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【ズームアップ】航空貨物の国内輸送を鉄道シフト=NCA Japan

2022.04.21

日本貨物航空(NCA)の子会社として成田空港で航空貨物の輸出入関連業務を担うNCA Japan(本社・千葉県成田市、藤倉聡社長)は、輸出貨物の福岡~東京間の輸送で鉄道を利用している。国際航空貨物の国内輸送における鉄道利用ケースは限定的だが、同社は「2024年問題」への対応や環境負荷低減を目的に2017年より運用を開始。昨年8月にはエコレールマーク協賛企業としても認定され、同マークの活用で、鉄道モーダルシフトへの取り組みをより広くアピールしたい考えだ。

香港、シカゴ向け電子部品などの輸送で鉄道利用

同社は、16年9月に第二種貨物利用運送事業の許可を受けた。これに伴い、福岡~東京間の輸出貨物の鉄道輸送利用をNCAと検討。同社はNCAのハブである成田空港を発着する貨物の国内輸送を手配するが、長距離輸送区間では、トラックの需給ひっ迫によって車両を確保しにくくなっていた。加えて、「2024年問題」の影響によるドライバー不足や運賃の上昇といった課題への対策も不可欠だったことから、17年にJR貨物および日本フレートライナーの2社とともに、鉄道輸送の本格的な運用を開始した。

具体的なモーダルシフト区間は、福岡貨物ターミナル駅から東京貨物ターミナル駅までの約1000㎞。航空貨物代理店による輸出通関後に福岡空港内「福岡エアーカーゴターミナル(FACTL)」の保税上屋へ搬入された貨物を、同所で福岡~成田間の保税運送を申請し、12ftコンテナに積み込んで福岡タへトラック輸送する。同駅から東京タまで鉄道輸送したコンテナを、再びトラックに積み換え、成田空港へ運ぶ。日本フレートライナーでは福岡タまでと東京タから成田までの輸送トラックの手配と鉄道輸送枠の予約業務を担当。輸送の際には、自社コンテナを利用すると空コンテナの回送コストがかかることから、JR貨物所有のコンテナを利用している。

鉄道で輸送されている主な品目は、電子部品などのパーツ類。コンテナ輸送の衝撃に耐えきれる貨物である必要があり、半導体などの輸送は難しい。鉄道輸送を始めた当初は米・シカゴ行きの輸出貨物が多かったが、現在は香港行きの輸出貨物も増えてきている。

鉄道輸送契約を締結した顧客で定期的な輸送がある企業は現在1社のみ。週1便の運行となっており、一度の輸送でコンテナ1基分、約2~3tの貨物を輸送している。金曜日までに荷主から依頼を受け、同日中にFACTLから集荷。日曜の午前中には成田空港に届くスケジュールとなっている。

10tトラックで福岡空港から成田空港まで輸送した場合、ドライバーの休憩時間も含めて約30時間かかるが、鉄道輸送の場合は、前後のトラック輸送区間を含め、最短で約24時間で輸送できる。さらに、「輸送コスト削減の面ではまだ大きな効果は出ていないものの、道路混雑による輸送遅延リスクを回避できたほか、CO2排出量の削減など、環境負荷の低減にも貢献できる」(NCA Japanセールスオペレーション部セールスオペレーションチームチームリーダーの田谷英子氏)という。

海産物輸出や混載便でも鉄道輸送を検討

今後の鉄道モーダルシフトの展開について、田谷氏は「北海道産の海産物を、JR貨物の保冷コンテナに積み込み、成田から輸出する案件も検討されているが、定期的に一定量の集荷が見込まれる貨物で、輸送距離も長距離区間でなければ、トラック輸送と比較してコスト面で劣ってしまうなど、実現へのハードルは高い」と指摘する。他方で、複数荷主の輸出貨物を積み合わせた混載便なども検討しており、「営業活動を通じ、集荷量を増やすことで実現につなげ、さらなる鉄道輸送の活用を図りたい」と話す。

また、輸入貨物の鉄道モーダルシフトについては「鉄道輸送は課題も多い」と同氏。鉄道輸送ではパレットやコンテナへの積載時に段積みを行うために貨物の形状が整っていることが望ましい。日本発の輸出貨物は貨物の形状が整っていることからパレットやコンテナへの段積みが容易であるものの、輸入貨物の形状は多種多様であることから、積み込むことが難しいという。

昨年8月にエコレールマーク協賛企業に認定

同社ではかねてよりESGやSDGs達成に向けた活動を行っており、社内のペーパーレス化などを通じて環境活動に取り組んできた。エコレールマークへの協賛に至ったのは、JR貨物のコンテナの外面に貼られていたエコレールマークが菓子類のパッケージにもついているのを見つけ、「不思議に思って詳細を調べたことがきっかけだった」と田谷氏は振り返る。

その後、チーム内の環境活動を含めた勉強会で、エコレールマークについて取り上げ、話題にあがったことから、認定取得に向けて動き出し、昨年8月に認定された。田谷氏は「当初は航空用コンテナの外装へエコレールマークを表示することを考えたが、JR貨物で利用していない器材には使用ができないと聞き、断念した。今後は当社ホームページへの掲載や社員の名刺にエコレールマークを印刷することで、外部に向けて環境活動を広くアピールしていく」と活用法を述べた。
(2022年4月21日号)


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