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国交省が新「物流大綱」策定へ初会合開催

2020.07.21

国土交通省は16日、わが国の今後の物流施策の方針となる第7次・総合物流施策大綱の策定に向けた有識者検討会の第1回会合(写真)を開催した。第7回まで議論を重ねた上で11~12月頃に提言を取りまとめ、それを基に政府として総合物流施策大綱を策定、21年3月までに閣議決定する。第1回会合では国交省総合政策局の飯塚秋成物流政策課長が新型コロナウイルス感染拡大も踏まえた現在の物流を取り巻く環境と物流分野の施策について説明。検討会メンバーからは「標準化」や「デジタルトランフォーメーション(DX)」に対応する必要性が指摘された。

ウィズコロナ、ポストコロナを見据え検討

検討会の名称は「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」とし、座長は根本敏則・敬愛大学教授が務める。国交省が事務局を担当し、農林水産省、経済産業省が参画する。感染予防の観点から一部のメンバーはWeb会議方式で参加した。

開会に際し挨拶に立った国交省の瓦林康人公共交通・物流政策審議官は「コロナ以前からの輸送の小口多頻度化やトラックドライバー不足という問題があり、現状のままでは需要に対応できなくなる恐れもある。また、24年4月にはドライバーに罰則付きの時間外労働上限規制が適用され、いよいよモノが運べなくなる懸念もある。いまこそ物流効率化を急ぐ必要がある」と強調。「総合物流施策大綱は政府の5ヵ年計画であり、ウィズコロナ、ポストコロナ時代を見据えた物流の姿を検討することが重要」と方向性を示した。

荷主企業のメンバーである、味の素の堀尾仁上席理事食品事業本部物流企画部長は「IT化、自動化、データ連携が重要だが前提となる標準化が遅れている。いかに標準化を具体化するかが今後のカギ」と発言。イオングローバルSCMの野澤友広社長は「サプライチェーンの川上から川下までが連携すべき。その前提となるのは標準化だ」と指摘した。アスクルの池田和幸ECR本部副本部長ロジスティクスフェローは「一企業で効率化を進めるのは限界がある。SC全体で標準化を進めることが重要」と強調。三菱食品の小谷光司SCM統括統括オフィス室長代行は「ウィズコロナではメーカー、卸、小売りの連携、物流業務の見える化、標準化がますます重要」と述べた。

プラットフォーム、物流人材確保が必要

一方、物流事業者は効率化の基盤となるデジタル環境の整備について言及。全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長(松浦通運社長)は「大手物流企業や荷主が中心になり、我々トラック事業者がそこに参加することで、情報化や最新技術の共有を促進するシームレスなデジタル化プラットフォームが必要だ」と提言し、SC関係者がそれぞれ応分の負担を行うことでPF構築を行うべきとの考えを示した。

ヤマトホールディングスの牧浦真司専務執行役員は「EC市場拡大に対応したDXが急務」と指摘。SGホールディングスの川中子勝浩取締役も「人手不足には自動化技術と業務のデジタル化で対応すべき。他社との連携・協力を高度化することも重要だ」と述べた。

日立物流の佐藤清輝執行役専務は「3PL業務はセンター長の技量で効率化が左右されることが多く、現場の知見が非常に重要。DXの推進に現場のアナログな知恵を組み合わせることが必要だ」と強調。京葉流通倉庫の箱守和之社長は「今後のテーマは、リードタイムの見直しなど商習慣を含めた合理化や効率化、パレットなど物流機材のメーカーから小売りまで一貫した標準化、そして物流人材の確保だ」と述べた。

また、学識経験者や業界団体からのメンバーが人手不足や生産性向上を図るため自動化・省人化技術の導入について言及。先端技術の大幅な導入には規制緩和が必要との指摘もあった。

検討会のメンバーは次の通り(既出者を除く)。井本隆之氏(井本商運代表取締役社長)、上村多恵子氏(京都経済同友会常任幹事)、小川博氏(日本自動車工業会大型車技術企画検討会主査・日野自動車株式会社技監)、小野塚征志氏(ローランド・ベルガーパートナー)、金子千久氏(全国農業協同組合連合会参事)、苦瀬博仁氏(流通経済大学教授)、黒木定藏氏(宮崎県西米良村長)、坂元誠氏(日本経済団体連合会ロジスティクス委員会物流部会長・旭化成執行役員)、佐々木達也氏(読売新聞東京本社論説副委員長)、佐藤修司氏(日本ロジスティクスシステム協会JILS総合研究所シニアフェロー)、宿谷肇氏(日本物流団体連合会理事事務局長)、髙松伸幸氏(全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局長)、田中謙司氏(東京大学准教授)、西成活裕氏(東京大学教授)、兵藤哲朗氏(東京海洋大学教授)、藤野直明氏(野村総合研究所産業ITイノベーション事業本部主席研究員)、二村真理子氏(東京女子大学教授)、堀切智氏(日本通運代表取締役副社長副社長執行役員)、矢野裕児氏(流通経済大学教授)、山下太氏(花王株式会社SCM部門ロジスティクスセンターセンター長)。

行政からは事務局を務める国交省のほか、農林水産省、経済産業省が参加する。
(2020年7月21日号)


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