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トランコム、求貨求車事業を中距離帯での需要開拓へ

2024.05.09

トランコム(本社・名古屋市東区、神野裕弘社長)は今期、物流情報サービス事業(求貨求車サービス)において、メーカーや物流子会社など直荷主との取引拡大に注力していく。一般運送会社に比べ、運賃や輸送条件などの交渉余地が大きい直荷主や大手3PLとの取引比率を高めることで、定期便の利用比率を高める。また、今後はコンプライアンス面から600㎞以上の長距離輸送が減るとして、200~600㎞の中距離帯を注力領域にしていく。

2日に都内で行われた2024年3月期決算の説明会で、神野社長らが事業方針を語った。コロナ前の19年度での求貨求車サービスの顧客構成は、直荷主と特積み・大手3PLが35%だったが、23年度には45%まで拡大。今期以降もさらなる拡大を図る。一般運送会社との取引比率を相対的に下げることでスポット貨物の比率を減らし、定期便貨物を増やしていく。今後の注力領域に位置づける中距離帯の利用を高めるためにも、直荷主との取引拡大がカギを握るほか、現在、成約件数の2割弱にとどまっている中ロット輸送の拡充も図っていく。そのため、チャーター輸送が中心となっている情報センターの再配置なども検討していく。

求貨求車サービスでの適正運賃収受にも取り組む。神野氏は「コロナ禍で貨物情報が激減する中、運賃を下げてでも成約件数を追う動きをしていた。こうした〝安易なマッチング〟から方針を切り替え、運賃水準の引き上げに力を入れていく」との方針を示した。

ロジスティクスマネジメント(LM)事業では、戦略物流拠点「C‐AREA」を消費地に近い場所に展開することで、日用品や食品、自動車部品などの共同物流事業に注力していく。また、25年以降に中部エリアで生産と物流を一体化させた2ヵ所の自社投資拠点の開設を計画している。

24年3月期は増収減益、コスト上昇が利益圧迫

同社の24年3月期連結業績は、売上高が1694億1000万円(前期比1・0%増)、営業利益が70億2000万円(5・6%減)、経常利益が71億5200万円(5・5%減)、当期純利益が45億4600万円(18・6%増)となり、増収減益だった。LM事業における新規拠点の稼働が増収に寄与した一方、新規拠点立ち上げコストや物流情報サービス事業の支払い単価上昇などが響き減益となった。当期純利益は前期(23年3月期)に海外事業の減損処理を行った反動で増益となった。

主なセグメント別では、LM事業が売上高566億4800万円(3・5%増)、営業利益39億5000万円(4・0%減)の増収減益。新規拠点の開設効果や前期に立ち上げた業務の通期寄与で増収となったものの、C‐AREA厚木、C‐AREA一宮など新規拠点の立ち上げコストや人件費など諸経費の増加が利益を圧迫した。

物流情報サービス事業は、売上高926億3900万円(0・1%減)、営業利益22億5200万円(14・9%減)の減収減益。荷動きが悪い中にあって3Qまでの成約件数は微増を維持していたが、4Qで荷動きがさらに悪化し、通期での成約件数は0・6%減となった。とくに成約件数の約2割を占める輸送距離600㎞以上の長距離帯の落ち込みが想定を上回っており、4Qでの空車情報は前年同期比13・6%減、成約件数も7・1%減となった。そうした中、下払い運賃が上昇したことが利益を押し下げた。

25年3月期の連結業績予想では、売上高1736億7000万円(前期比2・5%増)、営業利益70億7000万円(0・7%増)、経常利益70億4000万円(1・6%減)、当期純利益45億5000万円(0・1%増)の増収増益基調を見込む。LM事業は前期に稼働した拠点が通期で寄与する。また、「2024年問題」が下期以降に顕在化することで、LM事業、物流情報サービス事業ともに運賃などの価格転嫁が一定程度進むことを想定している。
(2024年5月9日号)


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