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【レポート】首都圏で危険物倉庫の新増設が活発化

2023.05.30

全国的に危険物倉庫の投資が加速している。トラックドライバーの労働時間規制が厳格化される「2024年問題」を前に、中継拠点となるストックポイント需要も増大。近年のおもな危険物倉庫の新増設状況を地区別にまとめた。

【北海道・東北圏】
北海道圏では、千歳市における国産先端半導体ラピダスの工場進出構想を受け、危険物倉庫の動向が注目されている。道内に営業用危険物倉庫は少なく、近年の新増設では、小樽倉庫が19年10月に同社初となる危険物倉庫を備えた「一本松配送センター」を苫小牧市に竣工し、潤滑油の配送拠点として運用。東北圏も危険物倉庫は限られ、18年9月に大郷運輸が宮城県塩釜市の本社敷地内で初の危険物倉庫を開業。22年8月末には丸山運送が仙台市宮城野区で同社初となる危険物倉庫を開業し、すでに満床稼働している。

【首都圏】
首都圏内陸部では、21年10月に丸全昭和運輸グループの武州運輸倉庫が定温庫も備えた危険物倉庫2棟からなる「加須ケミカルセンター」(埼玉県加須市)を竣工。同じ埼玉県では本庄市で京葉流通倉庫が、加須市で五洋ロジテックが今年2月から危険物倉庫の営業を本格的に開始した。茨城県では21年11月に沼尻産業が同社初の危険物倉庫である「稲敷第一危険物倉庫」(茨城県阿見町、写真)を本格稼働。危険物倉庫3棟に普通品倉庫1棟も併設している。茨城県では高塚流通が下妻市に、タンクターミナルの丸善が五霞町に危険物倉庫を建設する。

危険物倉庫用地が希少な京浜地区では、22年3月中旬から、鈴江コーポレーションがタンクターミナルを併設する新杉田埠頭倉庫営業所(横浜市金沢区)で、危険品立体自動倉庫を稼働。知多産業運輸は川崎市川崎区塩浜に危険物倉庫「川崎DP」を同年4月に開業。同社にとって首都圏での危険物倉庫の展開は初めてとなった。また、同年8月には横浜市金沢区福浦地区で、明正が同社初となる危険物倉庫の営業を開始。このほか横浜市神奈川区恵比須町では、日新が危険物倉庫5棟や高圧ガス倉庫2棟などからなる多機能拠点を8月末に竣工させる。このほか神奈川県内では、トーエイ物流が小田原市に危険物倉庫事業で進出した。千葉県湾岸部では、センコーが一般倉庫と危険物倉庫3棟を含む「京葉PDセンター」(千葉県市原市)を昨年12月に開業している。三和倉庫も同市で21年に続き、24年春にも危険物倉庫1棟を竣工予定だ。また、千葉県内陸部では、ロジスティード首都圏が危険物倉庫4棟を含む「佐倉物流センター危険物倉庫(仮称)」の新築を予定している。

【中部圏】
中部圏では、名港海運が22年5月に「西二区物流センター北」で新たに危険物倉庫2棟を竣工。西日本エア・ウォーター物流は23年4月から、3棟の危険物倉庫を含む多機能型拠点「亀山物流センター」を稼働させた。日本トランスシティは三重県亀山市で今年7月の竣工に向け、低温危険品倉庫2棟を建設している。このほか築港が、「名古屋化学品センター第2倉庫」(愛知県弥富市)で2期工事に着手し、冷凍危険物対応含む危険物倉庫4棟を増設。山九も三重県四日市で危険物倉庫4棟の増設を計画している。

【関西圏】
関西圏では、21年11月に東洋埠頭が大阪支店(大阪市此花区)の敷地内に危険物自動立体倉庫の稼働を開始。22年1月にロジスティードケミカル(旧日立物流ファインネクスト)が2棟の危険物自動ラック倉庫を中心とした「大津物流センター」(滋賀県大津市)を開設した。また、同社は25年1月完成で、京都府亀岡市に危険物倉庫7棟で構成される新基幹センターを開設する予定。兵機海運は22年11月に「兵庫埠頭物流センター」内で3棟目となる危険物倉庫を開設。山九は22年4月に姫路港飾磨地区で危険物倉庫1棟が稼働したのに続き、今年5月には危険物倉庫8棟から成る「関西ケミカルセンター」が竣工した。

【中国圏】
危険物倉庫が少ない中国地区では、神原ロジスティクスが21年10月、福山国際コンテナターミナルに隣接する自社物流センター内で危険物倉庫1棟の営業を開始。三菱ケミカル物流は22年8月、岡山県倉敷市で新たな危険物倉庫を竣工し、キャパシティーを拡大した。また、中谷興運が水島港玉島地区で24年以降、危険物倉庫2棟の建設を計画している。

【九州圏】
半導体、自動車関連の産業集積で注目される九州地区では、21年10月に東海運が「危険物マルチワークステーション」(北九州市門司区)で3棟目となる危険物倉庫を竣工。同11月に、南九州で初めて本格的な危険物倉庫の運営を開始していた松木運輸が熊本県八代市で3棟目を稼働させた。山九は昨年11月に福岡県苅田町で、将来的に定温対応も可能な仕様の危険物倉庫1棟を開設。センコーは23年4月に危険物倉庫などを備えた「日向第2PDセンター」(宮崎県日向市)を開設。このほか半導体原材料などの物流需要を見込み、NRSが7月に危険物倉庫ほか多機能拠点となる「熊本支店」(熊本県大津町)を開業する。
(2023年5月30日号)


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