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スーパー4社が「持続可能な食品物流」宣言

2023.03.23

首都圏に店舗網を持つ食品スーパー大手4社が物流改善に向けて動き出した。サミット(本社・東京都杉並区、服部哲也社長)、マルエツ(本社・東京都豊島区、本間正治社長)、ヤオコー(本社・埼玉県川越市、川野澄人社長)、ライフコーポレーション(本社・東京都台東区、岩崎高治社長)の4社は16日、都内で共同記者発表会を開き、「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み宣言」を発表した。現在実施中のものも含め、4社が足並みを揃えて改善を推進し、業界内での水平展開を図ることで、食品サプライチェーン全体の改善につなげる。

「2024年問題」に対応、安定的流通網の維持へ

具体的には、①加工食品における定番商品の発注時間の前倒し②特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保③納品期限の緩和(1/2ルールの採用)④流通BMSによる業務効率化――に足並みを揃えて取り組む。その背景には物流の「2024年問題」が迫る中、安定的な食品流通に対する〝危機感〟がある。各社はこれまで、適時・適品・適量の食料品供給を実現するための物流網を構築してきた。しかし、今後は車両手配が困難になることが予想され、従来通りの発注から納品までのプロセスを維持することが難しくなってきている。そこでメーカー・卸間のリードタイムを1日延長し、小売業の定番発注時間を午前中に前倒しすることで準備に必要な時間を確保し、夜間配送の削減や積載効率の高い配送を実現することとした。

4社はすでに定番商品については、発注時間の前倒しを実施している。特売品・新商品のリードタイム確保は、現在マルエツのみが実施しているが、できるだけ早期に実施できるよう他の3社も調整中。また、納品期限について「1/2ルール」への統一については、ヤオコーとライフが実施済み。サミットとマルエツは今春からスタートする計画。流通BMS導入については4社ともに実施済みで、さらなる効率的な運用に向けて、ブラッシュアップを図る。

宣言発表と同時に4社が参加する「首都圏SM(スーパーマーケット)物流研究会」が発足した。各社協力による物流の効率化策や、食品流通全体の効率化につながる施策を検討・推進が目的で、4社以外にも広く業界からの参加を求めた。

味の素、キユーピーなどメーカーも高く評価

記者発表会には、オブザーバーとして加食メーカーから味の素、キユーピー、卸から三菱食品、業界団体の日本加工食品卸協会が参加。行政から経済産業省と農林水産省が出席した。味の素上席理事食品事業本部物流企画部長の堀尾仁氏は「持続可能な食品物流の実現に向けた非常に意義深い取り組みであり、スーパー4社の宣言に感激している」と述べ、「私ども加食メーカー6社が15年にF―LINEプロジェクトを立ち上げ、以降様々な形で物流改善の協議が進んできた。本日発表された取り組みも含め、業界内で共有化していくことが必要だ」と指摘。キユーピー執行役員ロジスティクス本部本部長の前田賢司氏は「16年に加食メーカーの物流改善事例の共有や製・配・販の物流課題の解決策を検討する食品物流未来推進会議(SBM会議)などで小売・卸などステークホルダーの皆さんと一歩ずつ協議を重ねてきた。スーパーからの宣言が本日公表されたことは大きな前進であり、3層にまたがる物流改善の進捗が非常に期待できる」と評価した。

4社の宣言を受け、経産省の消費・流通政策課長兼物流企画室長の中野剛志氏が発言。「約30年前に食品流通のあり方が今日の形に定まったが、当時と現在とは環境が大きく異なった。今回発表された取り組み内容は、労働力不足の深刻化やトラック輸送力の制限など限られたリソースを活用して食品流通を維持するための30年ぶりのモデルチェンジの意味合いがある」と述べ、「今後は製・配・販のタテの連携に加え、各層でのヨコの協調関係を強化することも重要だ」と強調した。
(2023年3月23日号)


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