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日雑・加食荷主は「見える化」要望=国交省

2019.12.03

国土交通省は内航海運に対する荷主企業の期待や要望について行ったヒアリング調査の結果を取りまとめ、11月26日に開催した交通政策審議会海事分科会基本政策部会(部会長=河野真理子・早稲田大学教授)の第12回会合で概要を公表した。
日用雑貨品・加工食品などの荷主では、ライオン、味の素のほか3社で合計5社から話を聞いた。鉄鋼、石油製品、ケミカル製品、セメントなど産業基礎物資の荷主では日本製鉄、コスモ石油のほか12社で合計14社にヒアリングした。7月から10月にかけて実施し、ライオンと味の素からは8月30日に開催した同部会の第10回会合でヒアリングを行い、日本製鉄、コスモ石油からは同部会の第11回会合で聞いた。

内航海運の航路・料金の「見える化」を望む声も

日雑品・加工食品の荷主では、内航海運はトラック輸送からのモーダルシフトとして利用しており、これまでは500㎞以上の輸送距離をトラックと内航の分岐点としていたが、近年は500㎞未満でも内航を利用する場合がみられた。
荷主の挙げる内航海運の主なメリットでは、①大量輸送が可能、②トラックと比べCO2排出量が少ない、③鉄道コンテナと比べて定時性に優れている、④輸送品質が良好でトラブルが少ない、⑤災害からの復旧が他の輸送モードよりも早い、⑥トレーラシャーシによる中継輸送が可能――などが挙がった。その一方、デメリットとして、①出港時間・入港時間など時間的制約がある、②ある程度の物量がないと活用しにくい、③ルートが限定的で活用範囲が狭い、④(港湾の事情だが)コンテナドレージが滞ることがある――などが指摘された。

また、「トラックドライバー不足だけでなく、災害への対応の観点からも複数の輸送ルートの確保は重要であり、鉄道の輸送能力にも限界があることから、海運の活用を強化していきたい」という意見や「500㎞前後または未満の輸送距離でも海上輸送ルートがあれば活用していきたい」という声もあった。

内航海運の課題として、航路情報や輸送料金のわかりにくさや、パレット単位・ボックス単位など小口輸送への対応に乏しいことが指摘された。その上で、業界や行政に求めることとして、航路の増設や寄港地の追加によるルートの拡充、ハブ港の設置による利便性向上、関東~関西など主要航路での船舶の大型化を望む声、鉄道のダイヤ表のように見やすい形で航路情報の見える化をしてほしいという要望があった。

一部荷主には船員育成支援や労働環境改善の意欲

産業基礎物資の荷主へのヒアリングからは船員不足への危機感がうかがわれた。船員不足や高齢化への対応として船舶のオーナーまかせでは済まされず、船員の確保・養成に対する支援制度を導入する荷主や、一部では自ら船員を養成する意向をもつ荷主もあった。また、船員の長時間労働削減など働き方改革の観点から、輸送閑散期には仮バース(運航休止日)を取るようオペレーター(荷主と運送契約を結び、自社船・傭船により運送を実施する事業者)に提案する荷主もあった。

運賃の引上げでは、SOX規制に伴う燃料油価格上昇といった外的要因によるものには理解を示したものの、付加価値や生産性向上を伴わない値上げには多くが否定的。経営効率化や、船舶の大型化、新技術の活用、新たな需要の取り込みなどに取り組むべきとの指摘があった。
(2019年12月3日号)


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