「24年問題」見据え、米専用列車を試験輸送=JR貨物/JA全農
JR貨物と全国農業協同組合連合会(JA全農)、全農物流は2日から3日にかけて、「2024年問題」を見据えた輸送力確保を目的とした、八戸貨物駅~百済貨物ターミナル駅間の専用列車による試験輸送を実施した。〝米どころ〟である東北・日本海エリアから東海・西日本エリアへの米輸送の一部をトラックから鉄道にシフトするもので、今年2月、3月に続き3回目の試験輸送。今回は夏場の高温下での輸送中の品質変化などを検証した。今後、とくに品質面での問題がなければ、今年度下期から隔週ペースで専用列車の定期運行を開始し、来年4月以降は週1便体制に引き上げたい考え。
貨車20両で12ftコンテナ100個を輸送
今回の取り組みは、「2024年問題」やドライバー不足などにより、農産品輸送の今後の輸送力確保に強い危機感を持つJA全農・全農物流に対し、JR貨物が米の産地である北東北や日本海側各地区を縦断する専用列車の運転を提案したもの。JA全農にとっては、長距離輸送を中心に一定量を鉄道にシフトすることで、輸送力の安定的な確保につなげるほか、輸送中のCO2排出量を大幅に削減することが可能になる。また、JR貨物にとっては週末の運休列車を復活運転することで、既存輸送力の有効活用につながる。
試験輸送では3回とも貨車20両で12ftコンテナ100個を輸送。冬場の2回は玄米のみの輸送だったが、今回は精米や大豆も運ぶとともに、穀温計を使って輸送中の温度変化などを検証。到着後は実際に炊飯することで米の品質を確認した。
また、コンテナ集配を担当する利用運送事業者の負担を軽減するため、貨物は全量パレタイズ化またはフレコン(フレキシブルコンテナ)とし、手荷役をなくした。
これまで以上に鉄道輸送を活用
3回目となった今回の試験輸送では、2日の日曜日に八戸貨物駅を出発した専用列車が秋田貨物駅、新潟貨物ターミナル駅、金沢貨物ターミナル駅などを経由し、〝米どころ〟である各地のJAの倉庫から出荷された米をコンテナ列車に順次積載して、3日夕刻に百済貨物ターミナル駅に到着。その後、東海地区や近畿地区、中四国などの納品先に運ばれた。宮城県や岩手県から出荷される米は、青森県の八戸貨物駅を経由するために通常のトラック輸送よりもリードタイムが延長するが、関係先に理解を得た上で輸送が実現したという。
JA全農の上田大介・米穀部主食課課長は、専用列車の狙いについて「米の輸送では、これまでも鉄道輸送を利用させていただいているが、現状ではまだトラック物流の比率が高い。24年4月からドライバーの労働時間規制が強化されれば、ドライバーの運転可能距離が短くなることが避けられず、これまで以上に鉄道を利用していきたい」と述べた。また、全農物流の佐藤英一常務取締役は「『24年問題』を控え、現在、遠隔地の輸送について総点検している。当然、これまで運べたものが運べなくなる事態が予想されるため、JR貨物による鉄道輸送をファーストチョイスにしていきたい」と語った。
JR貨物の和氣総一朗・執行役員関西支社長は「今回の試験輸送で品質維持が確認されたあかつきには、下期以降の定期運行を目指して調整を進めていく予定であり、年間を通じたご利用に向けてJR貨物として最大限努力していきたい」と述べ、定期運行の実現に意欲を示した。
(2023年7月6日号)