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運輸業界のM&A、「陸運業」がトップ=M&A総研

2024.06.06

M&A総合研究所(本社・東京都千代田区、佐上峻作社長)は5月30日、2018年1月から24年3月までに上場企業が適時開示した株式譲渡によるM&Aに関する発表のうち、運輸業界の案件を独自集計したレポートを発表した。それによると、「2024年問題」への対応などを背景に、「陸運業」のM&Aの件数が最多で、今後も増加が見込まれている。

期間中のM&A成約件数は97件で、業種別では「陸運業」が最多の46件。期間中のM&Aが最多となったのは22年の28件(同業種M&A18件、異業種M&A10件)。同業種M&Aと異業種M&Aそれぞれの推移をみると、18年から21年までは異業種M&Aの割合が高い傾向にあったが、22年は28件のうち同業種M&Aが18件と約64%を占める結果となった。

22年に同業種M&A件数が異業種M&A件数を上回ったのは、大手・中堅事業者が地場で強い同業者を傘下に収めるなど、「2024年問題」への対策としてM&Aを活用したケースが増えたことが要因のひとつと考えられる。

24年1月から3月までのM&A成約件数は8件で、内訳は同業種M&Aが2件、異業種M&Aが6件。3月時点の成約件数が調査期間中で最多となった22年の28件の3分の1に達しており、同程度以上の成約が見込まれるペースとなっている。24年1月から3月までのM&A成約件数を業種別にみると、同業種M&Aは「陸運業」が2件、異業種M&Aは「陸運業」が4件「倉庫・その他運輸」が2件だった。

24年4月から適用された時間外労働の上限規制は運輸業界にも大きな影響を与えており、なかでもトラック運送を中心とする陸運業の事業者にとっては、ドライバー不足の解消や労務問題の解決、物流拠点の確保が重要な課題となっている。

M&A総研では、「『2024年問題』の課題解決や業務の自動化・効率化を図るDX化などの取り組みに向け、運輸業界では今後もM&Aが活用するケースが増加する可能性が考えられる」としている。

なお、期間中の同業種M&Aの事例では、NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)が欧州の持株子会社を通じて、オーストリアのCargo-Partner Group Holding AGを子会社化。Cargo-Partnerは電機電子・自動車・医薬品産業の海運・航空フォワーディング事業を中心に欧州・北米・アジアで事業を展開しており、中東欧地域に強固な物流事業基盤を持ち、NXHDでは子会社化によりフォワーディング事業を強化するとともに、成長が見込まれる中東欧地域の物流基盤を強化してグローバル市場における競争力向上を目指すとしている。

異業種M&Aの事例では、パッケージの企画・デザインから製造・出荷までを提供する古林紙工が横浜市の金剛運送を完全子会社化すると発表。古林紙工は製品の運送と倉庫業務を金剛運送へ委託するなど以前から取引関係にあり、古林紙工は金剛運送の株式36・8%を保有していたが、株式追加取得により議決権保有割合を100%に引き上げたもの。古林紙工は金剛運送の子会社化により、同社のもつ運送業務・倉庫管理業務などの物流ノウハウを活用し、グループの企業価値向上を図る。
(2024年6月6日号)


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