物流改善〝義務化〟、新制度創設へ=国交省/経産省/農水省
国土交通省、経済産業省、農林水産省は17日、「持続可能な物流の実現に向けた検討会」(座長・根本敏則=敬愛大学教授)の第5回会合を開催し、中間とりまとめ案を公表した。発荷主、物流事業者、着荷主が連携・協働して物流改善に取り組むため、サプライチェーンの関係者それぞれが計画的に物流改善に取り組む新たな制度創設を提言。2月17日に開催する第6回会合で最終報告をまとめる。
「着荷主への規制的措置」を「全員参加」に修正
新たな制度の内容は決まっていないが、物流改善を“義務化”した上で、荷主や物流事業者がそれぞれの事業特性や自主性を尊重しながら改善に取り組めるような制度設計とする。制度のあり方の検討にあたり、省エネ法が、一定量の貨物の輸送を発生させている荷主に対してエネルギーの使用の合理化に係る計画策定や定期報告を義務付けていることを参考例として挙げた。
昨年12月17日の前回会合で示された中間とりまとめの骨子案では、物流の危機的状況を克服するためには消費者や着荷主の理解と協力が不可欠だとし、「着荷主による物流改善の取り組み」を義務化すべきとするなど、着荷主に対する規制的措置がことさらにクローズアップされていた。これに対して「物流改善が進まないのは着荷主に責任があるという誤解を招きかねない」と批判する声が一部にあった。
今月11日には小売4団体(全国スーパーマーケット協会、日本小売業協会、日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会)が意見書を提出。「骨子案はサプライチェーンの多様性を正確にとらえておらず、詳細な実態把握をベースに着荷主業界に求める物流合理化措置の内容や程度の目標を定め、施策を決めるべき」だとし、「一足飛びの規制的措置の検討」に対して反論した。
こうした批判を踏まえた上で、今回の中間とりまとめ案は、サプライチェーンの中で着荷主を〝やり玉〟としかねない論点を修正し、「発荷主、物流事業者、着荷主が連携・協働し、それぞれ改善を図るための取り組みを行うことが必要」だとあらためて提言。物流の関係者全員が参加する形で物流改善を促進する方向性を掲げた。こうした考え方を盛り込んだ上で、新たな制度を設計する。
なお、今回会合ではトラック運送業の生産性向上に取り組む企業事例についてヒアリングも行った。発表したのはHacobu、セイノー情報サービス、CBcloud、traevo(トラエボ)の4社。Hacobuはトラック予約受付や動態管理、配送手配サービスのシステムMOVO(ムーボ)のメリットを説明。セイノー情報サービスは内閣府が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に基づく地域物流ネットワーク化推進協議会を基盤とした中ロット貨物のパレット共同輸配送事業の概要を報告した。CBcloudは個人事業主の軽貨物ドライバーを支援する配送プラットフォームPickGo(ピックゴー)を紹介した。traevoはデジタルタコメータから車両情報を収集し、必要な情報を荷主・元請・下請・着荷主が共有できるシステム「traevo」を活用した物流効率化を提案した。
(2023年1月24日号)