【巻頭レポート】「ホワイト物流」で〝ドライバー危機〟解消へ
深刻なトラックドライバー不足に対応し、トラック輸送の生産性向上や物流の効率化を進め、女性・高齢者を含む多様な人材が活躍できる労働環境を実現する目的で今年度から本格スタートした「ホワイト物流」推進運動。今年4月に専用ポータルサイト(写真)を開設し、上場企業をはじめ、主要企業約6300社に参加を呼びかけ、ドライバー時短への賛同表明と具体的な取り組みを示す〝自主行動宣言〟の提出を求めたところ、現在までに206社が宣言を提出。その多くが物流会社の労働環境改善に向け、協議に応じる姿勢を示しており、両者の連携に向けた新たな一歩となりそうだ。
5月の大型連休以降、徐々に参加企業が増え始め、8月23日現在で206社を数える。業種分類では「製造業」が83社、「卸売業・小売業」が37社。道路貨物運送業や倉庫業など物流事業者の「運輸業・郵便業」が79社、「サービス業」は4社。そのほか「情報通信業」が2社、「金融業・保険業」が1社となった。なお「農業・林業」「建設業」「鉱業・採石業・砂利採取業」などはゼロだった。
異常気象時の運行中止に賛同
「製造業」83社が自主行動宣言のなかで具体的に記載した項目を見ると「取引先や物流事業者から、荷待ち時間や運転者の手作業での荷卸しの削減、附帯作業の合理化等について要請があった場合、協議に応じるとともに、自らも積極的に提案する」を挙げたのが63社で最も多かった。これは、ドライバーの時短に向けて厚生労働省・国土交通省・全日本トラック協会が策定した「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」で、荷主と物流事業者の連携強化を推奨しており、それに則った格好だ。
次に多かったのは「物流の改善提案と協力=パレット、カゴ台車、折りたたみコンテナ、通い箱等を活用し、荷役時間を削減する」が36社。関連した取り組みとして江崎グリコは「パレットへの積付け改善や増パレット車等のトラックの大型化により輸送の生産性を高め」、日清オイリオグループは「パレット・面単位の輸送と小口配送を削減する」とした。ハウス食品は「物流機器との親和性が高い製品設計を行うことで一貫パレチゼーションを推進する」などメーカーならではの取り組みを盛り込んだ。
続いて多く挙がっていたのが「異常気象時等の運行の中止・中断等」の取り組みで30社。これは、台風、豪雨、豪雪等の異常気象が発生した際やその発生が見込まれる際に、無理な運送依頼を行わないようにすることであり、無理な運行要請をした場合、荷主勧告の対象になることから、リスクを回避したと見られる。
発着荷主がリードタイムの延長
27社が掲げたのが、「リードタイムの延長」。トラック運転者が適切に休憩を取りつつ運行することが可能となるように、発荷主として出荷予定時刻を厳守する取り組む。一方、着荷主としては、幅を持たせた到着時刻を認めることなどにより十分なリードタイムを確保することも実施する。関連して花王は「土曜・祝日の輸送依頼を縮小する。出荷日前々日の輸送依頼に努め、物流事業者が余裕を持って適切な配車を行えるようにする」とした。
このほか「船舶や鉄道へのモーダルシフト=長距離輸送について、トラックからフェリー、RORO船や鉄道の利用への転換を行う。この際に、運送内容や費用負担についても必要な見直しを行う」が23社あった。サッポロビールは「長距離輸送について、トラックから鉄道及びフェリー・RORO船等の利用への転換を推進するとともに同業・他業種との共同配送を促進し、安定期な輸送力確保」を行っていく。
独自の取り組みでは共同物流がカギ
各社独自の取り組みで目立ったのは、荷主・事業者と連携した共同物流の取り組みだった。日清製粉グループは「共同物流により、積載率の向上、配送効率の向上などに取り組む」と宣言。味の素、カゴメ、日清オイリオグループ、ハウス食品グループ本社などは、共同物流会社のF‐LINEを基盤とした共同配送を展開するとした。アサヒグループホールディングスは「共配の検討・運送会社とのアライアンス強化策を模索する」と方針を示し、サントリーホールディングスは「商品の運送を他社と共同で実施することで運送の効率化を図る」としている。また、マツダは「車両やサービスパーツの他社との共同輸送」の取り組みを進める。
社内の物流以外の部門との連携を掲げたのはオカムラで「繁忙期の輸送量を平準化できるように在庫備蓄、納期工期の調整等、製造・販売・物流・施工部門一体となって対策を講じる」とした。
国交省の「ホワイト物流」推進運動担当者は「荷主企業でもドライバーの労働環境改善に向けて本気で改善に取り組む機運が高まってきたと認識している」と運動の意義を強調。「荷主と事業者の連携をはじめ、発荷主と着荷主の連携など、サプライチェーン全体の視点に立ち、関係者と行政がともに努力することが重要だ。荷主・物流事業者といった物流の関係者と、最終利用者である国民を含めた関係者すべてが取り組む改善運動を通じてドライバーの労働環境改善を図っていく」と述べ、「引き続き、多くの企業に参加していただきたい」と呼びかけている。
(2019年9月17日号)