【レポート】トラックの〝差がつく〟最新運び方戦略
トラックドライバーの労働時間規制に伴う輸送力不足をはじめとした「2024年問題」の対応策として、長距離輸送における大型車両を活用した大量輸送や輸送の分担によるドライバーの負荷軽減に向けた取り組みが進んでいる。その中でも、「ダブル連結トラック」や「スワップボディコンテナ車両」の導入と「中継輸送」はすぐにでも導入できる効果的な施策として期待されており、大手を中心に取り組みが進捗。「運べないリスク」を乗り越えるため、各社とも〝差がつく〟運び方による輸送効率化の実現に力を注いでいる。
福通、センコーがダブル連結トラックを次々導入
一度の運行で大型トラック2台分の輸送を実現するダブル連結トラックを、業界で先駆的に導入したのが福山通運だ。2017年に愛知県北名古屋市~静岡県裾野市間で、日本初となるダブル連結トラックの運行をスタート。現在は同路線に加え、栃木県栃木市~岩手県北上市、広島県福山市~福岡市東区、北名古屋市~埼玉県入間市、山口県下関市~福山市、福山市~裾野市の計6路線で運用しており、今後も増台を予定している。
センコーは顧客の貨物量に合わせて自社輸送インフラのスペースを提供する予約制の長距離輸送サービス「物流バス」を展開しており、ダブル連結トラックを「物流バス」のサービスメニューのひとつとして22年1月から運用している。今年4月、24年中にダブル連結トラックの運用を計14編成へ拡大し、30年までに100編成体制を構築する計画を発表した。これにより、30年における年間運転時間を24年比で約4割減となる約16万6166時間へ削減する。また、今年8月には関東~関西間の中間地点となる静岡県浜松市に中継輸送基地「TSUNAGU STATION」の開設を予定。同拠点を活用した中継輸送の取り組みも進めていく。
低温物流の分野でもダブル連結トラックの活用が進んでいる。ニチレイロジグループ本社は21年3月から低温輸送に対応した「冷凍版ダブル連結トラック」の運行をNEXT Logistics Japan(NLJ)と共同で開始した。ニチレイロジの貨物を積んだ専用冷凍トレーラを、NLJの中継拠点で他社貨物を積んだトラクタと連結し、関東~関西の中継拠点間をダブル連結トラックで輸送。常温トラクタと冷凍トレーラを連結することで冷凍品と常温品の同時大量輸送を実現した。
佐川はスワップボディ車で荷役分離、女性活躍にも貢献
配送先や中継拠点で荷台部分のコンテナと運転席のあるトラクタを切り離すことで、ドライバーを荷役作業から解放する「荷役分離」を実現するのが、スワップボディコンテナ車両の利点となる。そのスワップボディコンテナ車両の導入を積極的に進めているのが佐川急便だ。同社は現在、スワップボディコンテナ車両を約130台、専用コンテナは約400台を保有。また、パートナー企業でも約80台のスワップボディコンテナ車両を運用している。
同車両の活用により、ドライバーの拘束時間の約3分の1を占めるとされる荷役・荷待ち時間を短縮し、ドライバーの運転時間を確保できるだけでなく、ドライバーが力を必要とする荷役作業を行わずにすむため、女性ドライバーの採用促進・職域拡大にも寄与しているという。さらに、鉄道コンテナ専用アタッチメントを使用することで、JRコンテナの輸送も可能としている。
中継輸送拠点の開設が活発化、サービス化する企業も
泊りがけの運行も多い長距離輸送において、中間地点でのドライバー交替や荷台交換、荷物の積み替えにより、ドライバーの日帰り運行を実現する「中継輸送」にも注目が集まっている。
遠州トラックは18年9月から、NEXCO中日本が静岡県浜松市に整備した中継輸送の専用拠点「コネクトエリア浜松」の管理・運営を担当。運送事業者に活用を広く呼びかけるなど、中継輸送事業の強化に注力している。今後はさらなる中継輸送ニーズの拡大をにらみ、静岡の自社拠点を活用した中継輸送サービスの実施も検討する。「コネクトエリア浜松」では貨物の積み替えやトレーラヘッド交換の場所を提供していたが、静岡拠点では遠州トラックの貨物と他社の貨物を積み替えて運ぶ共同輸送も計画。関東~関西間の中間地点に事業拠点を持つ強みを活かしたサービス強化を図る。
西濃運輸は、昨年10月、北大阪支店(大阪府茨木市)を中継輸送の専門店として稼働した。九州向けの中継輸送を専門的に行う店舗として運用し、併せて、北大阪支店が担当していた集配テリトリー(東淀川区・茨木市の一部、守口市)は豊中支店と摂津支店に移管した。また、大阪貨物ターミナル駅が近接する立地を活かし、幹線トラック輸送だけでなく鉄道輸送にも接続できるサービスを提供。2つの輸送モードを組み合わせた効率的な運行体制を構築し、繁閑の物流波動に柔軟に対応する。これにより、年間約6万7200tの取扱量の増量が可能となり、人手不足や車両不足などの課題を抱える同業他社の九州向けの荷物も受け入れることで、セイノーホールディングスが掲げる「オープン・パブリック・プラットフォーム(O・P・P)」を推進していく。
また、独自の中継輸送サービスを展開する晴海コンテナ輸送では、改装海上コンテナを活用した「セミトレーラ幹線中継輸送サービス」を提供している。セミトレーラで発着地の両方から輸送されてきた荷物を、主要幹線道路の約200㎞ごとに設置された中継拠点で、貨物コンテナを車両から切り離して交換することで、ドライバーの労働時間規制を遵守した輸送サービスを提供する。国際規格で定められた輸送容器である海上コンテナを改装した独自の「JRCXコンテナ」を使用することで、大量輸送と安全性の確保を両立しているのが特徴。現在、全国に25ヵ所の中継拠点を設けている。サービス開始にあたり、23年10月には関連会社のジェイアールシーエックス(JRCX)を設立しており、同社には晴海コンテナ輸送や京王グループ傘下の京王運輸など物流事業者8社が共同出資している。
各種施策の組み合わせでさらなる輸送効率化へ
このほか、単体の施策だけでなく、「ダブル連結トラック」や「スワップボディコンテナ車両」を「中継輸送」と組み合わせることで、さらなる輸送効率化を図る取り組みも進んでいる。鴻池運輸では今年5月、同社初となるダブル連結トラックをNLJと共同で、「北関東流通センター営業所」(群馬県千代田町)と「京都城陽配送センター営業所」(京都府城陽市)に各1台ずつ導入。それぞれの拠点で1日1便を運行し、中継拠点となる新東名高速道路「清水PA」で合流して、ドライバーを交代する中継輸送により、日帰り運行と大量輸送を同時に実現した。今後はNLJが展開する物流最適化ソリューションシステム「NeLOSS(ネロス)」との連携も検討し、さらなる輸送効率の向上を目指す。
ニトリホールディングスの物流子会社であるホームロジスティクスは、フジトランスポートとスワップボディコンテナ車両の運用で連携。19年3月に関東~関西間の輸送で、スワップボディ車による中継輸送のトライアルを実施した。「コネクトエリア浜松」を中継拠点に、ホームロジスティクスの「関東DC」(埼玉県白岡市)と「関西DC」(神戸市中央区)間を中継輸送した。
また、関西~九州間でも広島を中継地点に、「関西DC」「大阪DC」(兵庫県尼崎市)と「九州DC」(福岡県篠栗町)、フジトランスポートの「大川クロスドックセンター」(福岡県大川市)間の中継輸送を実証。さらに、九州~関西~関東間の連続中継輸送もトライアルを実施している。
(2024年7月30日号)