物流会社の倒産、「不正」からの連鎖も
トラック運送など物流会社の倒産が増勢だ。燃料費の高騰など事業環境の悪化が背景にあるが、不正会計などの法令違反をきっかけに信用が失墜し、取引先を失ったり、金融機関からの追加融資が受けられなくなり、倒産に至るケースも目立つ。企業としての存続を危うくする不正を防止するため、上場していない中小企業の経営においてもコーポレートガバナンスの強化が欠かせなくなっている。
会計の不正に端を発し資金繰り悪化
東京商工リサーチによると、2022年(1~12月)の道路貨物運送業の倒産件数は248件と前年比46・7%増となり、2年連続で前年を上回った。件数が200件台に乗るのは、15年の240件以来、7年ぶり。22年の倒産のうち、燃料費高騰など物価高を要因としたものは69件(構成比27・8%)だった。4分の1を「物価高倒産」が占めており、外部環境の悪化が道路貨物運送業者を直撃している。
慢性的なドライバー不足に加え、労務管理の厳格化、燃料価格の上昇など外部環境の悪化に価格転嫁が追い付いていないことがうかがえるが、倒産の要因はそれだけではないようだ。民間の信用調査会社が発表している企業倒産情報によると、道路貨物運送業など物流会社の倒産では、粉飾決算など会計の不正に端を発した資金繰りの悪化によるものも目立つ。
決算内容の疑義、不正請求が引き金に
物流ソリューション事業を展開していたビーリンク(神戸市)は神戸地裁に自己破産を申請し、2月3日に破産手続き決定を受けた。チャーター便、ダイレクトメールの発送、倉庫管理など物流事業のほか、新規事業として英会話教室、著名スニーカーブランドの取り扱いなど多角化を図り、コロナ禍の巣ごもり需要を受けた冷凍飲食宅配業務も伸長。21年10月期には年収入高約46億2000万円を計上していた。
22年3月頃から一部金融機関から決算内容に疑義が指摘され、信用不安が高まるとともに急速に資金繰りが悪化。同年5月に入り、取引金融機関に対して10数年にわたり売上高や利益などの粉飾を行い、多額の簿外債務が存在することを認め、私的整理による再建計画を提示していた。再建を模索していたものの、金融機関からの同意を得られる見通しが立たないことから、今回の措置となったもので、負債は約54億5700万円とみられる。
楽天モバイルに対する不正請求に絡み注目されていた、一般貨物運送業、倉庫内物流を手掛けるTRAIL(相模原市)は1月13日に、事後処理を弁護士に一任、自己破産申請を決めた。楽天モバイルの携帯電話基地局設備に関わる配送の受注増加を背景に業績を伸ばしてきたが、昨年8月に民事再生法の適用を申請した日本ロジステックとともに、楽天モバイルに対して不正な水増し請求をしていたことが発覚した。
この不正請求に絡み同社の動向も注目されていたが、日本ロジステックに対して多額の不良債権が発生。その後、ほぼすべての事業を停止し従業員も解雇されていたが、ここへきて今回の措置となった。負債は22年3月期時点で約54億9900万円だが、その後変動している可能性がある。負債額は22年度で最大となり、神奈川県の道路貨物運送業者では過去最大の負債額だった。
粉飾決算発覚で債権売却、取引の解消も
昨年8月に大阪地裁から破産手続き開始決定を受けた3PL事業者のグッドビリーヴ(大阪府高槻市)などグループ4社は、東北から九州地域にかけて15ヵ所以上の物流センターを整備して業容を拡大し、17年12月期は年収入高約105億2600万円を計上。持ち株会社制へ移行し、事業拡大を推進していたが、過剰な有利子負債を抱えるなか、19年に入り取引金融機関との追加資金調達交渉が難航し、急速に資金繰りが悪化した。
同年10月には取引金融機関に対して返済猶予を要請していたが、その交渉過程で過年度における粉飾決算が発覚。信用が失墜し、一部金融機関が債権をサービサーに売却するなどの動きが相次いだ。その後も業務面においても取引解消の動きも相次ぎ、赤字決算から脱却できず、昨今の原油価格高騰などの事業環境悪化の影響もあって再建の見通しが立たなくなり、22年7月31日に事業を停止した。
中小企業の会計では、財務諸表が企業実態を表していないケースも多い。税金の支払いを低く抑えることに意識が向かうため、売上除外などで利益を必要以上に減少させる傾向があるほか、経営事項審査や金融機関の融資におけるランクを上げるために赤字を生じさせないよう粉飾が起こりやすい。非上場企業にはコーポレートガバナンスの導入は義務付けれていないが、企業の存続に致命傷となる不正を防ぐためにも、中小企業におけるガバナンスの構築が求められる。
(2023年3月2日号)