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多様な「運び方」の提案を強みに=セイノースーパーエクスプレス

2023.03.28

航空輸送によるExpress便や路線トラック便などで全国に幅広い輸送網を構築しているセイノースーパーエクスプレス(SSX、本社・東京都江東区、増田敦社長)は、関東を地盤とした通運事業者としての顔も持つ。「NOと言わないセイノーグループ」の有力企業として、農産品から自動車部品まで多様な鉄道コンテナ貨物を取り扱っている。今後は「2024年問題」への対応を迫られる顧客に向けて、鉄道輸送のメリットを訴求するなど通運事業の拡大を図りつつ、同社が抱える多彩な輸送モードを複合的に提案することで、顧客ニーズに柔軟に応えていく。

関東を地盤に、全通系ネットワークの連携を重視

SSXの前身である西武運輸は、池袋通運(旧・池袋運送)と伊豆運送、湖東陸送が1959年に合併して発足。このため、通運事業は池袋通運時代からの祖業でもある。その後、同社は2009年にセイノーホールディングスのグループ会社となり、14年に現社名に変更した。

トラック輸送や航空便では、全国にスピード輸送のネットワークを構築している同社だが、通運事業では関東地区が事業の中心。全国通運が統括する全通系ネットワークの有力事業者として、全国各地の全通系事業者との連携を重視しながら事業を運営している。

現在、関東では東京貨物ターミナル駅、隅田川駅、新座貨物ターミナル駅、越谷貨物ターミナル駅、熊谷貨物ターミナル駅、相模貨物駅、千葉貨物駅、東海エリアでは沼津貨物駅の計8駅を拠点としており、千葉と沼津以外の貨物駅には事業所を設けている。コンテナ集配に使用する専用車両(緊締車)は約80台を保有。通運事業の売上高はSSX全体の3~4%程度で安定的な収益を計上している。

食料品を中心に多様な品目を取り扱い

取扱貨物は各貨物駅によって特色があり、その品目は多種多様。一例として、隅田川駅は北海道や東北から届く米やジャガイモ、タマネギなどの農産品が太宗を占める。相模貨物駅では大手飲料メーカーの取り扱いが多く、沼津駅では天然水の出荷が中心となっている。

関西や九州方面からの玄関口である東京タでは、九州で生産された自動車部品が毎日届き、群馬県の太田市までトラックで輸送するケースもあるという。通運事業全体としては、農産品を含む食料品の割合が高いようだ。

他方、年度末の繁忙期は、引越荷物の鉄道コンテナ輸送の取り扱いも多い。昨今のドライバー不足の影響でトラックでの長距離輸送を控える引越事業者が増えていることから、こうしたニーズの取り込みを図ることで拡販に力を入れている。

「到着誘致」に強み、社員教育で営業力強化へ

関東地区は大消費地を抱えていることもあり、到着貨物が多いという特徴がある。そのため同社では、全国各地の全通系事業者が関東向けに出荷する貨物の〝キャッチャー役〟を担う「到着誘致」に注力している。主要貨物駅には、複数の全通系事業者が事業所を構えており、その中から同社が〝選ばれる〟ためには、全国の事業者から信頼を勝ち得ることが重要。そのためにも、常に貨物を受け入れられる体制を構築し、依頼に応え続けることが大事だという。

また、EXPRESS本部複合輸送部通運課の石島和典課長は「当社には全国に営業網があるため、急遽、鉄道輸送が必要となった地方のお客様を現地の通運事業者に紹介することができる。こうした取り組みを重ねることで〝仲間〟からの信頼を積み上げている」と語る。

SSXでは今年から全社的な新規顧客開拓の強化策として、新規営業に特化した「営業戦略部」を新設。既存顧客への対応は営業部が引き続き担当し、両部署が連携を図りつつ、両輪で営業力を強化している。鉄道コンテナ輸送の拡販もその中の施策のひとつだが、一方で、通運事業は拠点が関東に集中している事情もあり、関東の社員とその他のエリアの社員との間で、鉄道コンテナ輸送に関する知識や営業ノウハウに差があるという。そこで、現在取り組んでいるのが、社内での勉強会。営業本部複合輸送部担当の豊泉淳一取締役は「関東以外の社員に向けた勉強会を開催するなど教育体制を整えることで、通運事業の営業力の底上げを図っていく」方針だ。

また、営業パンフレットにQRコードを掲載し、スマートフォンなどでJR貨物が制作したコンテナ輸送の紹介動画をチェックできるようにして、よりわかりやすい形で鉄道コンテナ輸送の魅力をアピールしていく。

さらに、鉄道輸送はトラックと比べてリードタイムが長くなる一方で、急ぐ必要のない貨物を抱える荷主もいることから、こうした需要の取り込みにも注力する。加えて、CO2排出量が少ないという鉄道輸送のメリットを活かし、環境意識の高い企業からの案件獲得につなげていく。

柔軟な輸送提案で「NOと言わない」を体現

「24年問題」により、ドライバー不足が一層深刻化する中で、長距離輸送における代替輸送モードとして鉄道需要は今後ますます高まることが予想される。しかし、足元の荷動きが低迷していることもあって、荷主のモーダルシフトへの動きは鈍いままだ。豊泉氏は「『24年問題』を深刻な問題だと認識しているお客様が大半ではあるものの、まだ対応が終わっていないお客様もいる。24年4月以降、運送事業者から突然『もう荷物を運べない』と言われ、急いで鉄道輸送に切り替えようとしても、すでにJR貨物の輸送枠が空いていない、という状況もありえる」と指摘する。そのうえで「早い段階から鉄道輸送を開始し、JR貨物から〝既存顧客〟として認知してもらえれば、いざというときに多少の融通は利く」と述べ、今から鉄道利用を開始することが得策だと強調する。

通運事業だけではなく、トラックも含む多彩な輸送モードを顧客に提案できることがSSXの最大の強み。通運事業を所管する「複合輸送部」は引越し事業を担当していた「引越部」が、通運事業をはじめとする部署を取り込む形で発足。顧客の様々なニーズに対し、多様な「運び方」を提案できる体制となった。今後、「24年問題」への対応を迫られる顧客に対し多彩な選択肢を提示し、セイノーグループのモットーである「NOと言わない」を体現していく。

石島氏は「エクスプレスの貨物を鉄道輸送に誘致するのではなく、エクスプレスの取扱量を維持しつつ、通運部門の取り扱いを増やしていきたい。通運事業としてのお客様の取り込みを図りながら、その他の輸送モードも顧客に活用してもらうことで、物流企業としての『総合力』を高めていく」と意欲を見せる。
(2023年3月28日号)


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