業種・分野別自主行動計画、新たな論点も
昨年6月に決定された「物流革新に向けた政策パッケージ」では、業種・分野別に、物流の適正化・生産性向上に関する「自主行動計画」を作成し、2023年内に公表することとされた。これまでに各団体・企業が策定・発表した自主行動計画には、共同配送やモーダルシフト、物流資材の標準化、リードタイムや検品の見直し、荷役作業の安全確保などの物流効率化策が列挙されるとともに、ドライバーの作業対価を支払う者の特定や付帯作業の移管、荷待ち・荷役時間の定義など、サプライチェーン関係者間で協議が必要となる新たな論点も浮上している。また、運送会社側も法令遵守や下請けへの委託の度合いによって、荷主から選別される可能性も出てきた。
ドライバーの作業対価、誰が支払う?
自主行動計画では、荷物の積み降ろし先などでドライバーがこれまで行っていた作業に対する対価を明確にし、誰が支払うかを特定しようという取り組みも挙げられた。日本自動車工業会、日本建設業連合会、日本半導体製造装置協会などは、運転者が行う荷役作業等の対価を支払う者を明確化し、物流事業者に適正な対価を支払うとした。
自ら運送契約を行わないケースでも、取引先から運送契約において定められた荷役作業等を確認し、当該荷役作業が運送契約にない場合は、対価を支払う者を明確化し、当該者から取引先または物流事業者に対して別途その対価を支払うよう調整する。発着荷主間で作業の指示主体、対価をどちらが払うのか本格的な協議が始まりそうだ。
作業の移管を検討、業務範囲を規定
ドライバーが行う作業自体を見直し、移管を検討する動きもある。日本ハム・ソーセージ工業協同組合では、これまで発荷主事業者のサービスとしてハム・ソーセージ業界に特徴的な商習慣となっている店舗配送得意先における配送業務以外の付帯業務の実施を見直し、作業負荷が増す得意先に対しては、商品の流通が持続可能となるように協議するとした。
日本加工食品卸協会は、食品物流未来推進会議(SBM会議)とともにまとめた荷待ち・荷役作業時間削減に向けガイドラインで、納品先での荷降ろし時などにトラックドライバーが行っている各種作業について範囲を明確化。ラベル貼りや棚入れなどは「着荷主側の業務範囲である」と規定した。今後、業務の移管先のキャパシティー、コスト増なども課題となる。
手荷役主体の作業は2時間ルールから除外も
「荷待ち時間・荷役作業時間2時間以内ルール」への対応では、業務の実態を踏まえて再定義する団体も多く見られた。日本倉庫協会では、倉庫事業者都合ではない待機時間については「荷待ち時間」から控除し、「荷待ち時間・荷役作業時間2時間以内ルール」に関し、手荷役主体の荷役作業については「この限りではない」とした。
日本冷蔵倉庫協会は、入出庫情報と運送情報の照合時間、倉庫営業開始時間前、受付後の他倉庫等への外出時間、予約予定時間以前に到着した場合など、運送事業者都合の待ち時間については「荷待ち時間としては考慮しづらい」と指摘。荷主や運送事業者都合の作業時間、大型車、トレーラ、海上コンテナの手荷役作業等も荷役作業時間として考慮しづらいと主張する。
優良物流会社を選択、多重下請けを抑制
自主行動計画を通じ、荷主が優良な物流事業者を選別する動きもある。日本製紙連合会は、「契約する物流事業者を選定する際に、関係法令の遵守状況を考慮するとともに、働き方改革や輸送の安全性の向上等に取り組む物流事業者(ホワイト物流宣言をしている事業者やGマーク取得事業者等)を積極的に活用する」ことを挙げる。
運送契約の相手方の物流事業者(元請事業者)に対し、下請け事業者へ適切な契約・運賃・料金の設定を要請し、多重下請とならないよう留意する業界団体も多数あった。全国農業協同組合連合会では、運送元請事業者に対して、適正な下請取引の実施を依頼し、不適切な取引実態が発見された場合は、即時の改善を求めるとした。
(2024年1月18日号)