経済対策で〝モーダルシフト倍増〟へ=国交省/鶴田物流・自動車局長
国土交通省の鶴田浩久物流・自動車局長(写真)は10月31日、専門紙記者会見を開き、政府が同月6日に取りまとめた「物流革新緊急パッケージ」に提示された施策を総合経済対策として実施する考えを明かし、「鉄道・海運のモーダルシフトを10年程度で倍増」するためには「荷主、トラック事業者、モーダルシフトの受け皿であるJR貨物や内航海運業者が連携することが不可欠だ」と指摘。今年度補正予算を活用し、国が支援を行うことでモーダルシフトを促進する考えを示した。
「鉄道が他のモードに合わせていく」時代
鶴田氏は「物流革新緊急パッケージ」の狙いについて「一言で言えば、トラック運送業の生産性向上と適正運賃の収受を図り、ドライバーの賃上げにつなげること」と強調し、2日に閣議決定された政府の総合経済対策の一環として実施していく見通しを語った。具体的な施策では、①物流効率化を図るシステムの導入や施設の自動化・機械化②鉄道と内航海運の輸送量を今後10年程度で倍増し、トラック輸送からのモーダルシフトを進めるためのコンテナ大型化③宅配便の再配達率半減に向けて荷主や消費者の行動変容を促すポイント還元事業の実施――などに取り組む。
鉄道モーダルシフトについて鶴田氏は「かつては我が国の貨物輸送の太宗を担っていたのは鉄道だった。鉄道輸送を軸に自動車・船舶などが付随するかたちで物流の体系ができあがっていたと言える。しかし現代は主流の座はトラックに移り、鉄道が他の輸送モードに合わせていく時代になった」と述べた上で、「輸送量倍増という高い目標に向けて、鉄道と他の輸送モードの〝モーダルコンビネーション〟が不可欠となる」と強調。「現状では12ftコンテナ――5t積みのため『ゴトコン』と呼ばれている――が広く使われているが、今後は31ftや40ftの大型コンテナの利用を拡大していく方向だ。31ftコンテナは10tトラック1台分の貨物を積載できる内容積があり、荷主は大型トラックを利用する出荷システムを変更する必要がなく、CO2排出量を大幅に削減できるメリットがある。また、40ftコンテナは国際海上コンテナの規格となっている。鉄道輸送がこれらの大型コンテナを活用すればトラックや船と連携しやすくなり、輸送量拡大につながる」と述べた。具体的方策は物流生産性向上を図るため官民が参画する「官民物流標準化懇談会」の傘下に設置した「モーダルシフト推進・標準化分科会」が今月にも公表する最終提言書で提示する考え。
需要と投資は「ニワトリとタマゴ」の関係?
31ftコンテナの利用拡大にはJR貨物による設備投資が必要となるほか、40ftコンテナについては貨車に積載した場合、通過できない鉄道トンネルもあることから、普及が困難との見方も強い。鶴田氏は設備投資について「ニワトリとタマゴの関係があるかもしれない」と述べ、「荷主は『31ftコンテナを使いたくともコンテナの数が不足しているのだから荷物を出しにくい』となる。一方、鉄道事業者は『大型コンテナの基数を増やすには、荷物をさらに増やしてもらわなければ…』と言うだろう。設備投資がされているから荷物を出すのか、需要増があるから設備投資をするか、という相補的な問題だ」と述べ、国による補正予算を利用した大型コンテナ導入への補助が重要になるとした。
(2023年11月7日号)