三八五流通が引越スキル活かす輸送設置を拡大
三八五流通(本社・青森県八戸市、泉山元社長)では今期、引越繁忙期を外した大物嵩もの商品などの輸送設置事業の拡大を図る。引越業務で培った高い作業スキルを活かせる成長分野と捉え、旺盛なニーズの取り込みを進める。また、引越事業では昨年6月に提携を発表したヒガシトゥエンティワン(ヒガシ21)をはじめ、協力体制にある物流会社との連携を深めて受注を伸長させる。
安全や品質面でも連携を強める
輸送設置サービスでは、アーケードゲーム機や小売店舗の冷凍・冷蔵庫といった設備機器をツーマンなどで運び、配線や稼働テストまで行う業務を想定し、「人手が掛かる重量物の輸送などで引越のノウハウを使いたい」と泉山和久常務は話す。量販店で購入した家具・家電を宅配・設置するニーズも増えており、旺盛な需要を見込む。
さらに、協力関係にある引越会社との連携も強化。ヒガシ21とは既に、同社が受託した東日本エリアの法人引越を三八五流通が担当するなど協業が進んでいる。今後はヒガシ21の研修に三八五流通の社員も参加するなど、安全や品質への取り組みでも関係を強めたい考えだ。
引越事業は3期連続増収も…
三八五流通における2018年の引越シーズンの売上高は、3期連続の増収となった。引き合い件数は前年と横ばい。物流業界の人手不足への認知が進んだことで、例年より早い時期に問い合わせが入るケースも多かったという。一方で、受注件数は減少。働き方改革などを背景に作業キャパシティがタイトになったことを受け、「戦力に見合った受注に留める努力をしたため」と泉山氏は説明する。
今期は協力会社からの庸車確保が厳しく、繁忙期の主戦場となる東京エリアでは人材派遣コストも上昇。社内の作業人員やトラックで賄った割合は前年よりも増した形だ。ただ、実際の作業は予測キャパシティに基づいて計画を立てたことで、現場への過剰な負担や混乱なく完了することができた。今後も、庸車や人材派遣に頼らず、自社戦力で対応できる仕組み作りを検討していく方針にある。
システム、資材の刷新も奏功
作業管理や受注状況の把握、業務の効率化には、15年に刷新した引越新システムも効果を発揮した。営業担当者が見積もり訪問時に、タブレット端末から引越当日の作業キャパシティを確認できるもので、顧客からも好評を得た。13年から引越車両の車載端末として導入した「スマートフォン&クレジット決済タブレット」もクレジットカード決済の利用増から「顧客満足につながっている」(同)という。
引越資材の見直しも進めており、単身引越者向けの「シングルパック」では17年2月から順次、新ロールボックスへ移行。カゴを両側から折り畳みできる仕様に変更するとともに、ボックス下部もフォークリフトの爪が入りやすい機構へと見直すことで作業性を高めた。カバーもボックスの外側から内側へと移して家財の衝撃を緩和し、破損事故を軽減。段ボールも高さを310㎜に揃えて荷造りしやすくした。
繁忙期を終えたこの5月には、今期の作業品質を分析し、担当事業部でマニュアルを作成し直すなどして次期の品質向上に充てる。社内研修も積極的に実施するとともに、資材についても顧客からの要望を集約しながら、環境負荷の低いものへ切り替えを検討する。
同時に、一部の法人顧客に対しては、現状の人件・資材費に見合った受託条件の改定に向けた交渉も行う方針。また、6月に控える標準引越運送約款の改正に備えて、引越システムの変更を行うとともに、運賃の再設定や荷造り・荷役・開梱に掛かる作業員料および車両留置料の設定といった準備を進める。
(2018年5月24日号)