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【共同物流】サッポログループが物流ネットワーク維持拡大へ協業推進

2017.10.05

サッポログループではサッポログループ物流(本社・東京都渋谷区、松崎栄治社長)と連携し、安定的な商品供給のための物流ネットワークの維持拡大を図る。トラックドライバー不足に対応するため、同業種・異業種との協業を推進するとともに、鉄道・海運でのモーダルシフトを拡大し、輸送モードの多重化と輸送効率アップを目指す。効率的かつ安定的な輸送スキームを構築するため、グループにおける需給計画の見直しや在庫マネジメントの適正化にも取り組む。

北長野~隅田川間でイオンと専用列車を運行

「組めるところがあれば、物流共同化に関してありとあらゆる可能性を検討する」――。サッポログループ物流の松崎社長はこう言い切る。従来、物流面での協業のターゲットは、使用車両や貨物の積み付け、届け先が共通するビール、飲料といった同業種が主体で、各地で共同物流を展開してきた。
しかし、同業種とは出荷のピークも重なるため、繁忙期におけるトラック等の物流資源をシェアするには限界がある。とくに飲料については各メーカーが製造委託しているパッカーが長野や静岡、神奈川に集中しているため、繁忙期には大量に製造し、同じ方面に大量に出荷するため、車両の確保が困難となっていた。

異業種との協業の第1弾となったのがイオンとの取り組みだ。15年11月から、北長野~隅田川間で日曜日に専用列車の運行を開始。サッポロ、イオンともに飲料の製造委託先のパッカーが長野県内にあり、それぞれの貨物を集めて1列車を仕立てるもので、月2便の定期運行が継続している。
隅田川駅から関東近郊のデポへはトラックで、その他のエリアには鉄道を使って二次配送を行う。関西以西への転送もあり、長野からいったん隅田川まで持ち込むことで全体の輸送距離は伸びるがコストアップにはならず、多方面に対してトラックに依存しない物流ネットワークを確保できるメリットも大きい。

“長野向け”の荷物が少ないこともあって、夏季の飲料需要がピークとなる「海の日」前後は、“長野発”の車両を年々とりづらくなり、輸送モードの多重化と定期便を実現した専用列車の存在意義は増している。「メーカーとして確実に運べること、つまり、運ぶ量を読めることが最重要」(松崎氏)と指摘する。

RORO船を共同運航、車両の確保も容易に

イオンとの協業の第2弾が、今年7月からスタートしたRORO船を活用した中部~九州間の共同運航だ。共同化の範囲を清水~大分間の幹線輸送のみならず、発着地側の集荷・納品まで広げており、海上輸送による大量輸送と、週2便の安定的な輸送体制を実現したことは両社にとって大きい。

上りでは、イオンが福岡県内のトップバリュ(TV)生産工場から西関東RDC(神奈川県愛川町)、北関東RDC(千葉県野田市)向けに飲料等を納品。下りではサッポロが静岡県内の製造委託先から佐賀県内の物流センターに清涼飲料水を納品する。イオンにとっては長距離輸送の海上シフトは初の試みとなった。

サッポロでは500㎞以上の長距離輸送について45%を船舶、43%をトラック、12%を鉄道で分担していたが、今回の取り組みにより、清水~大分間の海上輸送比率は60%から70%までアップ。従来の不定期から週2回の定期輸送で回せるようになり、輸送計画が立てやすく、車両の確保も容易になる。

共同運航によりサッポロは約6%、イオンは約15%のコスト削減が可能。ドライバーの拘束時間も合計で年間4743時間削減できる見通し。サッポログループマネジメント(本社・東京都渋谷区、溝上俊男社長)のグループロジスティクス部の井上剛グループリーダーは「引き続き共同化のルートやエリアの拡大を検討したい」と話す。

需給計画からサプライチェーンを見直すべき

サッポログループでは共同物流に限らず、トラックドライバー不足の解消に資するあらゆるスキームを検討していく考えにある。静岡~大阪間の「フルトレーラ化」や千葉~大阪間の「中継輸送」もトライアルしたが、出荷やトレーラスイッチの時間帯を調整できず、いずれも実現には至っていない。

松崎氏によると、これら効率的な物流スキームはメーカーの「在庫の配置」がカギとなる。中継輸送を例に挙げると、大阪の物流拠点は現状、必要最小限の在庫で回しているため、リードタイムの制約があり、静岡県内の中継拠点でのトレーラの切り離しと仮置きができず、スイッチの時間帯を合わせなければいけない課題がある。

「物流スキーム全体を安定させる最大のポイントは『在庫をどうコントロールするか』であり、需給計画からグループ全体のサプライチェーンを見直す必要がある。例えば、極限で在庫を回しているのを1週間単位で回すようにすれば計画的に在庫を補充でき、平準化により車両を確保しやすくなり、計画的な運行も可能になる」と指摘する。

「物流事業者の個々の取り組みは“物流現場の改善”にはつながっても、メーカー、小売りも含めて荷主が変わらないと根本的な解決にはならない。供給側が“不安定”なスキームであり続ける限り、安定的な物流は実現しない」とし、グループのサプライチェーンの“標準化”“安定化”を志向する。
(2017年10月5日号)


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