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キリンGロジ、21年計画で輸送・拠点能力を増強

2021.02.09

キリングループロジスティクス(本社・東京都中野区、山田崇文社長)は3日、2021年事業計画説明会をオンライン方式で開催した。
会見した山田社長は「キリングループの長期経営構想『キリングループ・ビジョン2027』に基づき、知恵と創意工夫で新しい時代も運びきっていることが当社の重要な使命だ」と強調。現在のコロナ禍や、24年4月から適用されるトラックドライバーの時間外労働時間の罰則付き上限規制など物流を取り巻く経営環境の変化に対応し、「19年に策定した中期経営計画での重点課題を見直し、①安全②輸送力強化③拠点能力強化④人材育成⑤外販事業の収益確保――の5課題を再設定した」と述べた。

その上で、23年末に向けた企業ビジョンとして「キリン品質の物流サービスが日本で一番お客様に信頼されることを目指す」と表明した。
今後の取り組みでは、安全な物流の実現を最重要課題に設定。併せて、輸送能力と拠点能力を強化し、人材育成に重点的に取り組む。さらに、デジタル化の推進と情報システムの高度化による業務効率化を促進する。

3PLなど外販事業は、同社が強みとする食品関連での安定的な受託を基本としながら、目標水準の収益確保を図り、事業基盤強化につなげる。
20年(1~12月)の売上高は734億円(前年並み)、営業利益は3億1000万円(前年比約3割減)となった。山田社長は「コロナ禍により外食産業向けの酒類・飲料の落ち込みがあったものの、家庭での需要に支えられたことで収入面ではほぼ前年並みを確保できた」と説明。外販の売上高は184億円と4分の1を占めており、21年も同レベルの売上高・利益の確保を目指す。

運賃引き上げを検討、酒類での「D+2」も

輸送能力の強化では、キリングループの貨物の閑散期をカバーできる一般貨物の輸送需要獲得などを図り、既存の協力会社との関係を強化するとともに、新規の協力会社の獲得を進める。また、24年4月を見据えた運行計画の見直しや、収受運賃や傭車への支払い運賃について引き上げを検討する。運賃改定では国土交通省が告示した標準的な運賃を参照するものの、キリングループ独自の運賃体系を整備していく考え。

キリングループではドライバーの労働環境改善に向け、「ホワイト物流」推進運動に参画している。その中で今年度は「D+2」(受注後納品の翌々日化)の取り組みを加速する。すでに飲料部門ではほぼ100%の納品で「D+2」を実現。今年5月からはビール類や和洋酒、ワインなどでの展開を予定している。ビール社などと連携し、卸・量販店などの理解と協力を得た上で、持続可能な物流体制を構築。酒類の「D+2」化に備えて集車アプローチや配車計画の早期化にも取り組む。

新拠点開設やネットワーク整備に注力

拠点能力向上に向け、北海道・首都圏・中部・近畿圏・中四国など全国で拠点整備を順次実施する。ビール・飲料など事業会社別に出荷・保管能力を増強するとともに、大消費地である都市圏近傍に中間拠点を設けることで拠点ネットワークを整備する。

拠点能力向上への第1弾として、3月に茨城県つくば市に新拠点「つくば物流センター」を開設し、同月から稼働を開始する。同センターにキリンビール取手工場(茨城県取手市)の保管・出荷能力全体の約3分の1を移管し、ひっ迫している取手エリアの物流機能を増強する。新センターは約1万6500㎡の規模で、25台分のトラックバースを備えており、稼働により取手工場の出荷能力を12%高める計画。同センターのほか、今年中に2~3拠点の新設を検討中。

昨年には、北海道で東雁来センター(札幌市)、東北で青森センター(青森県青森市)と仙台総合センター(宮城県仙台市)、首都圏で厚木金田センター(神奈川県厚木市)、近畿圏で堺センター(大阪府堺市)、中四国で総社センター(岡山県総社市)を新設。キリンビール全工場で保管能力を10・9%、キリンビバレッジの全センターで出荷能力を8・2%増強できた。

SCM人材の育成・確保で持続可能な物流へ

キリングループでは20年に安定的・持続的なサプライチェーンの構築に向け「グループ需給物流人材マネジメント」体制を創設した。キリングループロジスティクスが主管となり、事業会社各社と協同で中期的な視点でのSCM人材の育成・確保に取り組んでいる。

その一環として同社は、新卒採用と経験者採用を継続するとともに計画的なジョブローテーションを実施する。山田社長は「配車やシステム関連など専門性の高い部門では要員計画プランに沿った配置や育成を推進するほか、社内インターンシップを導入し、広い視点に立った人材を育成する」と述べた。また、昨年には在宅勤務制度の拡大や、全国転勤をせず地域ブロック内での異動のみとなるブロック社員制度を導入しており、今後も多様な人材が活躍できる環境整備を進める。
(2021年2月9日号)


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