ズームアップ 物流不動産企業がプラットフォーマーに
物流不動産企業が人手不足の解消や物流効率化など物流業界の様々なソリューションを提供するプラットフォーマーとして台頭している。物流AI・ロボティクスなど異業種やスタートアップと提携し、物流施設の賃貸業にとどまらないソリューション企業としての存在感を高めつつある。賃貸用物流不動産マーケットはプレイヤーの増加で用地取得やリーシング競争が激化。施設のユーザーが直面する課題解決に資するソリューションを提供することで差別化を図ると同時に、プラットフォームビジネスを新たな柱に育成する狙いがある。
大和ハウスはダイワロジテック傘下企業と連携
大和ハウス工業(本社・大阪市北区、芳井敬一社長)では、グループのホールディング(HD)会社であるダイワロジテック(本社・東京都千代田区、秋葉淳一社長)とその傘下企業との連携により、庫内作業やシステム、配送業務の効率化に資するソリューション提供に注力している。
ダイワロジテック傘下には同社の100%子会社でWMS・在庫管理システムソリューションを提供するフレームワークスをはじめ、フルフィルメントプロバイダーのアッカ・インターナショナル、搬送システムのGROUND、求貨求車ネットワークのHacobu等を有し、「次世代ロジスティクスセンター」のノウハウを結集する。
大和ハウスではこれまでにもフレームワークスが主催する「次世代ロジスティクスオープンデータ活用コンテスト」を通じ、物流ベンチャーの育成、アイデアの採用に力を入れてきたが、HD会社を核にIoT、AIを駆使した各社のソリューションを活用し、保管以外の輸配送、庫内作業の効率化に貢献していく体制を整えた。
浦川竜哉取締役常務執行役員は昨年12月の「DPL坂戸」の着工にあたり、「デベロッパーとして『器づくり』の域を脱しなければならない」と強調。「物流センター運営にかかるコスト構成のうち、賃料に相当する保管費は約20%程度。保管以外の80%の部分でコスト削減のお役に立っていかなければ意味がない」と各種ソリューションの提供の意義を説明する。
日本GLPは新会社モノフルを設立、新たな収益源に
日本GLP(本社・東京都港区、帖佐義之社長)では、GLPグループ100%出資で新会社モノフル(本社・同、帖佐社長)を設立し、物流にかかわるソリューションを提供するプラットフォーム構築に乗り出す。帖佐氏は新会社の“事業会社”としての位置付けを明確にし、「新たな収益源となるビジネスとして立ち上げる」と話す。
これまでも日本GLPでは、人材派遣会社との提携や中古マテハン機器の売買仲介等物流施設に付随する「ソフトのソリューション」を提供してきたが、物流施設に出入りする車両や従業員の膨大なデータを活用し、各種テクノロジーを用いてソリューションを提供するためのプラットフォームを構築する。
第1弾として4月から物流向けのテレマティクスサービスをスタート。スマートドライブ、あいおいニッセイ同和損害保険と業務提携し、スマートドライブが提供する車載デバイスで車両の状況を把握し、ドライバーの労務管理や配送品質の向上、危険運転削減などに役立てる。
このほかシーアールイー(CRE、本社・東京都港区、亀山忠秀社長)も昨年、物流版Uberを提供するCBcloud と資本業務提携。CBcloud が提供する、荷主および物流企業と個人ドライバーのマッチングプラットフォーム「PickGo」の事業展開を支援するとともに、CtoC分野に対しても両社で事業を創出・育成していくこととした。
近年、賃貸用物流不動産マーケットには国内の不動産会社、商社、電鉄会社、生保会社などが参入。新規物件が大量供給により一部エリアでは空室率も上昇している。一方、物流業界の労働力不足が社会問題化する中、スタートアップを含め異業種が各種ソリューションを続々提供し始めており、物流不動産企業がいち早くこれら企業を囲い込むことで、新たなビジネス分野の開拓に乗り出している。
(2018年3月20日号)