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加食物流の改善へ実証実験スタート=国交省

2019.11.28

国土交通省は21日に開催した「加工食品物流における生産性向上及びトラックドライバーの労働時間改善に関する懇談会」(座長=矢野裕児・流通経済大学教授)で、ドライバーの時短方策を示すガイドラインに具体的解決事例を盛り込むため、実証実験を行うことを決めた。また、荷主、卸、物流事業者、行政などで構成する研究会を立ち上げ、加工食品物流での標準化に向けた議論を開始する。標準化の研究会は年内に第1回会合を開く。

リードタイム、スカスカ商品、検品レスなどを検証

国交省の担当者は「ドライバーの時短を実現する解決策の実施や、解決につながる業界の基準・ルールづくりに役立つような定量的知見が得られるように実証実験を行う。そこで得られた知見は、年度末までに策定するガイドラインに盛り込む解決事例の中に反映させていく」と説明する。

実施する実証実験のテーマは、①卸と小売間のリードタイムの延長、②スカスカ商品の是正に係る生産性向上、③事前出荷情報の共有とQRコードによる検品時間削減、④事前出荷情報による簡易な検品レス――の4点。

卸と小売間のリードタイムの延長については、様々なパターンが想定され、工夫の余地があることから、実験を通じて積載効率や車両稼働率の向上などを検証し、リードタイム延長の実現に向けた課題を把握する。実験には卸、小売、トラック運送業者が参加し、現状のリードタイムに1日余裕を持たせた輸送を行い、課題を洗い出す。

スカスカ商品については、棚に置いた際に存在感を出すため商品の包装材に空気を入れて体積を増やすことから輸送時に積載量が減少するなどデメリットが生じている。

実証実験ではウインナーソーセージなどで巾着型の2袋セット包装に対し、シンプルな平袋の包装を比較する。同一商品の巾着と平袋を並べて販売する。その際、平袋の商品は1本増量されており包装材でも無駄が少ないことを、ポップなどを使って消費者に周知し、実際の販売成績にどの程度の差が見られるのか効果を検証する。併せて製造や配送について、どの程度効率性が上がったのかを調べる。現在、スーパーの協業組織であるシジシージャパン(CGC)をはじめ、小売と加工食品メーカーの一部で「スカスカ商品撲滅運動」が行われているが、その知見も活用する考え。

QRコード活用で検品時間を短縮

事前出荷情報(ASN)の共有とQRコードによる検品時間削減では、パレット単位での出荷段階で商品や数量、賞味期限などの事前出荷情報をQRコードとし、検品時にはQRコードを読み取るだけで事前出荷情報との紐づけができ、従来よりも短時間で検品が完了する仕組みを検証する。

QRコードはバーコードより情報量が大きく、どの角度からも読み取りが容易で、汚れや破損があってもある程度までは読み取ることができる。アルファベット、数字、ひらがな、片かな、漢字も表示できる利点がある。

事前出荷情報を活用した簡易な検品レスの実験も実施する。品名、数量、消費期限など事前出荷情報を、日本加工食品卸協会が定め、業界の75%が使用する業界標準EDIシステム「ファイネット」を介して発荷主から着荷主に提供することで検品レスとする仕組みを検証する。検品レス実現の前提となる必要条件を確認し、発注、ASNの作成と送受信、商品の積み込み・納品などに要する時間についてデータを収集する。
現在、スカスカ商品を対象とした実験以外では参加事業者はほぼ決まっており、調整が終わり次第、順次行っていくが、スカスカ商品については実験開始予定が定まっていない。

研究会で標準化を推進し、共同物流の拡大を後押し

国交省では物流業界の人手不足への対応として荷主や事業者による共同物流の普及拡大を促進するため、円滑な共同物流の前提となる伝票や外装、データ仕様などの標準化を図る。年内に加工食品分野での研究会の立ち上げを決定。加工食品物流での標準化に向けた課題と方策を議論する。

研究会には有識者、業界団体、荷主、卸、物流事業者、行政が参加する。3月末までに2回の会合を行い、ソフト・ハード両面での標準化を議論する。標準化が急がれるものとして、①伝票、②外装、③受け渡しデータ、④パレット――を検討対象とした。これらの標準化を通じ、検品作業や荷役の効率化や積載効率・保管効率の向上を図る。
(2019年11月28日号)


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