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【ズームアップ】物流不動産が「子育て女性支援」に本腰

2019.09.19

物流不動産デベロッパーが、「子育て女性支援」に乗り出している。大和ハウス工業では、「DPL流山Ⅳ」の保育施設に子供を預けた人が複数テナントで働けるようにする「マルチ派遣」を導入するとともに、施設で働く人に住まいを斡旋。ESRは「ESR市川ディストリビューションセンター(DC)」の託児所で寝具・おむつを実質無料で提供するほか、幼児英語教育も行う。保育所の設置から一歩踏み込んだ「子育て支援」により、テナント企業の女性の労働力確保をサポートし、リーシングで差別化を図ろうという狙いがうかがえる。

住まいの斡旋、幼児英語教育も

大和ハウスは、このほど着工した同社最大規模となるマルチテナント型物流施設「DPL流山Ⅳ」でママスクエアが運営する、テナント企業の従業員専用の保育施設を併設する。最大収容人数は100人で、子供を預けた人が複数のテナント企業で働ける「マルチ派遣」を業界で初めて導入するとともに、施設で働く人に住まいの情報提供と斡旋を行い、入居時の諸経費も優遇する。

ESRは、ESR市川DC内で託児所「BARNKLÜBB(バーンクラブ) ICHIKAWA」を運営(ジョイサポに委託)。施設で働く人の負担軽減のため、寝具やおむつの用意、寝具のクリーニング、手作りの給食・おやつの提供などのサービスが保育料に含まれる。補助金を利用することで、保護者の保育料負担が「実質0円」となるような保育料を設定。外国人英語講師による幼児英語教育なども実施する。

CBREの「物流施設利用に関するテナント意識調査2019」によると、物流戦略上の課題として最も多く挙げられたのは「倉庫作業員やドライバーの雇用確保」。倉庫を新設または検討する場合、重視する項目では、「カフェテリア・休憩スペース」などの福利厚生設備を選択した企業は少なく、「保育施設」は「その他」を除くと最下位。「保育施設」を設置するだけではリーシングの差別化にはつながっていないようだ。

内閣府男女共同参画局によると、我が国では第1子出産前後に女性が就業を継続する割合は5割を超えるが、パート・派遣の就業形態だと出産後、労働市場を離れてしまう者が7割超に上るなど、仕事と子育ての両立への負担が女性の就業継続の障壁となっている。また、育児中の女性で就業を希望している者は多いものの、実際に求職活動を行っている者は少ないなど男女で差がみられる。

物流不動産デベロッパーによる各種子育て支援の取り組みは、労働力不足の解消の一環として、保育施設プラスアルファのインセンティブにより物流施設内で働く女性の潜在労働力を引き出そうというもの。夏休みにはテナント企業で働く人の小学生の子供向けに、英語を学べる学童スクールを開催(ESR久喜DC)するなど、子育て支援の対象年齢も幼児から拡大傾向にある。
(2019年9月19日号)


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