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センコーGHD、外国人ドライバー100人採用へ

2024.07.02

センコーグループホールディングス(本社・東京都江東区、 福田泰久社長)は、2032年までに特定技能資格外国人ドライバーを100人採用する計画にあり、まずは来年4月の第1期生受け入れを目指す。社内で設定したモデル事業所で受入ステップを構築し、グループ内へ水平展開する。当面は、グループ内の倉庫作業に従事する外国人技能実習生からの採用をベースとするが、将来的には海外からの特定技能資格ドライバー採用も視野に入れる。

関東地区の事業所で第1期生を受入予定

外国人ドライバーを巡っては、今年4月に外国人在留資格の「特定技能1号」へ「自動車運送業」が追加された。センコーでは車両1万台体制を経営目標のひとつに据える中、ドライバーの安定的な雇用を重要課題と認識。現在の保有車両台数は7000台、ドライバー数は約7000人に上るが、うち約4割が50歳以上で、10年後には定年退職などで約1000人のドライバーが消失する見通しにあり、「1万台体制に対応するには、現状でも3000人以上のドライバー確保が必要となる」(菅野祐一・センコーグループホールディングス人材派遣事業部課長)として、特定技能資格を持つ外国人ドライバーの“戦力化”を決めた。

当初は海外の特定技能有資格ドライバーを採用する方法も検討したが、事故発生時などの対応リスクを最大限回避することを考慮に入れ、まずは、グループ内の倉庫作業に従事する技能実習生や外国人派遣作業者の中から日本語が得意で意欲のある人材をドライバーとして採用する方針。モデル事業所には、既に物流センターで技能実習生などを雇用している事業所を設定し、各事業所と本社組織が連携して受入体制の準備を進める。

具体的には、普通免許を保有するドライバー希望者を特定技能資格者として採用した後、社内教育や受入事業所でのOJTを経て、センター間輸送などから単独乗務を開始。その後、2t車などの小型車両による都市型の配送へとステップアップし、例えば複数車両で納品する住宅部材の現場搬入や、ルート便で夜間無人納品の多い量販店配送業務などに従事する。さらに、準中型、中型、大型へと運転免許を更新しながら業務の幅を広げていく。

現在、自動車運送業が認められている特定技能1号の在留資格は5年間だが、「5年の就労期間中に本人が頑張るだけ賃金が上がり、仕事への魅力を感じてモチベーションアップにつなげられるような仕組みにしたい」と菅野氏は話す。さらに、将来的には、永住者への資格変更が可能となる「特定技能2号」への移行も想定し、「その際には社員と同じ、ドライバーの班長にまでなれるようにしたい」と話す。

外部の物流会社にもノウハウを提供

特定技能資格を持つ外国人ドライバー採用時の課題のひとつが運転免許証の切替・取得だ。6ヵ月間の「特定活動」期間内に外国免許を日本免許へ切り替える必要があるが、現時点で試験予約が3~4ヵ月待ちの状態にあることから、技能実習期間中や留学期間中に免許切り替えを行うなど、可能な限り短期間で実務に就けるスキームを構築する。また、中型、大型免許の取得条件となる運転年数については、母国での乗車経験年数も含まれることから、こうした期間を有効に活用していく。

海外から直接採用する場合は、日本語試験と技能試験に合格し免許切り替えを行ったうえで特定技能1号の在留資格を取得する必要があるが、その後も、自社研修施設「クレフィール湖東」や「クレフィール流山」で教育する社内プログラムや、単独乗務を認める判断基準も独自に設ける。日本語能力については、技能実習生からの勧誘とすることで一定のレベルを担保するものの、日本語能力の向上が必要であることから、配属後も継続して教育が受けられる仕組みを作っていく。

在留資格取得にかかる日本語試験と技能試験は来年1~2月の初回実施が見込まれることから、センコーでは同試験合格者の採用、教育実習などを経て、来年4月のモデル事業所における外国人ドライバー単独乗務開始を目指す。モデル事業所で採用したスキームを他の地域会社や、グループ輸送会社にも必要に応じて水平展開するほか、協力輸送会社をはじめとする外部の物流会社にノウハウを提供していきたい考えだ。

一方で、技能実習生からの採用だけでは車両1万台体制に対応するドライバー数に追いつかないとして、32年までに海外からの特定技能有資格ドライバーの直接雇用も開始する計画。国によって申請手続きが異なることから対象国を絞るとともに、母国側で日本の交通ルールや運転技術を学べる体制を整えることで、来日・資格取得後に可能な限り短期間で就労できるようにする。母国側での教育には海外で輸送事業を展開するグループ現地法人とも連携していく。

倉庫作業者でも外国人採用を加速

センコーグループでは直接雇用者・派遣作業者などで50ヵ国以上、約1400人の外国人を活用している。このうち、倉庫作業に従事する技能実習生は1号実習生が40人、2号以上の実習生が25人ほどで、ほとんどがベトナム人となっている。特定技能資格ドライバーはこうした従業員から勧誘していく方針だが、同時に倉庫でも外国人作業者の雇用を推進していく。

倉庫での作業従事者を含む技能実習制度については27年度の廃止を控えるが、同社では「倉庫業」の育成就労制度追加と将来的な特定技能制度への移行を想定。倉庫の作業者として雇用した人材のドライバーとしての適性を見極めながら、そのまま倉庫で働くか、特定技能ドライバーとして職種変更するか――の2パターンのキャリアプランを用意し、外国人就労者が幅広い選択肢を持てるようにしていく。

また、グループにはS‐TAFF(本社・大阪市北区)と22年4月に傘下入りしたKyoudou Project(本社・茨城県龍ケ崎市)の2社の人材派遣会社があり、21年10月には在留外国人の人材派遣や技能実習生向けの研修事業を展開するセルフ・グロウ(本社・名古屋市昭和区)も100%子会社化しており、3社で一連の外国人就労の準備を進める。同時に、特定技能を含めた在留資格の取得・変更には煩雑な手続きが必要となることから、全国のグループ拠点をきめ細かにサポートできるよう、人材派遣会社のネットワーク拡充も検討していく。
(2024年7月2日号)


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