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「内航海運モーダルシフトセミナー」開催=内航総連

2024.10.17

日本内航海運組合総連合会(内航総連、栗林宏吉会長)は11日、東京・平河町の海運クラブで「内航海運モーダルシフトセミナー」をオンラインとのハイブリッド方式で開催した。「2024年問題」を機にモーダルシフトの担い手としての期待が高まる内航モーダルシフトの推進策について、パネルディスカッションなどを通じて課題などを探った。

冒頭、開会にあたって挨拶した栗林会長は「今年4月からトラックドライバーの労働時間が厳格化されたことに伴って、トラックの輸送力不足が懸念されており、モーダルシフトへの期待が高まっている。内航海運業界では、シフトの受け皿になるとともに、環境問題への対応も含めて、国内物流が滞ることがないようにしていかなければならないと考えている。内航総連では、シフトの直接的な受け皿となるRORO船、コンテナ船の運航事業者で組織する定期船輸送特別委員会を立ち上げ、その活動の一環として今回のセミナーを企画した。課題を掘り下げるとともに、内航モーダルシフトへの理解を深める機会にしていきたい」とセミナーの趣旨を説明した。

セミナーではまず、流通経済大学教授の矢野裕児氏が「内航海運モーダルシフトの視点」と題して基調講演した。矢野氏は、荷主企業が「2024年問題」を機にリードタイムやロットなどの物流条件を見直さざるを得なくなっている状況が「大きな追い風」だと説明。また、これまでモーダルシフトのネックとなっていた自社内の販売部門や生産部門、取引先の理解が進み「聞く耳を持つようなってきた」として、「モーダルシフトに対応した物流システムへの転換が徐々に進んでいる」と述べた。さらに、「これまでは、『需要に合わせて物流サービスを提供する』形だったが、今後は『提供する物流サービスに需要を合わせる』ように変わっていく」として、モーダルシフトが進む環境が整いつつあるとした。

続いて、2023年度の「海運モーダルシフト大賞」を共同受賞したダイキン工業と下関三井化学の担当者が受賞案件について説明した。両社はこれまで廃棄していたフッ素系産業廃棄物を「再生蛍石」として再資源化。それらを海上輸送するための大型専用コンテナを開発してCO2排出量を削減するとともに、輸送の大部分を海上シフトすることでトラックドライバーの労働時間を削減したことが評価された。
このほか、国土交通省の担当者が、海運モーダルシフトの推進に向けた行政としての施策について紹介した。

受け皿として求められる課題とは

第2部のパネルディスカッション(写真)では、矢野氏がコーディネーターを務め、荷主としてダイキン工業と下関三井化学、物流事業者・海運事業者として栗林会長(栗林商船社長)、定期船輸送特別委員会の久下豊委員長(川崎近海汽船社長)、鈴与カーゴネットの亀井遊太取締役らが登壇。

久下委員長は、海上モーダルシフトの課題として「有人トラックから無人航送への転換が進んでいない」ことを挙げた上で、シャーシやトラクターヘッドへの投資、けん引免許を持ったドライバーの確保などがハードルになっていると指摘し、そのために自社で行っている取り組みなどを紹介。また、亀井氏は約1500台のシャーシを導入している鈴与カーゴネットの事業戦略に言及した上で、RORO船へのシフトが進まない理由として、船枠の確保やロットがまとまらない、既存物流会社との調整の難しさ――などを挙げた。荷主側からは、小ロットでも運べる仕組みが欲しいとの要望があったほか、物流事業者による情報一元化やコーディネート力が必要との指摘があった。

さらに久下委員長は、航路によって船枠に余裕がないところとスペースが余っているところがあるとして、「海運事業者が余ったスペースをプールして相互に融通できる仕組みが必要」だとしたほか、緻密な情報提供やRORO船の認知度向上に向けたPRが不可欠だとした。栗林会長は「トラック運賃が上昇しており、価格面の課題についてはいずれ解消に向かう。また、リードタイム面についても柔軟な考えを持つ荷主が増えている」との変化を指摘した上で、「ドライバー不足が進むことでトラック輸送は確実に厳しくなっていくことは間違いない」として、国と一体となった施策を進めていく必要性を強調した。
(2024年10月17日号)


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