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【レポート】存在感増すデジタルFWDサービス

2024.03.14

物流業界でも業務効率化に向けたDXが求められる中で、アナログかつ煩雑な業務が多い貿易関連業務で、オンライン上で即時見積もりや予約、ブッキング、トラッキングまで一貫して対応する「デジタルフォワーディングサービス」が存在感を増している。大手フォワーダーの参入のみならず、スタートアップも個性豊かなサービスをリリース。フォワーディング業界におけるビジネスの新たな〝柱〟として成長を続けている。

フォワーダー最大手のNXも2種類のサービスで参入

NIPPON EXPRESSホールディングスは、23年7月からオンライン見積もりサービス「e-NX Quote」とトラッキングサービス「e-NX Visibility」の提供を開始した(写真)。「e-NX Quote」はオンライン上で数量、出発地・到着地、商品などの情報を入力すれば即時に運賃見積もりを提示するサービス。国際海上輸送のコンテナ貸切貨物(FCL)とコンテナ混載貨物(LCL)に対応し、出発地は欧州、東アジアの各港と日本の東京港、到着地は米州、欧州、東アジア、南アジア・オセアニア、日本の各港間のレーンが対象。現在、35の国と地域で利用できる。

「e-NX Visibility」は海上・航空輸送のトラッキングシステムを統合し、幅広いユーザーに対応するデザインに改良したサービス。最新の輸送状況をダッシュボード画面に表示できるほか、国際輸送のCO2排出量計算ツール(NX-Green Calculator)用のデータ出力機能や温度ロガーデータの可視化などの機能を備えている。遅延などのイレギュラーを早期に発見するアラート機能も備える。

デジタルFWDを「新たな収益モデル」に

郵船ロジスティクスは21年、デジタルフォワーディング機能「Yusen Vantage Focus Quote and Book」をリリースした。海上貨物輸送(FCL・LCL)、航空貨物輸送を対象に、一連の出荷プロセスをワンストップで完結する。サービス開始から利用可能なエリアを順次拡大しており、現在は計32の国と地域に対応している。

日新は中期経営計画(22~26年度)でDXによる新領域事業創出をテーマに掲げており、デジタルフォワーディングサービスの提供による新たな収益モデルの構築を目指している。21年7月には「Forword ONE」の提供を開始。見積もり取得やブッキング依頼など一連の業務はもとより、外航貨物海上保険への申し込みも一貫してオンラインサイト上で行える。

スタートアップはデータ分析や決済システムで差別化

スタートアップ企業もデジタルフォワーディングサービス事業に進出し、大手フォワーダーとの差別化を図る個性的なサービスを生み出している。日本初のデジタルフォワーダーであるShippio(シッピオ)は、国際物流プラットフォーム「Shippio」を提供。輸送情報のデータ分析機能を備えており、各航路の輸送リードタイム実績を可視化することで、オリジナルスケジュールとの比較やサプライチェーンの最適化に向けた施策の検討が行える。また、「Shippio」のサービスのひとつとして荷主向け貿易業務SaaS「Any Cargo(エニーカーゴ)」もリリース。荷主が国際物流案件の情報を「Shippio」に取り込むことで本船動静の可視化や貿易書類・情報のクラウド上での一元管理を実現。他社フォワーディング案件の管理にも対応している。

STANDAGE(スタンデージ)が23年4月に開始した「デジトラッド」は、販路開拓や交渉、決済、貨物の引き渡しまで、プラットフォーム上で行える。ブロックチェーンと暗号資産を使った独自開発の決済システムを採用しており、ブロックチェーン上に仮想の「デジタル金庫」を用意し、双方の合意のもとで代金の支払いが行われるため、代金の未回収リスクを低減することができる。このほか、国際物流費の概算見積もりの即時取得が行える「デジトラッド・フォワーディング」も提供。見積り後はそのままシステム上で発注手続きを行える。
(2024年3月14日号)


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