大塚倉庫が「コネクテッド・ロジ」を具体化
大塚倉庫(本社・大阪市港区、濵長一彦社長)は今年5月の東京本部(東京都中央区)の社屋リノベーションに合せて、同所を本拠地と位置付けた「Connected logistics(コネクテッド・ロジスティクス)」の具体化を進める。13日に行った記者懇談会で、大塚太郎会長(写真)はそのコンセプトを「これまで『ID運輸』や『ID倉庫』として輸送や倉庫業務の見える化を進めてきたが、これらの機能を繋ぐ(connected)物流を実現したい」と説明した。
新オフィスに物流のデータルームを設置
「コネクテッド・ロジスティクス」では、輸送や保管といったBtoB物流の各業務における情報を一元化。同社ではスマートフォンおよびタブレット端末を利用した、輸送と倉庫業務の可視化システム「ID(Important Data)運輸」「ID倉庫」を導入しているが、これらの情報を連携させ、蓄積したデータを高度活用することで、さらなる効率化を実現する。
その具体化の拠点とするのが、リノベーション後の東京本部で「物流のデータ連携を究極化したオフィスにしたい」と大塚会長は意欲を示す。東京本部は現在、6階建ての倉庫兼事務所として運用するが、全棟をオフィスビルへと改装。大塚倉庫では今年5月に、リノベーションを完了させた2階フロアへ入居して業務を開始する予定にある。新オフィスには各業務のリアルタイムの状況がモニタリングされるデータルームも設置して、「BtoC物流のようにオーダー毎の状況を常に把握できるようにしたい」との計画だ。
あわせて、紙伝票のデジタル化にも取り組む。以前に行ったトライアルでは、大塚倉庫以外の伝票が紙ベースのまま運用されたことで業務負荷が増加。この経験から、「様々な方式が走らないよう、業界を統一する仕組みの準備を進めている。遠くない時期に実装できるのではないか」とした。
「止まる前にわかる」物流の実現へ
大塚会長は、「現在のBtoB物流は、顧客から信頼を得るために必要な『(物流を)止めないこと』と『止まってもすぐに復旧すること』には長けているが、『止まる前にわかること』はできておらず、その実現にはデータ連携が必須」と強調する。
一方で、データ連携の前提とな る情報のデジタル化について「物流業界は依然として紙でのやり取りが多く、元データがないところが困難なポイント」と説明。現在進められている待機時間の明確化も紙ベースの制度設計であることに触れ、「業界として大きな課題。紙に書いた情報をもとに、本当に荷主に(適正な料金を)請求できるのか」と指摘した。
さらに、「この10年で、ITを活用して様々な業界が変化したが、物流の世界だけは全く変わっていない。BtoB物流の効率化によって浮いた人材をBtoC物流に充てないと、根本的な人手不足の解消は難しい」と業界を展望した。
(2018年3月22日号)