ズームアップ 外環道、千葉区間開通で物流に恩恵
東京外かく環状道路(外環道)の三郷南IC(埼玉県三郷市)~高谷JCT(千葉県市川市)間が、6月2日16時に開通することが決まった。これにより外環道の約6割が完成し、4つの高速道路(東関東道・常磐道・東北道・関越道)が接続することになる。開通区間の両端である三郷エリアと市川エリアには多くの物流センターが所在するとともに、沿線では新設拠点の開発も進んでおり、物流業への恩恵が期待されている。
千葉、埼玉エリアで配送効率化に期待
今回の外環道千葉区間の開通で、千葉県湾岸エリアから埼玉県や栃木県、群馬県など関東各地に向けて、都心を通ることなくアクセス可能になる。国土交通省関東地方整備局によると、千葉県側の起点となる高谷JCTから常磐道・三郷JCTおよび東北道・川口JCTまでの所要時間は約26分、関越道・大泉JCTまでは約18分短縮される試算となっている。
高谷JCTが位置する千葉県市川市には、多くの物流センターが稼働している。危険物倉庫を構える物流会社の担当者は、今回の開通を「当社としての直接的な実利ではないが、当社の倉庫に納品に来る運送会社にとってはアクセスが良くなるためメリットがある」と捉えた上で「二俣新町や原木周辺の物流会社にとっては共通のアピールポイントになるのではないか」と指摘する。
また、市川市に物流センターを持ち、関東1都10県への配送を行う物流会社では「常磐道・東北道・関越道への幹線輸送および配送の時短ができると確信している」。同社では、首都高環状線を含めた渋滞緩和にも期待を寄せ、時間外労働の削減も試算しているという。市川市に程近い習志野市で通販物流センターを運営する会社でも、「主要道路に接続する外環道の開通で配送時間の短縮が見込まれる」と歓迎する。
輸送での利便性向上に着目し、新たな取り組みを検討する会社もある。トナミ運輸では野田支店(千葉県野田市)の荷物を外環道経由で東京貨物ターミナル駅へ輸送し、同所から九州への運行を鉄道へ移行するモーダルシフトを計画。開通前は都内を通る必要があったが、開通後は外環道経由で湾岸沿いを迂回することが可能になり、安定したリードタイムが保たれるという。
沿線で大型拠点の開設が相次ぐ
首都圏を囲む環状道路の中でも内側に位置し、より都心に近い外環道沿線エリアの物流施設への人気は根強い。CBREの直近調査(2017年10~12月)によると、圏央道エリアの賃貸用大型物流施設の空室率が全体17・8%、竣工1年以上で3・5%とやや苦戦する一方で、外環道エリアはそれぞれ1・4%、1・6%と健闘している。賃料も圏央道エリアに比べ坪当たり1500円以上高い。
また、一五不動産情報サービスが16年に行った「物流施設開発に影響のある道路整備計画」に関するアンケート調査でも、2位の「圏央道境古河IC~つくば中央IC」に差をつけて最も票を集めたのが「外環道三郷南IC~高谷JCT」だった。
旺盛な需要を受けて、外環道の開通をにらんだ大型物流施設の開設は活発化している。ESRは千葉県市川市のJR二俣新町駅前の約10万3000㎡を取得し、延床面積約22・9万㎡の大型物流センター「ESR市川ディストリビューションセンター」を今年12月に竣工予定。同所からは高谷JCT経由で首都圏全域の広域配送が可能となっている。
埼玉県側でも、三郷南ICから約14㎞の場所で、オリックスが19年春をメドに延床面積7・7万㎡の「松伏ロジスティクスセンター」(埼玉県松伏町)を竣工予定。外環道に近接することで交通の混雑状況に応じた配送ルートが選択でき「東京都内への配送拠点として優れている」(同社)ことが売りだ。
今年に入って、日本GLPと大和ハウス工業が相次いで大型物流施設を開発した流山エリアも注目される。常磐自動車道・流山ICから三郷JCT経由で外環道に接続しやすく、外環道・三郷ICも6㎞ほどの場所(GLP流山Ⅰ)。千葉区間の開通によって関東全域へのアクセス性がさらに高まるほか、成田空港への接続も容易になる。
大和ハウス工業のDPL流山Ⅰに入居するセンコーではユナイテッドアローズの国内3物流センターを、同所を含めた2拠点体制へと再編するが、ここでも立地優位性が活かされるものと見られる。
(2018年5月15日号)