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【レポート】「Gマーク制度」、創設からまもなく20年

2022.12.20

2023年に創設から20年を迎える「Gマーク制度」――。トラック運送事業者の安全性に関する客観的な評価指標として浸透し、認定事業所数は右肩上がりに増加。21年度時点で認定事業所数は全事業所の3割を超えている。節目となる23年度からは、制度開始から20年間認定を更新し、6回目更新となる事業所を「長期認定取得事業所」と認定し、ゴールドステッカー(写真)を付与することを検討している。申請書類の一部について電子申請対応も図るなど申請の負荷も軽減し、制度のさらなる進化と普及を目指す。

認定率3割、車両台数ベースでは5割

03年に開始されたGマーク制度(貨物自動車運送事業安全性評価事業)は、荷主などトラック運送の利用者が安全性の高い事業者を選びやすくするとともに、事業者の安全性向上に資する意識を高めるため、事業者の安全性を正当に評価・認定し、公表する制度。認定を受けた事業所には認定証が授与され、認定マークおよびステッカーを「安全性優良事業所」の証として使用することが認められ、荷主や消費者にアピールできる。

安全性評価委員会の評価を経て、全国貨物自動車運送適正化事業実施機関(全ト協)が認定を行う。安全性に対する法令の遵守状況、事故や違反の状況および安全性に関する取り組みの積極性の各評価項目に評価基準が設けられており、101点満点中80点以上の評価と社会保険等の適正加入などが認定の要件。認定には有効期間が設けられており、新規が2年間、初回更新が3年間、2回目更新以降は4年間となる。

毎年7月に各地方ト協を通じて申請を受け付け、12月に当該年度に認定された安全性優良事業所が公表される。21年12月時点で認定事業所数は全国で2万8026事業所となっており、全事業所の32・1%。車両の台数ベースでは、73万2646台と50・3%に達し、「営業用トラックの2台に1台がGマークを付けて走っていることになる」(全ト協適正化事業部)など制度の浸透がみられる。

認定事業所数は増加維持も角度が緩やかに

認定事業所数の推移をみると、右肩上がりで増えていることがわかる。03年の制度開始当初は認定事業所数が2030事業所、認定率は2・5%だったが、21年時点で認定事業所数は約14倍に拡大し、認定率も30%を超えた。増加は維持しつつも角度は緩やかになっており、Gマーク認定を受けていない事業所がいまだ7割の多数派であることも事実で、さらなる普及と業界全体の安全性の底上げも課題だ。

Gマーク認定を受けた事業所の事故割合は、未取得の事業所と比べて半分以下という国土交通省の調査結果もある。Gマークを安全性担保の評価指標と位置づけ、「Gマークを取得している協力会社としか取引しない」という元請事業者もある一方で、「荷主がGマークを重視していない」「独自の安全の取り組みで十分」といった理由から、Gマークを取得する必要性を感じていない事業者もいる。

Gマークの申請・認定に費用はかからず、申請時点で「事業開始後(運輸開始後)3年が経過」「配置する事業用自動車の数が5両以上」という条件はあるものの、認定要件は安全を意識した経営を行っていればクリアできるレベルで、認定のハードルはそれほど高くない。それでも、取得のために書類をそろえる必要があるなど一定の事務負担はかかり、認定に踏み出せない小規模事業者もあるようだ。

6回目更新事業所に“ゴールド認定”も

認定事業所の拡大に向けたカギとなるのが、インセンティブ。すでに違反点数の消去やIT点呼の導入および点呼の優遇、CNGトラック等に対する補助条件の緩和、基準緩和自動車や特殊車両通行許可の有効期間の延長、各ト協の助成事業の優遇措置があるほか、一部の損保会社や交通共済ではGマーク認定事業者に対し独自の保険料割引を適用。さらなるインセンティブ拡充を求める声もある。

Gマークのさらなる差別化にも期待が高まる。これまでも、連続して10年以上取得している事業所のうち、所定の要件を満たした事業所は、国土交通省の運輸局長表彰や運輸支局長表彰の対象となっていたが、全ト協は23年度から、6回目更新を迎える事業所(約1100事業所を想定)を「長期認定取得事業所」としていわば“ゴールド認定”を行う。20年間の安全運行の実績を踏まえ、挙証書類提出を原則不要とするなど申請の簡素化を図るほか、「ゴールドステッカー」の付与を検討する。

荷主や一般の人たちへのさらなる周知も課題となる。全ト協では、Gマーク認定事業所の利用を推奨するリーフレットを作成しているほか、Gマークのデザインを施したラッピングトラックを走行。全国の高速道路の主要サービスエリア(SA)内のフードコート等でテーブルステッカーによるPR活動も行っている。安全の証としてGマークの認知と評価が高まり、業界でのさらなる普及促進が期待される。
(2022年12月20日号)


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