メニュー

【レポート】食品業界で広がる共同物流網を読み解く

2024.09.26

食品・飲料系荷主企業による物流共同化の取り組みが本格化してきた。輸送力の縮小が懸念される「2024年問題」への対応に向けて共同輸送などの取り組みを加速。重量貨物+軽量貨物の混載輸送やトラックの共同利用など、食品業界で垂直/水平に広がりを見せる共同物流網の取り組みに迫った。

日清はサントリー、アサヒ、サッポロなどと協働

軽量の即席麵と相性のよい荷主と共同輸送を多方面に拡大しているのが日清食品だ。さかのぼれば、同社は2017年6月から、サントリーホールディングスと、北海道の帯広エリアにおける物流の共同化を開始。恵庭、千歳にそれぞれ倉庫をもつ両社が、帯広エリアの卸店や小売店の配送センターの一部に対し、日清の即席麺など食品全般、サントリーの酒類と飲料全般の共同配送を実施している。

さらに20年9月から、アサヒ飲料と関東~九州間で共同輸送を開始。茨城県内に生産工場を持つ両社は従来、日清は茨城にある関東工場から福岡物流センターまで、アサヒ飲料はアサヒビール茨城工場から佐賀配送センターまで個別に製品を輸送していた。共同輸送では、アサヒビール茨城工場で飲料製品を積載したトラックが、日清の関東工場に立ち寄って即席麺製品を積み込んで九州の各拠点まで混載輸送する。

22年3月にはサッポログループのサッポログループ物流と、ビールと即席麺を組み合わせた共同輸送を、静岡~大阪間で開始。往路ではサッポロのビール樽を積載したトラックが日清の静岡工場に立ち寄り、即席麺製品を荷台上部の空きスペースに積載。大阪へと輸送し、それぞれの倉庫で荷降ろしをする。復路ではサッポロの空き容器と日清の空きパレットを混載し、静岡にあるそれぞれの倉庫へ輸送する。

23年10月には全国農業協同組合連合会(JA全農)と関東~岩手間、福岡~山口間でラウンド輸送も開始。岩手にあるJAおよびJA全農の保管倉庫から関東にある精米工場へコメをトラックで輸送した後、帰り便で茨城にある日清の生産工場から岩手にある同社の製品倉庫まで即席麺を輸送する。福岡~山口間では、福岡にあるJA全農の精米工場から山口にある日清の生産工場へ、カップライスの原料米をトラックで輸送した後、帰り便に同工場で製造された即席麺やカップライス製品を積み、福岡にある日清の製品倉庫へ輸送する。

さらに、今年7月には伊藤園と愛知~静岡間の輸送において、茶葉と即席麺のラウンド輸送の毎日運行を開始した。愛知からの往路で伊藤園の茶葉を輸送し、復路で日清の即席麺を輸送することで配送効率を高め、車両台数の削減を図る。両社は昨年8月には空きパレットの関西エリアから静岡県の各工場への返却で、共同返却輸送を開始するなど連携を深めており、将来的には即席麺と飲料製品の混載輸送を検討していく。

なお、伊藤園は8月からコカ・コーラ ボトラーズジャパンと愛知県新庄市を中心としたエリアで共同配送を開始した。コカ・コーラが委託する物流パートナーが店舗配送後の復路で、伊藤園豊橋支店に立ち寄り、伊藤園の製品を積載。コカ・コーラの倉庫に一時保管後、翌日以降に両社の製品を混載し、共通店舗へ納品する。

ビール大手4社は鉄道による共同輸送

ビール業界も共同物流が進展している。アサヒビールキリンビールは17年、石川県金沢市に共同配送センターを開設し、関西エリアの工場から、石川県エリアに向けて、JR貨物の鉄道コンテナによる共同輸送を開始した。さらに、同年9月にはサッポロビールサントリービールの2社も含め、4社共同で北海道・道東エリア向けに鉄道コンテナを活用した共同配送を開始。トラック単位に満たない荷物を対象に、各社の札幌市近郊の製造・物流拠点から、札幌貨物ターミナル駅内の日本通運の倉庫に製品を集積し、同倉庫で配送先ごとに各社製品を仕分けして積み込んで配送する。4社合算で車両単位となる場合は大型車での共同輸送を行う。

卸とメーカーやメーカー間の物流協業も進む。アサヒビールは伊藤忠食品と21年4月からトラックの共同利用によるラウンド輸送を開始。アサヒビール神奈川工場から製品を輸送するトラックが、伊藤忠食品の相模原IDCに納品した後、イトーヨーカドー小田原店への店舗配送を行う。一方、伊藤忠食品の手配した車両は相模原IDCからイトーヨーカドー静岡店への店舗配送を行った後、アサヒ飲料の富士山工場で製品を積み、アサヒ飲料厚木配送センターへと拠点間輸送を行う。

サッポログループ物流はハウス食品と23年12月から、北関東~大阪間でサッポロビールが扱う焼酎などの酒類とハウス食品のスナック菓子を組み合わせた共同輸送を開始した。サッポロビール群馬工場とハウス食品関東工場を起点に、重量貨物である焼酎などと軽量貨物であるスナック菓子を積み合わせて輸送することで、輸送効率を大幅に向上した。

加工食品・冷凍食品も物流は共同で

加工食品メーカーの大手6社味の素、カゴメ、日清オイリオグループ、日清製粉ウェルナ、ハウス食品グループ本社、Mizkan)は15年、共同物流の推進を目指して連携し、「F―LINEプロジェクト」を発足。19年4月には共同物流会社であるF―LINE㈱を設立し、長距離幹線輸送の再構築や北海道エリア・九州エリアでの共同配送などの取り組みを進め、23年春からはプロジェクトの第2期が始動している。

その一環として、今年3月からは中部・関西地区から九州への輸送において、関西~九州間のフェリーを使用した定期海上輸送を開始した。同区間は従来、各社が輸送手段を都度手配して九州にあるF―LINE㈱の物流センターへ輸送していた。新たな取り組みでは輸送の一部で、各社ごとに出荷する曜日を割り当て、中部・関西の各社出荷拠点から関西の港まで陸送し、関西~九州間をフェリーで定期的に海上輸送する。

冷食業界も大手メーカー同士が物流共同化に向けて動き出した。味の素冷凍食品テーブルマーク、ニチレイ、ニッスイ、マルハニチロは6月、共同配送の推進や物流データの活用で協働を始めると発表した。従来から個社同士で行っていた共同物流を拡大し、共同保管・配送による積載率の向上と物流ネットワークの安定化を目指す。併せて、物流GⅩ・DXの推進として共通プラットフォームによるデータ共有・利活用を推進する。
(2024年9月26日号)


関連記事一覧