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【ズームアップ】物流大手が危険物倉庫への投資加速

2023.09.21

総合物流大手が危険物倉庫への投資を加速させている。車のEVシフトに伴うリチウムイオン電池の保管需要が増加するとともに、半導体産業の国内基盤強化の動きを受け、半導体製造工程に必要な化学品、高圧ガスなどの保管需要も喚起されている。一五不動産が7月に実施したアンケートによると、今後の倉庫需要を牽引する上位3品目に「危険品」も挙げられており、成長分野としての注目が高まっているようだ。

保管能力の大幅増強、低温品対応も

山九は来年8月に三重県菰野町に危険物倉庫を4棟(計4000㎡)新設する(完成イメージ)。新倉庫は消防法危険物第4類の貨物に対応し、リチウムイオンバッテリーなどの製品から、医療や半導体などに使用される中間財や原料などの高機能製品をおもに取り扱う予定。

四日市コンビナート地区からは車で30分以内の距離にあり、幅5mの庇も備え、雨天時の荷役にも対応。同地域では既に2ヵ所の危険物倉庫を運営しており、そのひとつに隣接する形で新倉庫を建設し、保管能力を増強する。

山九は5月に関西最大級の危険物倉庫8棟(計8000㎡)を大阪府高石市で開設。中部エリアでの増設により、関東、中部、関西、九州を網羅する形で、全国13ヵ所の自社拠点において、総延床面積約2万6800㎡の危険物倉庫を運営する体制となる。
日新は「神奈川埠頭倉庫営業所」(横浜市神奈川区)が竣工し、今月4日から営業を開始した。消防法危険物第4類を中心とした危険物倉庫5棟、高圧ガス倉庫2棟、普通品倉庫1棟、一般取扱所1棟で構成される。

自然災害への備えとして防潮堤、非常用発電機を設置したほか、脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みとしてEV充電設備や太陽光発電設備を設置。同営業所とグループ会社の鶴見倉庫を合わせた危険物貯蔵量は、京浜地区最大規模の約1万4000㎘となった。

また、日本トランスシティは7月に、需要の高まる特殊化学品の取り扱い拡大に対応するため、三重県亀山市で低温危険品倉庫2棟(計約1970㎡)が竣工。保管庫は5℃、前室は15℃で管理し、移動式ラックを導入。自家発電設備も備えている。

普通品倉庫から建て替え、新規参入も

澁澤倉庫は関西地区で危険物倉庫を新設する。神戸市中央区の新港第七突堤に危険物倉庫2棟(A棟約871㎡、B棟604㎡)を建設中で、増加している危険物の保管需要に応えるために、普通品倉庫から危険物倉庫に建て替えるもの。来年4月の竣工を予定している。

大阪府茨木市の茨木営業所敷地内でも、危険品倉庫1棟(約795㎡)を10月から着工。来年3月29日の竣工を予定し、近年需要が増加しているリチウムイオン電池の取り扱いを予定している。

陸運大手のセイノーホールディングスも危険物倉庫に参入する。リチウムイオン電池の物流需要に対応するため、12月にグループ初となる危険物倉庫を、三菱地所の「ロジクロス座間」敷地内の危険物倉庫1棟(1000㎡)を賃借して開設する。

また、来年12月には西濃運輸の旧相模原支店の跡地を利用し、まずは危険物倉庫1棟(1000㎡)を建設し、最終的に2棟の開設を計画。このほかでも建設を検討しており、危険物倉庫の全国展開も視野に入れているという。

危険物倉庫の需要の高まりに物流不動産デベロッパーも注目する。プロロジスは茨城県古河市で、化粧品やアルコール類など危険品の保管に適した危険物倉庫8棟からなる物流施設「プロロジスパーク古河6」の開発を計画。24年2月に着工、同年12月の竣工を計画する。
(2023年9月21日号)


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