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JR貨物/社長交代会見 「変革さらにスピードアップ」真貝社長

2018.06.26

JR貨物(本社・東京都渋谷区)は21日に開催した株主総会後の取締役会で役員人事を正式に承認し、同日付で代表取締役会長に田村修二氏、代表取締役社長に真貝康一氏が就任した。

同日行われた記者会見で田村新会長は「社長在任の6年間はどん底からのスタートだったが、2期連続で鉄道事業部門の単体黒字を達成できたことがもっとも印象深い」と振り返った上で、「ようやく経営改革に伴う体質改善が根付きつつある。その流れを逆戻りさせず、真貝社長とタッグを組んで頑張っていく」と述べた。

バトンを引き継いだ真貝新社長は、「変革の流れをさらにスピードアップし、確固たる経営基盤をつくる。現場とお客様の2つを軸に、鉄道を基軸にした総合物流企業グループを目指していきたい」と意欲を語った。田村、真貝両氏の発言内容は次の通り。

田村会長 6年前の平成24年6月に社長就任したが、当時、鉄道事業部門は78億円の赤字であり、どん底からのスタートだった。それが2期連続で単体黒字化を達成できるまでになったことがいちばん印象深い。これは、単に結果が出たということではない。1年後に就任した石田(忠正)会長とタッグを組んで経営改革や意識改革、体質改善を進めた結果、課題分析をする、改善に向け行動に移す、それをやり抜くというサイクルがきちんと回してこられたことで到達できた。JR貨物にようやく、やり抜くという体質改善が生まれつつある。それを逆戻させないでさらに追及していきたい。まだまだ経営基盤はぜい弱だが、鉄道を基軸とした総合物流企業グループを目指し、真貝社長とタッグを組んで頑張っていきたい。

真貝社長 JR貨物グループの発展のために誠心誠意尽くしたい。いま先端技術の発展、労働力不足、産業構造の変化など、社会・産業を巡って大きな変化が起きている。そのなかでJR貨物は、安全による信頼を基盤にしながら、新しい時代に合致した総合物流企業グループを目指していく。これまで続けてきた経営改革、会社を変えていくという変革の流れをさらにスピードアップし、具体的な施策に落とし込んでやり抜いていく。そして、確固たる経営基盤をつくっていきたい。

――後任に真貝氏を選んだ理由は? また、いつ伝えたのか?
田村 5月2日に正式に伝えた。後継に推薦した理由は、経営者としての素質が備わっていると感じたからだ。経営会議の場などでも、モノの見方が論理的で、かつ広い視野で見ていると感じていた。同時に、比較考量する思考方式を持っており、その上で決断している。部下の使い方も、任せて育てるということをやっている。また、東日本大震災の発生時に、東北支社長として現場管理に卓越した力量を示したことも大きい。

――会長、社長の役割分担は?
田村 会社は社長が中心になってオペレーションするもの。社内では社長が前面に出て指揮をとってもらう。とはいえ、私も代表権のある執行役員でもあり、真貝社長と緊密なコミュニケーションをとっていきたい。

――真貝社長に。ご自身の強みとは?
真貝 JR貨物に入る前は銀行で30年務めた。その間、化学会社や非鉄金属、公共セクターの営業を担当したほか、システム部門にもいたことがある。銀行での経験は自分自身の大きなバックボーンになっている。また、1999年から03年までの4年間、ハウステンボスに常務として出向していた。そこで年中無休でお客様を楽しませることの大変さ、現場の力の大きさを痛切に感じた。その後、JR貨物に入り、最初はグループ会社の戦略企画部門で、JR貨物グループとしての強みを感じた。また、東日本大震災では、当社グループの社員、JR旅客各社、利用運送事業者など多くの関係者のお世話になりながら、現場の力が企業を支えるということを痛切に感じた。やはり、現場とお客様の2つが軸であり、その2つをどう合致させていくのかが大事だ。

――株式上場に向けての考えは?
真貝 これまでの経営改革の中でコーポレートガバナンスやコンプライアンス、危機管理、リスク管理などの体制を整備してきており、上場基準を満たすためにも、この部分をさらにきちっとやっていく。一方、収益面では、鉄道事業が2期連続で営業黒字になってはいるものの、一部不動産の収益も入った上での黒字化であり、収益基盤はまだまだ十分ではない。さらに確固たるものにしていきたい。ただ、基盤は徐々に整ってきていると思っている。

――鉄道を基軸とした総合物流企業グループとは?
真貝 東京貨物ターミナル駅の構内に建設する「東京レールゲート」のうち、今年夏に着工するWEST棟は、お客様からの引き合いも多く、現在条件などを交渉している。ドライバー不足などを背景に、鉄道を利用したいという強いニーズを感じている。お客様はなるべくヒトを使わない効率的なサプライチェーンを構築したいという思いがあり、物流施設を整備するなかで、鉄道を利用いただけるような施策を考えたい。また、東京タだけでなく、全国にある貨物駅の構内や隣接地でも新たな施設を整備できる用地は多くある。

――社員へのメッセージは?
真貝 現場とお客様の2つが基本だと伝えた。いま、業務創造推進プロジェクトが進んでおり、現場の社員の意見やアイデアを具体化する流れができている。提案を受けたら、経営としてジャッジした上でヒト・モノ・カネの手当てをしていきたい。

――利用運送事業者にメッセージを。
真貝 労働力不足が進むなかで、利用運送事業者の皆さんと、より良い物流ネットワークをつくっていきたい。JR貨物だけではお客様のニーズを把握し切れていない。共同営業などを通じて、鉄道利用をより一層加速させていきたい。

――座右の銘は?
真貝 囲碁はやらないが、「着眼大局 着手小局」はいい言葉だと思っている。広い視野で戦略を考え、それをいかに具体策に落ち仕込んでいくか。そして、それを着実に実行していくためには、現場力を引き出していかなければならない。そこが経営のいちばん大切なところだと思っている。

【プロフィール】
真貝康一(しんがい・こういち) 1955年6月11日生まれ。63歳。78年3月東大法卒、同年4月日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行資本市場部長、証券部長などを経て、2007年4月JR貨物事業開発本部グループ戦略部担当部長、同年6月グループ戦略部長、09年6月執行役員東北支社長、11年6月常務執行役員東北支社長、13年6月総括執行役員ロジスティクス本部営業統括部長、14年6月取締役ロジスティクス本部営業統括部長兼営業部長、15年6月取締役兼執行役員ロジスティクス本部営業統括部長兼営業部長、16年6月取締役兼常務執行役員ロジスティクス本部営業統括部長、17年6月取締役兼常務執行役員事業開発本部長、18年6月代表取締役社長兼社長執行役員。
趣味はテニス、水泳、スキー、ゴルフなど「身体を動かすこと」。JR貨物のラグビー部、水泳部、テニス部の部長も務める。
(2018年6月26日号)


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