【働き方】同・異業種で荷主の共同物流が加速
同業種、異業種間で荷主の共同物流が加速している。トラックドライバー不足への危機感が増す中、幹線輸送、エリア配送の共同化、倉庫の共同利用、鉄道用31ftコンテナの往復利用などパターンも様々で、サプライチェーンの縦横全方位、全輸送モードで取り組みが進んでいる。共同物流ではハード面が注目されがちだが、実施にあたっては荷主間で荷役形態や受注の締め時間の厳守などソフト面の“調整”や“歩み寄り”が行われており、共同物流の拡大がドライバーをはじめ物流事業者の労働環境改善につながる期待もある。
全国初、北海道ではビール4社で共同輸送
同業種の物流の共同化をけん引するビール業界。アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービールのビール4社は12日、JR貨物、日本通運と連携し、北海道・道東エリア(釧路・根室地区)向けに共同輸送を開始した。4社そろっての共同物流は全国初。札幌~釧路間330㎞、札幌~根室間450㎞を鉄道輸送にシフトすることで、年間でドライバーの運転時間を年間約5300時間、トラック運行台数で800台、CO2排出量で4社合計約330t抑えられる。
これまで4社は同エリア向けに札幌市近郊の製造・物流拠点からトラックで輸送していたが、トラック単位に満たない荷物を対象に、札幌貨物ターミナル駅の日通の倉庫に製品を集約、配送先別に各社製品を仕分けして積込む。1社・1届け先で車両単位にならない荷物は鉄道コンテナで、4社合計で車両単位となる場合は大型トラックで共同輸送。なお、1社・1届け先で車両単位になるものは各社拠点からの個別配送を継続する。今回の取り組みをモデルケースとし、将来的には他エリアでも水平展開を目指す。
混載に適した商品の組み合わせ、繁閑差対応も
1社で物量がまとまりにくい北海道エリアは共同物流が進めやすい土壌がある。味の素、カゴメ、Mizkan、日清オイリオグループ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社の食品メーカー6社は昨年4月から北海道地区で共同配送をスタート。うち4社(味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社)は今年3月、北海道地区の物流を手掛ける合弁会社「F―LINE」を発足。北海道をモデルケースに九州でも2018年を目標に共同物流体制を構築する。
サントリーホールディングスと日清食品も6月中旬から、北海道の帯広エリアへの商品配送の一部を共同化。北海道の千歳・恵庭エリアのそれぞれの倉庫から帯広エリアの卸店・小売店の配送センターに納品する荷物の一部が対象。サントリーの重量商品と日清食品の軽量商品の組み合わせが配送時の混載に適している点、年間を通じて物流量のピークが異なる点など、両社にとってメリットが見込まれ、今回の取り組みにより両社合計で年間のCO2排出量約50tの削減が可能となる。
医薬品メーカーの物流共同化も北海道から始まった。アステラス製薬、武田薬品工業、武田テバファーマ、武田テバ薬品は札幌市内で共同物流センターを立ち上げ、18年3月までに稼働させる計画。安定供給、GDP(Good Distribution Practice)を考慮した保管・輸送時の品質確保、トラックドライバーの不足を念頭に、医療用医薬品の共同保管(作業・管理基準の標準化等)および共同輸送体制(配送手順標準化・積載効率向上によるトラック台数削減等)を構築する。
共同物流の波は化学メーカーにも押し寄せている。千葉県京葉地区に工場を持つ化学メーカー6社(三井化学、出光興産、東レ、JSR、プライムポリマー、三井・デュポン ポリケミカル)は昨年6月から東北エリアを対象とし共同輸送をスタートさせ、今後は他エリアにも展開。三菱ケミカルと住友化学も15年7月から、物流子会社と連携し三菱ケミカルの水島事業所(岡山県倉敷市)、住友化学の愛媛工場(愛媛県新居浜市)から北関東地区向けの危険物小口輸送について共同配送を行っている。
RORO船、鉄道コンテナの共同利用も進む
サプライチェーンの“縦”の連携も進む。中核となるのがサプライヤーを集めて「イオン専用列車」を運行するイオンだ。イオンとサッポロホールディングスは7月24日から、それぞれの物流子会社により中部~九州間でRORO船を活用した共同運航を開始。イオンは福岡県内のトップバリュ生産工場から西関東RDC・北関東RDCへ、サッポロは静岡県内のサッポロ委託先工場から佐賀県内の物流センターへ商品を納品する。RORO船による大量輸送ではイオンで約15%、サッポロで約6%のコスト削減が可能になる。
トラック不足で鉄道輸送の機運が高まる中、31ftコンテナの共同運用の動きも活発化。先行事例として挙げられるのが、14年からキヤノンとダイキン工業が取り組んでいる、大型特殊31ftコンテナの共同利用。大阪発はダイキン、東京発はキヤノンの製品を積むことで大阪~東京間を鉄道で往復輸送。31ftコンテナは往復運用がコストメリットを出すカギとなるが、8月から「31ftスーパーURコンテナ」の運用を開始したブルボンでも、新潟~岡山間の輸送では両県に拠点を持つ他メーカーと往復輸送を実現している。
“ソフトの共同化”、ドライバーの労働環境改善も
旧プラネット物流の“財産”を継承し、30年近く続いている日用品業界の共同物流も第2ステージに入った。流通経済研究所は16年度から「日用品共同物流研究会」を設置。初年度はライオン、サンスター、エステー、小林製薬など荷主メーカー14社と物流関連事業者7社が参加し、共同物流実績および会員各社の課題の共有を行うとともに、共同配送効果を検証した。旧プラネット物流の共同物流における統一伝票等“ソフトの共同化”のノウハウの活用が期待される。
物流の共同化は共通のトラックを使用するため、片方の荷主が“手荷役”から“パレット荷役”に変更したケースもある。また、F―LINEのように、共同配送実施にあたって納品伝票の統一、受注の締め切り時間などの共配ルールや納品手順書の共有化に加え、外装表示の標準化の可能性まで踏み込んで検討している例もある。それぞれの共同物流の枠組みで、共通課題とされる納品時の「附帯作業」の実態把握、改善に向けた取り組みも始まっており、ドライバーの労働環境改善につながる可能性も出てきた。
(2017年9月28日号)