物流リソース有効活用へマッチングサービス続々
荷主などの需要家とトラックをはじめとした物流リソースをマッチングさせるサービス・プラットフォームが続々と登場している。従来の求荷求車システムや共同物流の“進化系”として、物流の標準化や全体最適の視点が加わり、「2024年問題」や将来的な物流リソース不足という社会課題の解決を目指す色合いが強くなっている。サービス・プラットフォームがひしめくことで利用者の選択肢が広がるが、物流リソースの調達をめぐり、プラットフォーム間の競争激化も予想される。
フィジカルインターネットを事業化
物流の最適化とマッチングの新たなキーワードとなったのが、「フィジカルインターネット」だ。パケット単位で効率的な情報の送受信を実現しているインターネットの考え方を物流に適用したもので、伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社は、2024年度中にフィジカルインターネットの事業化を目指す。
事業化のおもな目的は物流リソースの有効活用で、5社は新会社の設立を協議していく。荷主や運送会社とも連携して物流網を整備。将来的には、フィジカルインターネットの活用による物流業務の効率化に加え、同サービスによって生み出されたコストメリットを荷主・運送会社等の利用者が享受できる仕組みをつくる。
トラック空きスペースをシェアリング
三菱食品は、同社のトラック輸送ネットワークの空きスペースを荷主であるメーカーとシェアリングする物流サービス「trucXing(トラクシング)」を昨年立ち上げた。三菱食品が持つ輸配送データと空きスペースを活用することで、持続可能な食のサプライチェーンを構築するととともに、物流の社会課題の解決を図る狙いだ。
パレット単位の納品業務について、三菱食品が利用運送の形態で代行する「余積シェアリングサービス」として、22年度から関東圏からスモールスタート。運送事業者との相互協力により、複数の納品業務を代行し、23年度からは、チャーター便をサービスメニューに加え、対象エリアも順次拡大している。
AI活用し荷主の共同輸送の機会創出
日本パレットレンタル(JPR)は、共同輸送マッチングサービス「TranOpt(トランオプト)」を展開。多数の企業の輸送経路をデータベース化し、AIにより膨大な物流データから業界を跨いだ荷主企業同士をマッチングすることで、共同輸送の機会を創出。物流業界全体の課題である、実車率や積載率の向上、CO2排出量の削減に貢献する。
また、「TranOpt」のシステムを活用し、長瀬産業では化学品に特化した「化学品AI共同物流マッチングサービス」の提供を開始した。長瀬産業が化学品を取り扱う国内企業を対象に提供・運用するもので、共同物流の成立時に手数料が生じる成功報酬型のサービスとなる。化学品に特化した共同物流マッチングサービスの提供は業界初となった。
新会社でオープンプラットフォームを提供
物流大手も参入する。ヤマトホールディングスは5月21日、荷主企業や物流事業者をつなぐ、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社「Sustainable Shared Transport(SST)」を設立。標準パレットの混載・中継輸送で業界の垣根を超えた物流の標準化・効率化を目指し、24年度中の事業開始を予定する。
プラットフォーム上で、荷主企業の出荷計画・荷姿・荷物量などの情報と、物流事業者の運行計画などの情報をつなぎ、需要と供給に合わせて物流をマッチング。地域の複数の物流網を集約する共同輸配送、「標準パレットの使用」「定時運行」「セミトレーラやダブル連結トラックなどの高積載車両の活用により、高積載で安定した運行を行う。
(2024年7月16日号)