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J‐オイルミルズ、鈴与加須センターに在庫拠点を開設

2021.04.13

J‐オイルミルズ(本社・東京都中央区、八馬史尚社長)は今年6月に埼玉県加須市で油脂製品の新たな在庫拠点(SP)として「加須SP」を立ち上げる。これに先駆け、今年のゴールデンウィーク前に受注翌々日納品を本格稼働させ、持続可能な物流体制の構築につなげる方針。2024年度に控えたドライバー残業時間の罰則付き上限規制施行を前に、持続可能なサプライチェーンの構築に向けた取り組みを加速させる。

北関東・新潟向けの製品在庫を一時保管

加須SPは鈴与が6月に稼働する「加須物流センター(完成予想図)」内に開設し、常温管理による油脂製品の北関東3県(群馬・栃木・茨城)および新潟県向け在庫拠点として稼働する。東京オリンピック・パラリンピック大会開催時は、埼玉県への配送も加須SPがバックアップする見通し。従来、同地域への配送は各工場倉庫から食品共配便を用いていたが、ドライバーの長距離・長時間運行に加え、工場を夕方出荷した商品は仕分けセンターへ夜間に到着するため、作業するパートスタッフの確保が難しくなるなど、共配のスキーム維持が困難になっていくことから、加須SPの新設を決めた。

併せて、受注翌々日納品も今年のゴールデンウィーク前をメドに全国で恒久化する計画。これまでも年末年始などの繁忙期には受注翌々日納品を実施してきたが、納品先の理解・協力が高まり全国で恒久導入の調整を進めてきた。納品リードタイムが延びることで最適な要員配置や配送車両の確保が可能になり、「運送会社とドライバーに選ばれる物流の構築につながる」と武藤則満ロジスティクス部長は話す。

在庫型拠点へ移行、元請け会社も集約

J‐オイルミルズは02年から03年にかけて、ホーネンコーポレーションと味の素製油、吉原製油が経営統合して発足した。収益の大部分を油脂事業が占め、現在の主力工場は横浜、静岡、神戸。在庫は各工場倉庫とSPに保管している。

ロジスティクス部では油脂製品とマーガリンなど低温油脂加工品の物流を管轄。このうち常温加工食品である油脂製品は各工場から全国へ直送とし、工場からの輸送が長距離化する北海道と北東北3県(青森・岩手・秋田)向けのみ、石狩SP(北海道石狩市)と岩沼SP(宮城県岩沼市、現在は「仙台港SP」へ移転)を設けて運用してきた。

しかし、物流危機が叫ばれる中、商品供給機能の持続安定性確保を目的に、17年より在庫型サプライチェーンへの移行を開始。「岩沼SP」の在庫機能を南東北東へ拡大するとともに、中京・北陸地域向けの在庫拠点として、「小牧SP」を開設した。

さらに、20年11月には、中日本地域における輸送の元請け会社を一本化。武藤氏はその経緯を「従来は複数の運送会社に委託していたが、将来的なDX化に対応できる会社と連携を深めたいと考えた」と説明する。さらに、「元請け会社の集約はBCP対策にも貢献する」と指摘。災害発生時などに元請け会社が同じであれば、データ連携が取れていることから拠点間の在庫移送もスムーズに行えるという。
在庫拠点の立ち上げは加須SPの新設でほぼ完了する形だが、「取り巻く環境が大きく変化する中、SPが必要となる場所が増える可能性はある」と見る。一方で、受注翌々日納品がスタンダードになれば、「リードタイムが延びる分、仕分けセンターにおける夜間作業も回避できるようになり、逆にSPが不要になる地域も出てくるかもしれない」と話す。

同社ではこれらの動きと並行して、ロジスティクス部が管轄する油脂製品および油脂加工品のほか、事業部管理となっている油糧(ミール)やコーンスターチなどを含めた全社的な「物流最適化プロジェクト」も発足。事業形態や取引ごとに異なる物流管理システムを統合することで、各種コストの可視化と物流課題の整理にも取り組んでいる。

さらに、今後は「ドライバーにやさしい運び方と商品作りをメーカーとしても心がけたい」と武藤氏。外装表示位置の統一や判別のしやすい色別ラベルの作成などで物流現場のミス撲滅に貢献するほか、荷役作業負荷の軽減に向けて、一貫パレチゼーション化や小口配送の見直しを進めている。賞味期限の年月表示についても「運送会社や着荷主側の負担が減って全体の物流効率が向上する上、フードロス削減にも寄与できる」として検討を続けていく。

メーカー3社共同輸送、グリーン物流会議で受賞

J‐オイルミルズでは、業界を超えた企業間連携による物流効率化にも取り組む。ライオン、モンデリーズ・ジャパン、鈴与とともにスワップボディ車両を利用した共同輸送を開始し、輸送車両台数の削減や実車率の向上、作業時間および待機時間の抑制が実現した。CO2排出量削減による環境負荷低減とドライバーの労働環境改善効果が評価され、昨年には、「グリーン物流パートナーシップ会議」の商務・サービス審議官表彰も受賞した。

実施に当たっては工場側の協力を得られたこともポイントであり、武藤氏は「物流危機を認識した経営陣からの後押しがあったことは大きい」と振り返る。その上で、「物流全体の負担軽減を含めた物流効率化の取り組みが、当社の安定配送にもつながるものであり、今後も協力していきたい」と展望する。
(2021年4月13日号)


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