JA全農グル―プ/JR貨物、米専用列車「全農号」が定期運行開始
全国農業協同組合連合会(JA全農、本所・東京都千代田区、野口栄理事長)、全農物流(本社・東京都千代田区、寺田純一社長)、JR貨物(本社・東京都渋谷区、犬飼新社長)は今月から、「2024年問題」を見据えた輸送力確保を目的として、米専用貨物列車「全農号」の定期運行を開始した。〝米どころ〟である東北・日本海エリアから東海・西日本エリアへの米輸送の一部をトラックから鉄道にシフトすることで、米の安定供給に取り組む。今年度は月2回、隔週ペースでの運行となるが、来年度からは月4回を基本に輸送量を拡大していく。
3回の試験輸送を経て定期運行化
「全農号」は今年2月、3月、7月とこれまでに計3回の試験運行を通じて、定期運行化に向けた準備を進めてきた。とくに夏場となる7月の試験輸送では、穀温計を使って温度変化を検証するなど輸送中の品質確認を実施。万全の準備を重ねたうえで、今回の定期運行にこぎつけた。JR貨物にとっては週末の運休列車を復活運転することで、既存輸送力の有効活用につながる。
初列車は日曜日の5日夜に青森県の八戸貨物駅を出発し、秋田、新潟、金沢などの各貨物駅で周辺産地の倉庫から米を積み込み、6日夕方に百済貨物ターミナル駅(大阪市東住吉区)に時間通りに到着した。輸送量は12ftコンテナ100個、重量にして約500tで、今後もこの輸送量を基本にしていく。百済タ駅に到着後は、関西地区の納品先へはトラックで運ばれたほか、中国地区や九州地区向けは別の貨物列車にコンテナを積み替えて継送された。
JA全農および全農物流では、今回の鉄道輸送にあたり、貨物を全量パレタイズ化またはフレコン(フレキシブルコンテナ)で運ぶようにすることで手荷役をなくしたほか、荷役作業時間の短縮化を実現する。
来年度は年間2万4000tを輸送へ
6日夕方、百済タ駅に到着する「全農号」が報道陣に公開された。JA全農の上田大介・米穀部主食課課長は、今回の専用列車の定期運行化について「米の主な産地は東北や北陸であり、関西以西の遠隔地にある消費地への輸送については、24年4月以降、これまでのようには運べない可能性がある。米を確実に消費地に届けるのがJA全農としての使命であり、そのために可能な限り貨物列車で輸送する必要がある」と述べた。
JA全農では、主食用の米を年間約200万t取り扱っており、そのうち購入側が引き取る分を除くと約120万tを輸送しているという。来年度以降、月4回ペースで専用列車を運行する場合、年間輸送量は約2万4000tとなり、比率は約2%となる。上田氏は「全体の2%というと少なく感じるかもしれないが、以前から鉄道輸送している分もあり、専用列車の輸送分が純増として上乗せされることになる」とした。
(2023年11月9日号)