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【EC物流】楽天が自社物流網の構築で通販会社救済

2018.02.20

楽天(本社・東京都世田谷区、三木谷浩史社長)は自社物流網の構築に取り掛かる。宅配会社の運賃値上げを受け、通販業界では中小通販会社を中心に、商品の物流・配送面で課題を抱える会社が増えている。同社が展開するモール型通販サイト「楽天市場」への出店者でも同様の状況に苦慮する企業が出てきており、こうした会社の救済策として、楽天が主導してエンドtoエンドの物流をコントロールする仕組みを立ち上げる。一方で、同社では6年前にも楽天市場出店者向けの物流アウトソーシングサービスを開始し、その2年後に、債務超過に陥った運用子会社を解散させた過去も持つ。自社物流への再チャレンジの成否が注目される。

自社物流センターを2年内に10拠点へ

楽天が構想するのは、楽天市場出店者の商品引き取りから一時保管、購入者への発送、配達まで一貫して請け負う物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」。13日に開かれた18年度の決算説明会で三木谷社長は「ファーストワンマイルからラストワンマイルまで物流を楽天が管理し、商品を配達するところまで当社が関わる」と、そのコンセプトを端的に説明した。

実現に向けて、まずは物流センターの新設を進める。現在、楽天では神奈川県相模原市、千葉県市川市、兵庫県川西市の3ヵ所に大型物流拠点を保有するが、これを2年以内に全国10拠点体制へと拡大。各物流拠点には、相模原と川西に導入されている自動倉庫システムをはじめとした最新技術を採用して倉庫内作業員を最小化する。

さらに、ラストワンマイルの配送ネットワークも自社で構築する。配達インフラについて三木谷氏は「今から配達員を自社で抱えると時間が掛かる」とした上で、解決策として配送クラウドソーシングの活用を示唆。軽貨物便やバイク便などをマッチングしてネットワーク化したり、楽天会員が好きな時間を使って自転車や徒歩で配達先に届けたりする仕組みなども視野に入れる。SNSなどによる配達情報の事前通知システムも運用し、再配達抑制につなげる。

これらのネットワークを用いた「楽天スーパーロジスティクス」は、「楽天ブックス」や「ケンコーコム」、「ブランドアベニュー」といった楽天による直販ビジネスから順次開始する予定。17年には直販ビジネスを対象に、現在運用中の倉庫と軽貨物便などを使った「楽天スーパーロジスティクス」を実験的にスタートしている。なお、ウォルマート(西友)との業務提携による生鮮宅配事業とは全く異なる運用となるもよう。

BtoC向けのネットワークいかに作る?

現在、多くの楽天市場出店者はそれぞれ倉庫の手配や宅配会社との配送の契約を結んでいる。しかし、人手不足などを背景に宅配運賃をはじめとした物流コストが上昇する中で、出店者側でも物流対応が最大のネックとなっている。楽天では17年に日本郵便と提携して、契約窓口の一本化による運賃への大口料金の適用や、「はこぽす」や郵便局受取りといった受取りポイントの拡大などの施策を進めてきた。同社との協業は18年度も継続する方針にあるが、抜本的な解決策も必要と判断し、物流の再構築に着手したもの。

他方で、楽天は2010年に物流子会社・楽天物流を設立し、12年には楽天市場出店者に向けた通販物流アウトソーシングサービス「楽天スーパーロジスティクス」をリリースしたものの、同サービスを支える物流拠点の増設に伴う先行投資が収支を圧迫し、14年には楽天物流の解散に至っている。

当時と異なる点として、楽天の直販ビジネス拡大でベースカーゴが増加していることに加え、宅配運賃の値上げから出店者による楽天への物流アウトソーシングニーズも高まっていると見られ、6年前より早期に物流拠点の収益化が実現する可能性は少なくない。楽天市場の取扱個数はAmazon.co.jpを超える年間4億個に上るといわれており、こうした物量のデータからBtoCに最適なネットワークをいかに構築できるかも成功のカギを握りそうだ。
(2018年2月20日号)


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