物流を高度化するには宮田氏の力が必要であり、心中覚悟で付き合うには資本参加しか手はない」(中山社長)と判断したという。
トラスコPF構築へ、総投資額は250億円に
同日には名古屋大学とも産学連携協定を締結。プラネット愛知における未来型物流の実現を目的に、共同研究や人材育成で協力する。さらに、今月30日にはAIベンチャーのシナモンにも5億円を出資する予定。GROUNDを含めた4者の連携で、AIとロボティクスの協奏新流通プラットフォーム「トラスコプラットフォーム」の構築に向けたDXの一層の加速――すなわち“トラスコDX2.0”を推進し、中期経営計画に掲げる「ベストなものが、 もうそこにある」 の実現を図る。なお、同プロジェクトへの総投資額はプラネット愛知の建設費用を含め、約200~250億円を見込んでいる。
(2021年6月22日号)