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ドライバーのスキマ時間に安全教育を=琉球通運、シータイム

2022.11.10

沖縄県を本拠とする琉球通運(本社・沖縄県那覇市、喜納秀智社長)はドライバーの安全教育に、新たなeラーニングプログラム「トラッククエスト」を導入した。グループ会社のシータイム(本社・東京都千代田区、金南淑社長)が開発したスマホアプリで、ドライバーが休憩中や納品待ちなどの“スキマ時間”を利用し、1回3分程度の動画を視聴することで国土交通省の「法定12項目」に定められた安全指導を受けることができるもの。ドライバーが無理なく集中して受講でき、管理者の業務負荷軽減にもつながるなど、導入の効果は大きいという。

1回3分の動画とテストで法定12項目の指導に対応

琉球通運では今年8月から、4営業所、約150人の全ドライバーの安全指導に「トラッククエスト」を採用。トラッククエストでは、法定12項目の各項目が約3~5分程度の講義動画3~4本に分割して配信され、ドライバーが空いた時間を利用して受講できる。さらに、「テキストを用いた会議式の講義よりも動画の方がすんなり入り込め、飽きずに学べる」と運行管理部運行管理課の渡邉桃子主任。視聴時間を短く複数回に分けることで安全への意識も持続しやすいという。

動画の内容もドライバーが興味を持って学べるよう工夫されており、画像などを多用しながら、堅苦しくない文章で要点がわかりやすく解説される。アプリのスタートページもゲーム画面をイメージしたデザインで、タイトルロゴには沖縄の守り神「シーサー」もあしらわれるなど、親しみやすい。操作性についても、高齢のドライバーであっても直感的に使えるよう配慮され、資料の拡大機能なども完備されている。

1回の動画終了後には確認用のテストも用意され、正しい回答を選ぶことで受講完了となる。不正解時には参考資料がページに表示されるため、復習も手間なく行えるという。ドライバーの動画視聴とテストの受講状況は管理者のパソコンから一括で確認でき、未受講者へのアラートやポップアップ通知による催促も可能。テストの回答結果も履歴として残るため、「ドライバー一人ひとりの理解度が把握しやすく、個別指導にもつなげられる」と渡邉氏は話す。

会議形式ではドライバーの時間調整が負担に

トラッククエスト導入の経緯を、運行管理部の宮良永秀部長は「月に一度、トラック協会の会議室を借りて安全講習を行ってきたが、運行形態がばらばらの乗務員を集める時間調整が大きな負担で、『教育の機会にドライバーを合わせる』のではなく、『ドライバーに教育の機会を合わせられないか』と考えていた」と振り返る。その上で「アプリを用いることでドライバーを集める必要がなくなり、管理部門の負荷が大幅に軽減した」と歓迎する。

巡回指導や法定監査への対応としても、従来は指導履歴を書類にまとめて3年間保管する必要があったが、トラッククエストでは一連の指導履歴が3年間、シータイムが契約するサーバーに保存され、必要なページをプリントアウトし、帳票として提出することもできる。管理業務の負担が解消され、書類の保管場所も省スペース化できたことに加え、環境負荷低減やSDGsにもつなげられたという。

仲間同士の会話が増加、今後はヒヤリハットも共有

導入から2ヵ月が経過したが、人身・物損とも事故ゼロを達成し、「乗務員の意識が変わっているように感じる」と宮良氏。休憩中に動画を視聴し、テストの回答を周囲のドライバーに相談するなど、トラッククエストを通じて安全に関する会話も生まれており、「知識として身についているのではないか」と渡邉氏も話す。

トラッククエストでは、シータイムが用意する法定12項目の指導動画以外の教材もアプリ上で自由に共有でき、導入企業が独自に撮影した講義動画やテスト問題なども配信できる上、ドライバーに教材の公開が自動通知される。琉球通運でも、今後は、ドライブレコーダーで撮影されたヒヤリハット映像をアプリ上で共有したり、フォークリフトやマテハン機器を使用する際の安全指導なども、トラッククエストを通じて行っていきたい考えだ。

加えて、アプリには受講完了時にドライバーへポイントを付与する機能も備えられており、ポイント数に応じた表彰や、楽天ポイントといった共通ポイントへの変換など、様々な活用方法でドライバーのモチベーションアップに役立てることができる。琉球通運では、こうした機能も用いて、貯まったポイントで荷主企業の商品を購入できるような仕組みも、福利厚生の一環として検討していくという。

ドライバーが受け身でなく自ら楽しみ、学べる仕組みを

営業所を出発すると“ひとりきり”になるトラックドライバーの安全教育は、一人ひとりへのしっかりとした意識づけが非常に重要となる。一方で、「どのように意識づけすればいいか」「いかにその意識を継続させるか」――には多くの運送会社が頭を悩ませており、琉球通運もその一社だった。

シータイムでは、こうした同社の声を受けてトラッククエストの製作に着手し、要望を取り入れながら開発を進めてきた。そのため、「徹底的に運送会社の現場目線で作られていることが大きな特長」とシータイム企画営業部の新垣勁介氏は話す。同氏は「ドライバーが受け身ではなく、自ら意欲的に楽しみながら安全を学べる仕組みを作ろうと考えた。義務として定められた教育指導を効率的かつ効果的に行えることに加え、ドライバーを集めたり帳票を管理したりといった、管理者側の業務負担も減らすことができれば」と展望する。

トラッククエストはiOS、androidともに対応し、スマホ貸与も別途料金で可能である。琉球通運への先行導入を経て、10月から関東1都3県向けのサービス提供を開始し、2023年内をメドに全国へ展開する。機能面では、23年にHACCP教材の追加を予定するなど業種の幅を広げるとともに、ポイントシステムと連動したランキング機能の実装も計画。その上で、23年までにドライバー1万人の利用を目指す。
(2022年11月10日号)


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