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国交省、鉄道コンテナの偏積対策で検討会

2022.08.09

国土交通省は3日、「鉄道貨物輸送における偏積対策に関する検討会」の第1回会合を開いた。昨年12月28日に山陽線で発生した貨物列車の脱線事故は、コンテナに積載した貨物の偏り(偏積)が影響したと推定されていることから、国交省では事故再発防止の観点から、対策検討会を開催した。初会合では脱線事故の概要と、JR貨物が行ってきた偏積対策を報告。第2回会合では利用運送事業者(通運事業者)が偏積対策の実施状況を報告することとしており、その後、防止に向けたJR貨物と通運事業者の連携のあり方について意見交換する。その上で、第3回では新たな偏積対策を報告する予定で、来年3月末までに防止策をとりまとめる。

開催に当たって国交省鉄道局の奥田薫大臣官房技術審議官が挨拶に立ち、「偏積による事故は12年と14年に北海道・江差線で発生し、JR貨物は対策を実施してきたが、昨年12月に山陽線でも偏積に起因するとみられる脱線事故が発生した」とし、偏積対策は鉄道事業者だけではなく、荷主も含めて取り組む必要があるとの認識を披露。その上で、「従来の対策を関係者間で共有しつつ、さらなる対策が必要だ」と強調した。加えて、貨物鉄道が平時の内陸部へのエネルギー輸送や災害時・有事の物資輸送を担う公的インフラとしての役割や、環境に優れた輸送モードとして「2050年カーボンニュートラル」実現でも重要な役割が期待されていると指摘し、「そうした観点からも今回の安全対策の議論は重要な意味合いを持っている」と述べた。

製紙業界がオブザーバーで参加

検討会はJR貨物取締役兼執行役員安全統括本部長の小暮一寿氏、全国通運連盟専務理事の吉橋宏之氏、日本通運ロジスティクス・ネットワーク事業本部通運部専任部長の佐々木康氏、鉄道貨物協会常務理事業務部長の中村文彦氏、鉄道総合技術研究所研究開発推進部主管研究員の日比野有氏、自動車技術総合機構交通安全環境研究所交通システム研究部長の佐藤安弘氏らが委員を務める。また、日本製紙連合会物流委員会委員長の野尻知己氏(日本製紙取締役兼任執行役員営業企画本部長)、同連合会参事紙・板紙部長の北爪正弘氏、経済産業省担当者らがオブザーバーとして参加する。

初会合ではJR貨物が事故対策を報告。14年の江差線事故を踏まえた対策として、①通運事業者に対する均衡の取れた積み付けを定めた貨物運送約款の遵守要請②偏積の可能性があるコンテナの調査の実施と通運事業者向けのコンテナ積み付けガイドラインの作成③コンテナごとの偏積状態をチェックできるポータブル重量計およびトップリフターによる測定の導入④コンテナ内の積み付け状態の写真のサンプリング調査⑤走行中の左右の輪重バランスをチェックする機能のある輪重測定装置の技術開発――などを実施してきた。昨年の事故発生を受け、同社はこれまでの対策状況を検証したところ、通運事業者とコンテナへの積み込みを担当した会社が異なる場合、積み込み会社までガイドラインが伝わっておらず、責任体制も明確ではないことが課題として浮き彫りになった。また、ポータブル重量計や輪重測定装置の配備を進めていたが、江差線を通過する貨物の捕捉が中心となっていた。さらに、偏積が見つかり積み直しを行った場合も業務改善の取り組みが不十分だった。

JR貨物は山陽線脱線事故を踏まえた対策を実施中

こうしたことから、昨年の山陽線脱線事故後は、①全国通運連盟を通じて通運事業者に対し、偏積防止の要請と積み込み会社への周知を要請②通運事業者の責任を明確化するなど貨物運送約款を改正したほか、偏積でないことを宣誓しなければ貨物を受託できないようシステムを改修③ポータブル重量計を12駅から24駅に増備し、輪重測定装置を増設④偏積の発見時は通運事業者から再発防止策の提出を求めるなど対応を明確化⑤四半期に1回をメドに積み込み状況の抜き取り確認の実施――などの改善対策を実施している。
(2022年8月9日号)


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