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小倉運送、鉄道輸送拡大へ新たな取り組み加速

2023.06.08

小倉運送(本社・北九州市小倉南区、増井淳社長)は、北九州貨物ターミナル駅を本拠に展開する通運事業において、立地優位性を活かした輸出入貨物のSea&Rail輸送や中ロット貨物のクロスドック輸送など、新たな取り組みを加速させている。一方で、甚大化する自然災害を背景に課題となっている貨物列車の輸送障害に対しては、企業間の垣根を超えた対策を研究。「2024年問題」を前に九州発着の長距離輸送でも鉄道モーダルシフトに注目が集まる中、安定かつ高付加価値な鉄道輸送サービスの実現を目指す。

Sea&Railや中ロット混載に注目

同社は北九州タと福岡貨物ターミナル駅で通運事業を営み、九州通運業連合会の会長会社も務める。通運車両は北九州タ営業部で12ftコンテナ1個積み3台、2個積み7台、トラクタ8台、2個積みシャーシ4台、3個積みシャーシ8台、福岡タの通運事業を担う福岡営業部(福岡市東区)で1個積み5台、2個積み2台、トラクタ3台、2個積みシャーシ2台、3個積みシャーシ3台を保有。駅構外に構える福岡営業部では、通運のほかに海上コンテナ輸送や倉庫保管などの複合物流サービスも提供する。

主な輸送品目は、北九州タの発送が建築資材、洗剤、自転車部品、輸入食品、住宅機器など。到着も輸入衣料品から洗剤、医療用衛生用品、メール便、自動車部品、青果物まで幅広い貨物をバランスよく扱う。福岡タは発送が焼酎、到着は日配品、冷蔵庫、菓子、建設資材が中心。北九州タ~熊谷貨物ターミナル駅では日用品の31ftコンテナ往復輸送も週1便行っている。

足元の状況は、消毒液や洗剤、巣籠もり期間に需要が急増した自転車部品といったコロナ特需品の荷動きが一服。食品なども値上げの影響で減送傾向にある。反面、自動車関連品は半導体の供給回復から復調しつつあり、青果物も北海道産の馬鈴薯・玉ねぎが堅調に推移。夏季にかけては九州発の青果物輸送の増送も期待されるという。

ただ、北九州地域全体の長期的な荷動きは、鉄鋼業の衰退や人口減などを背景に生産財・消費財ともに縮小傾向が続き、九州における物流の要衝は福岡、鳥栖地域へ移行。輸送方法も鉄道からトラックへのシフトが進み、最盛期だった30~40年前に比べると鉄道貨物輸送量は2割程減少している。そうした中、小倉運送では「地域性の強みを活かした輸送をしなくてはいけない」との考えから、新たな取り組みを推進している。

ひとつが輸入貨物のSea&Rail輸送だ。今年3月、本社併設の小倉南営業部(小倉南区)の倉庫1000㎡で、新たに保税蔵置場の認可を取得。中国・韓国に近く、直行航路を持つ北九州港から輸入した越境ECなどの貨物を同所でデバンニングし、12ftコンテナで関東をはじめとした消費地へ運ぶSea&Railサービスを想定する。同様の取り組みは既に福岡営業部で先行しており、博多港経由で輸入した韓国コスメなどを、自社保税倉庫を経て鉄道やトラックで全国へ発送する計画にある。京浜港での荷揚げに比べリードタイムの短縮やコスト削減が見込まれる上、鉄道を使用すれば環境負荷も低減できるという。

併せて、九州の玄関口に位置する地域特性を活かした中ロット貨物の鉄道混載輸送も進めたい考え。北九州タ構内には全天候型の積替え施設が完備されている上、小倉南営業部も全天候型の2面高床バース仕様となっており、鉄道コンテナ用のリフターも備える。「ターミナルとしての機能を活かした輸送をしなくてはもったいない」(吉田功取締役)として、こうした施設で中ロット貨物を12ftコンテナに混載し、鉄道輸送するサービスの展開を図る。

営業面では過去に鉄道輸送を利用していた荷主企業への再アプローチも強める。鉄道輸送時の問題点をヒアリングし、解決を図ることで、再び利用してもらえるよう働きかける。加えて、「2024年問題」でトラックの手配が難しくなる中、現在、トラックの帰り便で荷物を運ぶ荷主企業をターゲットに、一部輸送の鉄道シフトによるリスク分散も呼びかける。

トラックで大量輸送されている荷物についてはJR貨物と共同でトライアル輸送なども行っており、鉄道の使い勝手を知ってもらった上で本格運用につなげる。さらに、急がない荷物など、条件が合えばJR貨物が運賃をディスカウントする低積載列車の利用も提案。荷主企業の中には、「納期が変わらなければ、通常出荷日“前日”の現場が空いている時間帯に出荷したい」とのニーズも潜在しており、貨物駅の留置機能を活用することで輸送の安定化やコスト削減、現場作業の平準化が可能になる。

輸送障害対策として通運のリレー輸送に参画

荷主企業の多様なニーズに応えながらも、鉄道利用時に最も重視されるのが輸送の安定性だ。小倉運送では、貨物列車の遅延や運休といった輸送障害への対策として、昨年、北九州タでフェリーやRORO船にも乗せられる12ftコンテナ3個積みのトレーラ2台を購入した。鉄道コンテナ緊締車には通常装着されていない、船内固縛用の「車輛リング」を取り付けた車両で、輸送障害時に柔軟に運行できるよう、特殊車両通行許可申請(特車申請)も取得した。

輸送障害時の代行輸送としては、各貨物駅で事業免許をもつ通運会社がリレー輸送する仕組みの構築にも参画。従来の代行輸送は、発通運会社が自社で到着駅までのトラックを手配したり、JR貨物が用意する場合があったが、いずれも輸送日数がかかる上、JR貨物の手配車両などは数に限りがあり、確保できないことも少なくなかった。加えて、北九州地域は自動車関連品が主要発着地である東海地域とのフェリー・RORO船航路がなく、船舶代行輸送も困難。「新たな仕組みの実現には様々な調整が必要だが、完成すれば鉄道の安定輸送につながる」と吉田氏も期待を寄せる。

他方で、「こうした取り組みは本来、通運会社が個別に動くのではなく鉄道会社や業界団体が主導すべきではないか」と指摘。輸送障害対策に留まらず、養生資材なども国鉄時代には鉄道会社が管理していたが、現在は各通運会社が個々に管理し、返送なども煩雑化している。「ラッシングベルトやエアバッグといった利用頻度の高い資材はJR貨物が一括購入した方が安く調達できる上、管理が一元化できれば余分な資材や回送も不要となり環境負荷低減にもつながる」と話す。

「地域に密着し、広く、深い事業展開を」

小倉運送は1950年に通運業で創業したが、現在はフェリー・RORO船輸送も行っており、「鉄道、トラック、船を利用した輸送サービスを複合的に提供できることは当社最大の強み」と吉田氏は自信を示す。通運事業における荷主企業の7割が長年変わっていないことも特長のひとつで、「地域に密着し、貨物量の大小にこだわらずお客様との関係を大切にしてきた」と振り返る。同時に、到着の荷物を発送する通運会社や発荷主についても「非常に大事なお客様」と吉田氏。その上で、「通運においては人と人との信頼関係を築けるかが一番大切。今後も地元につながり、広く深く、事業を展開していきたい」と展望する。
(2023年6月8日号)


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